第9話 エリンは引っかかる
「...エリン?」
「ん?何?」
「いや、だから今度のデートの話なんだけど...聞いてた?」
「ご、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「大丈夫?なんか悩みとかある?」
「いやいや大丈夫!最近バイトが忙しくて疲れちゃってたのかなー...」
「バイトか...。俺もバイト始めよっかなー。エリンのバイト先、人募集してないの?」
「え!?...うん。今はしてない...かな」
嘘だった。
本当は最近一人辞めてしまって、少し忙しくなっていた。
なぜ、咄嗟に嘘をついてしまったのか。
なんとなく理由はわかっている。
学校にいる間も、放課後も、バイト先も一緒だと流石にしんどいのだ。
別に彼のことが嫌いになったわけじゃない。
だって、私が好きになって強引に落としたんだから。
そんなわけないのに...。
それでも心の中では少しだけ余裕が無くなっていた。
だって、いつも二人のことを目で追ってしまうから。
二人とは、元彼と元親友である。
◇
「ね、エリン。あいつらにむかつかないの?」
「え?誰?」
「決まってるでしょ。木枯と元彼。クラスでいちゃつきまくってさー。エリンのこと裏切って二人に幸せになろうとか、都合良すぎない?」
「あはは...私は別に。ほら、結果的には永世と付き合えたわけだし」
「エリンはやっさしぃねぇ。まぁそれに?あの木枯が男子と仲良くなんてできるわけないし、どーせすぐ破局するしね」
「...それはどうかな」
「え?続くと思ってんの?ないわー。流石にないわー」
「うーん...。まぁ、もう私には関係ないことだから」と、また嘘をつく。
本当は気になっていた。
私の話を陸くんに伝えたのか。
それを聞いて私のことを...どう思ったのか。今はどう思っているのか。
利用するためだけに付き合ったくせに、今更ながら別れたことを後悔してるとか、本当バカみたいな話だ。
いつも一生懸命で、恥ずかしそうにそれでも楽しそうにしてて、私のことを好きなんだろうなっていうのが全身から伝わってきていた。
別れてからしばらくは遠くからその目線が送られていて、それはそれで心地よかった。
けど、最近は私のことを見なくなっていた。
ふと、目を向けると怜の方を見ていて、私に興味はないようだった。
それが悔しかった。
本当...嫌な話である。
◇翌日
小さな事件が起こった。
「ねぇ、教室でイチャイチャすんのやめてくんない?」と、私の友達が怜に絡んだのだ。
「...あなたに何か関係あるの?」
「目障りだっていってんの。そもそも浮気してたやつがよくそんな顔して平気でイチャイチャできるね。モラルとか常識とかないわけ?」
「...くだらない。モラルや常識があるならそういうことは心に押し留めて放っておけばいいのに。そもそも、情報を一方からしか見れないあなたに理解なんて求めるつもりはないわ。そもそもこれは3人の問題なのだから、部外者に突っ込まれる言われもないし」
「だから、目障りだって言ってんの!」
「じゃあ、あんたが消えればいいじゃない」と、言った瞬間胸ぐらを掴む。
「何?殴る?モラルや常識の話はもう忘れた?」
「うっさい...調子乗んなよ」
そこで永世が立ち上がり、仲裁に入る。
「ちょっと、二人とも落ち着いて」
「あら、あなたにそんな指図されるつもりはないわ。無自覚の悪人ほど怖いものはないわね」
そして、怜が私を睨む。
全てばれてしまっているのだろう。
謝りたいのに...もう引き返せなくなってしまっていたのだ。
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