第13話



  「秋で、芸術的なところ…美術館とか植物園なんかいいわよね💓 ロマンチックでさ?」


…と、返信が来たので、「今度の休みはいつですか?コスモスがきれいな、夙川植物園に散策に行きましょうか?」

 と、送ってみた。


 少し間が開いたのちに、「素敵。じゃあ、次の月曜に待ち合せようか?」と、快諾の返信が届いた。


 …と、とどのつまり、現在におれは夙川植物園の入り口で、千尋ちゃんをエスコートしつつ、薔薇の蔓の絡まったゲートをくぐっているのだ。狂い咲きの赤い薔薇が一輪だけ咲いていた。


 「かわいいワンピースですね」

 「植物園だからね。ボタニカルアート風のを選んだのよ。白い花はナデシコなんだって」

 「清楚な大和撫子やね」

 「うふっ💓 そうそう」


 園内から、馥郁とした、いろんな花の香りが”フラグランス~”という感じで流れてくる。秋空は澄んでいて、空気も爽やかだった。


 「ここきたことある?」

 「ないわ。だから楽しみ」

 「検索して事前調査してね、アウトラインは飲み込んでます。」


… …


 咲き乱れるコスモスや大輪の菊、アネモネ、金木犀…匂いやかで、眼福のひと時を過ごしたのちに、カフェで休憩して、一息ついた。


 「千尋さんは大人っぽいけど、恋愛経験はあるの?」

 「なくはないけど、…淡い思い出、みたいなのばっかり。このサイダーみたいにね。すぐはじける泡」

 「うたかたの恋…ですか。表現ロマンチックですね」

 「恋愛小説とかは好きなのよ。最近だと江國香織?昔のフロベールとかサガンとかも好きよ」

 


 … …


 自称、「自閉症」で、「コミュ障」、ASPとかいろいろなメンヘラを併発しているおれにしては、破綻があまりなしに”初デート”は進行していった。


 で、夕暮れが近くなって、なんとなく知らない街をそぞろ歩きをしていた挙句に、ふと見ると、 「ニューロマンス」というホテルの看板が立っていた。


 


 

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