第12話


 少し、オンナにも慣れてきているので、オレは抜け目なく”ハスキーちゃん”ともLINEを交換していた。


 手持無沙汰だったので、「おひまですか?またプライベートでもデートしたいですね😊💓」と、送信してみた。

 しばらくたつと”既読”がついたが、なかなか返信は来ず、「ゼンゼン、オレナンカニキョウミナイノカナ?」と、失望して、失恋したような気分になってしまった。が、ほどなくして、「この間はありがとう。いつでも誘ってね(⋈◍>◡<◍)。✧♡」と、”脈あり”ぽい返信が来た。今度はじわっとうれしくない、小躍りでもしたい気分になった。こういう感情の起伏の急激さは現代ならではかも?


 いろいろやりとりして、”ハスキーちゃん”の本名は「細川千尋」で、26歳の独身。別の大学の文学部卒で、ドイツ文学専攻だった…等々のことが分かった。司書歴は2年で、”恋人募集中”らしい。


 童貞喪失からまだ一週間で、感激の余韻冷めやらず?で、オナニーの時も、いや普段ものべつ幕なしに『Man's heaven』で”佳さん”と過ごした時の思い出、記憶の断片がオーヴァーラップというかフラッシュバックする状態だった。


 ”佳さん”に送った「体験記」は、ピエロのお姉さんに出会い、誘惑されて、初体験に至ったいきさつをほぼ現実ありのままにまとめて、セックスというものを知った後の、なんだかオトコとしての自信がみなぎるような、新しい感覚?を強調しておいた。


「すばらしい文才!どうもありがとう。」と返信が来て、まあまあ及第点だったみたいだった。一度行きずりの情事をしただけなのに、あれ以来、なんだかスーパーモデルぽい佳さんの極上の美肉の味やイメージは、寝ても覚めてもつき纏っていて、もやもやしていて、愛着をインプリンティングされた雛鳥みたいにぞっこんとりこにされているような趣だった。

 

 が、金欠の身の上で、しばらくは身動きも取れず、文字のやり取りで我慢するしかなかった。童貞で、カノジョとかも縁遠い人生だったので、普通に好かれたこともなくて、ステディな仲に発展するというプロセスというか、どういう風に「男女交際」が成立して、カップルが出来上がっていくとかも見当がつかない。


 試行錯誤していくしかないな?と、思い定めて、それでもおれは研究熱心なので、綿矢りささんの恋愛小説を読んでみたりした。「LOVE理論」という本を薦めてくれる友人がいたのを思い出して、読んだりもした。


 で、実践が大事だから?と、次は「デート」というものにステップアップすることを試みることにした。


 さっそく例の”千尋ちゃん”に、「デートに行くならどんなところがいいと思う?」と、おそるおそる、わくわくしつつお伺いを立ててみた…


<続く>

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