第5話

 


 個室で、二人きりになった。

 暗めの、ホテルの部屋みたいな暖色の照明で、作り付けの浴室があった。

 ソファに並んで座る。

 かぐわしい?髪の香りがしてきて、ドキドキする。

 なんていう名前の香水だろうか?


 「…おねえさんは、なんて呼べばいいのかな?」

 「一応ね、本名は ”ケイ”よ。ほら、佳人薄命、ていうでしょ?あの字よ。」

 「うんうん。美人薄命ともいうよね。佳さんか。なんか可愛らしくて、ちょっと綺麗で、ぴったりやなあ」


 ピエロメークを落とした素顔は、きめの細かい美肌で、鼻筋が通っていて、笑顔が魅力的にキマっているタイプだった。

 そうして、ダボダボの衣装の下には、ほとんど極上にセクシャルな、綺麗すぎるスレンダーボディが隠されていたのだ!

 そう、大げさだが、美の神・ビーナスもかくや、という気品ある華麗さ、匂い立つような女神さまの降臨?という風情だった。

 

 ピエロのお姉さんは、おれの慧眼通り?、やっぱり、「脱いでもスゴイ」典型のタイプだった!

 「スゴイプロポーションやなー。モデル?」

 「モデルもしたことあるよ。雑誌に載ったりもしたし。でも目立つの嫌いやから、こんなバイトしてるの。よくアタシがモデル級美女って見抜いたわねー」

 お姉さんは目を細めて、ペロッと舌を出して笑った。

… …

 「それじゃ、お風呂入る?」


… …


 一緒に湯船につかって、ニコッと微笑みあう。

 なんとなく、益子直美というバレーの選手を連想させる笑顔だった。

 ”佳さん”は、モデル並みの体形の上に、乳房は洋ナシ型で、ハリウッド女優みたいだった。しかも全身がなんとなくピンク色に輝いている…ぬめのような肌、とかよくいうが、ヌメってなにかな?などと埒もない雑念が浮かんだ。


 だいたい、成熟した異性の全裸を、まじかでまじまじと見るのすら、おれにとっては空前絶後なのだ。いや、絶後は変だな、前代未聞?


 「ちょっと失礼しまーす」とおちゃめな感じに言って、佳さんはおれのペ〇スを含む。


… …


 オレの腰の上に乗って、佳さんは気がふれたように頭と腰を悶々と振り立てる。

 「ふん、ふん、…」


が、さっきしこたま呑んだビールおせいで、射精できなかった。


 結局、シャトル?は発射失敗で、挫折したが、しかし、オレは、あまりにも美しいすてきな筆おろしの紙?神?に出会えたことを感謝したのだった。


 「ライン教えるから、PR文、お願いね。いくら長くてもいいけど、できるだけ体験とか具体的に美化してくれたらありがたいけどね」


「わかりました。あの…ラインは佳さんの個人的なものなの?また連絡してもいいのかな?」


佳さんは、ちょっと赤くなって、うなずいた。


その赤らめ方は、初めて見た…英語で、「flush」と書くのはこれかな?と思った。和訳だと「朱を散らす」?


 得難い体験で、童貞のまま死ぬ人だとお目にかかれない表情かな?とか思った。

 …このことを書いてもいいけど、ちょっと文学的で、細かすぎるかな?いずれにせよ、童貞とか喪失できて本当に良かったな、とおれは首尾しゅびに満足したのだった。


 その日の間、醜い朱鼻しゅびのことも忘れて、おれはにたにた笑っていたのだった。


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