第37話 長老との会談
「本日はお目通りをお許し頂き、誠に恐縮でございます。
長老様にはご不快なことでございましょうが、何卒お許し下さい」
「……ふん」
そうして何とか、長老との話し合いに漕ぎ着けたわけだが、そこで全て決着めでたしめでたしとなるわけもなかった。
場所は先日門前払いされた邸宅である。
上等そうな椅子にかけた長老は、酷く機嫌が悪そうだ。
だが、少なくともこの前や更にその前のように、こちらを見るなり掴みかかるような様子はなかった。
気分は殆ど猛獣を前にしたようなそれである。
息遣い一つにも気を配り、慎重に切り出した。
「……長老様。どうか一つだけお聞かせ下さい。
私はどうすれば、どのように振る舞えば長老様の御心に叶いますか。
せめて話なりとも聞いて下さいますか。
その術があるのであれば、どうぞ何なりとお聞かせ下さい。
私は私の使命を果たすため、如何なるものであれそれを遂行する決意があります。
どうかそれだけはお認め頂きたいのです」
「………………ふん。どうだか。
口先だけ立派なのは、神殿の常套句よ」
俯いて支えられた姿勢のまま、藪睨みにじろりと睥睨される。
一周回って冷めたのか、打って変わって静かな口調だ。
その分不機嫌さも際立って、ある意味怒鳴り散らすより不気味だったが。
「……貴様、いつまで我が領地に居座るつもりだ」
「ドミニク家の御力が、国を救う支えとなるその時までです」
「であれば倅に訴えれば良かろうが。
アドラーの小僧はそうしておる。
老い先短い老体を説き伏せて何になる」
「……この領地の今日までの発展を導いたのは長老様です。
その頭越しに、どうして勝手な振る舞いができましょう」
殆ど睨み合うような形で、長い沈黙が落ちた。
それをため息とともに破ったのは長老の方だった。
「……聞いたところによると、神殿に居座っているそうだな。
丁度いい、貴様らはここに居を移せ。
……何だその目は、別に他意はないぞ!
知らないところで領民を毒されては困るから、目の届く範囲で監視しようというだけだ!
神殿の者の擬態がいつまでも続くわけもない、今に化けの皮を剥いでくれるわ!!
覚悟するが良い!!」
そう一気に捲し立て、ふんっとばかりに横を向いたのである。
ぽかんと聞いていたヘリアンサスは、
「は、はあ……」とつい答えてしまったのだった。
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