第43話 一日目

 学園祭は計三日に分けて行われる。

 一日目は論文を含む舞台上での発表があり、午前を論文に午後からは演劇や演奏などが組まれている。

 二日目は出店がメインであり武術大会前のデモンストレーションとして弓術と魔術の的当てがある。

 派手な魔術の的当ても人気だが、清廉とした雰囲気の中行われる弓術もかなりの注目度がある。

 三日目は武術大会。

 女性男性と各競技が二種あり、騎士部門大剣や斧などの業物を扱う傭兵部門と短刀やナイフ、投擲などの斥候部門に分かれている。


 今日は一日目、レジェロを中心として魔道具作りの論文発表がある。

 この日の為に花音が先頭に立ちデザインしたのは白を基調とした魔術師の揃いのローブ。

 大きめのフードを背に垂らしたシルエットは可愛い系になっていて最初こそ男性陣に微妙な顔をされたが、獣耳のあるドルチェが袖を通した瞬間に花音の意図を理解して全員が頷いた。

 ローブは発表が終わってもグループワーク中は揃えて身につけようという話になった。

 

 壇上でクラスの別グループの発表が行われているのをレジェロは深呼吸しながら見ている。

 「慣れているでしょうに」

 と呆れたようなグラツィオーソにレジェロは恨めしげな視線を向けた。

 「いつものは決まった文面があって適宜アレンジを入れればいいだけだからね、今回は皆の努力の結果を伝えるんだ、私のせいで失敗など出来ないだろう」

 力むほどのレジェロにグラツィオーソとカランドが苦笑を漏らした。

 「さ、次はレジェロの番だぞ」

 風雅が無慈悲に告げた。

 「うん、よし!」

 気合いを入れて壇上に向かう背中に花音から声がかかる。

 「レジェくん、頑張って!」

 レジェくん呼びは採取組での活動中の呼び名だ、それに目を見開きゆっくり一度瞼を下ろしてから「うん、頑張ろう」とレジェロは壇上に上がって行った。

 

 白い揃えのローブに会場から歓声があがる。

 紹介する魔道具をドルチェが運び入れレジェロに渡す姿に誰もが笑みを浮かべている。

 「可愛い担当!」

 グッと拳を握る花音を恨めしげに見るドルチェに風雅がすまないと手を合わせる。

 実演に駆り出される花音とグラツィオーソにアルカート、バックアップに風雅とカランドが入る。

 矢面で発表するレジェロも会場の雰囲気を感じ取りいつもの堂々とした姿を見せている。

 勿論まだここでは発表出来るものしか扱わない。

 その中で失敗作ながらもこの位であれば使用途があると出してきたのは小型化の魔法陣。

 実際今スマホ型通信魔道具を作るために作った魔法陣は縮小の魔法陣で難易度や解析度は格段に差がある。

 けれどそう小さくする必要がなければこの小型化の魔法陣が活躍する。

 今までにない魔法式を編み出した風雅とカランドをレジェロが紹介すれば会場からやまない歓声が上がった。

 

 ようやく一仕事を終えたレジェロが緊張から解き放たれ、王子にあるまじき行儀の悪さでソファに倒れ込んでいる。

 「皆さんお疲れ様です」

 と、アルカートがお茶を入れる。

 蜂蜜を使った甘めのハーブティーが染み入る。

 「すごく緊張した」

 「凄かったよ、皆んな釘付けだったし」

 ハーブティーをアルカートから受け取りながら花音が言えばヘラリとレジェロが笑った。

 

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