第42話 準備期間

 スピーチはレジェロに回したため、風雅とカランドは論文の作成に全力で取り掛かった。

 実のところ風雅はコルネットと相談して将来的にフィールド大公家で魔道具の開発チームを作ろうとしていた。

 異世界ゆえの不便さ、日本での生活にどっぷり慣れ切っていた風雅はアンバランスに発達した魔道具文化に新しい風を入れて、日本での快適な生活に近づけたいという腹案を持っている。

 その取っ掛かりになる今回の論文発表は将来、自陣営にスカウトしたい有能な魔術師たちに注目してもらえるきっかけになる。

 そんな話を相談していたコルネットは、友人たちとバザーをするため先日から大量の刺繍に追われている。

 因みに読書クラブの方はレントが笑いながら「おすすめの本とか以外やることがないからね」と言って日本でも見たポップアップに簡単な感想を書いたものを図書室の本棚に貼って回って終わった。

 出し物ですらなかった。

 グラツィオーソとアルカートは対人用の試合のやり方をフォーコ騎士団長に週に三回習いに行っている。

 「暗殺なら兎も角試合となると勝手が違いますから」

 とアルカートが困ったように笑っていた。

 「粉砕しちゃいけないとか難しいわよね」

 と同意するグラツィオーソにレジェロが引いていた。

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