第33話 サロン

 「はぁぁぁぁぁあ」

 盛大な溜息を吐いたのはグラツィオーソとカランド、そしてレジェロ。

 それを風雅がコルネットと宥めているが、一人関係のない花音はアルカートと次の長期休暇で向かう町を選定している。

 「お二人は楽しそうですねぇ」

 「花音が休みの度に冒険に出るのにアルカートが付き合うから、昨日父さんと母さんから正式にアルカートが花音付きになったんだよ、おかげで昨日からずっとあの調子」

 風雅が地図を広げる花音とアルカートに視線をやる。

 「私も行きたい」

 「レジェロは危ないからダメだろ」

 「そうですわ!仮にも王族なのですから冒険者紛いの真似はおよしなさい」

 風雅とグラツィオーソに嗜められたレジェロが肩を落とす。

 「気持ちはわかりますが、いい加減参加するサロンを決めましょう」

 カランドが場を納めにかかると風雅とコルネットもそれに合わせる。

 昼休みの中庭にどんよりとした重い空気が漂う。

 「俺はコルネットが参加しているサロンに入る予定だから」

 「メインは読書ですね」

 「私、これ以上本を読みたくはありませんの」

 「私もそちらにしようかな」

 「カランドもよく本を読んでるもんな」

 魔法科は本来であればサロンに参加する必要はない、然し王族であるレジェロや高位貴族となる風雅とグラツィオーソ、今後も貴族家との付き合いがあるカランドは貴族科の生徒との交流が避けられないとして学園側からサロンへの参加が要請された。

 コルネットは貴族科のため、関係なく読書をメインの活動にしているサロンに入学後から参加している。

 花音はと言えば大公家を継ぐのは風雅だと早々に決めて放課後もせっせと冒険に出ては依頼をこなしたり、魔法薬や魔道具に必要な素材を採取したりしている。

 毎回アルカートが付き合っている。

 今日はサロンのある日のため、花音とアルカートは放課後冒険者ギルドに向かう。

 そして今までずるずると引き延ばしていたサロンへの参加はコルネットに付き合う風雅が参加の申請を読書クラブに出したことで、レジェロたちは逃げられなくなっていた。

 「せめて男しかいないサロンがいい」

 未だ婚約者のいないレジェロは格好の餌食らしく、風雅が気の毒な目を向ける。

 「私、体を動かせる方が良いのにどうしてこうどこもかしこも茶会だとか美容だとか茶会だとか茶会しかありませんの!」

 「茶会多いな」

 「女性陣はなぁ」

 グラツィオーソとレジェロが長い溜息を吐いている。


 放課後、花音とアルカートは意気揚々と元気に冒険者ギルドへ向かって行った、風雅は中庭でコルネットと待ち合わせカランドと三人でサロンのある第二図書室に向かった。

 メインの第一図書室は室というには大き過ぎる建物にかなりの蔵書が揃えてあり一般に使われている図書室となっている、向かう第二図書室は蔵書数こそ控えめながら専門書の類が多く、研究などをする生徒のために申告制で使用される図書室。

 馴染みのない図書室は書架の隙間が狭く、少し薄暗い。

 飾り気もない風景は元の世界でも古い図書館のようで落ち着くと風雅は良い印象をもった。

 図書室の奥には個室が五つありその一室がサロンの開催場所となっている。

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