第22話 魔法科の来年は
色々騒がしかろうがどうであれ、授業はある。
そして今日は風雅や花音が楽しみにしていた魔道具についての授業。
ゲネラル先生が大きな箱を抱えて教室に入ってくると、二人は目を輝かせて食い入るように箱を見ていた。
「魔道具ってそこら中にあるし、そんな珍しいものでもないでしょう?」
グラツィオーソに言われて花音が首を横にぶんぶんと振った。
「こっちの人には珍しくないんだろうけど、私と風雅にはすごく珍しいんだよ」
「そっか、魔法がない世界なんでしたわね」
「うん」
そんな話をしているうちに準備が出来たらしく簡単な魔道具の仕組みが説明される。
「今配ったのはよくある灯りの魔道具だ、今からそれを分解してもらう」
ゲネラル先生の指示に従い魔力を流しながら小さなランプ型の魔道具を分解していく。
「さて、今見えている魔導石、これに魔法陣が刻まれている」
そう言われて小さな丸い石を見れば不透明な石の中に幾つかの魔法陣が見えた。
「これに刻まれているのはライトの魔法陣とその魔力出力調整の魔法陣、そして持続の魔法陣だ」
来年度からの専攻で風雅は魔道具製作をしたいと昨日話していた。
実のところ花音は魔道具を珍しく思えど作りたいわけではなかった。
花音は洞窟での採取経験がずっと忘れられないでいる。
緊張感の中で研ぎ澄まされる感覚が齎す高揚感。
目の前の魔道具は珍しく面白いが開発をしたいとも作りたいとも思えなかった。
「来月はさ、別々になるだろうな」
「仕方ないよ、幾ら双子だって言ったって結局は別の人間なんだもん」
花音は大きく伸びをして風雅に目を向ける。
風雅は運動も得意だが何より細かい作業を好んでいた、日本ではプラモデルを作ったりもよくしていた。
「オリジナルの魔道具とか作りたいんだよな」
「風雅なら出来るよ、私はまたダンジョンに行きたいなぁ」
「素材採取かぁ、花音なら古代魔術の魔導書研究もありじゃないか?」
「あれって古代遺跡とかに行くんだよね、確かに!ちょっと考えるわ」
風雅の提案に笑顔を見せる花音に風雅は頭を掻きながら謝った。
「なんか俺のせいで花音もこっちで暮らすってことに決まりそうで悪かったな」
花音はきょとんとしてケラケラと笑いだす。
「どうしても帰りたくなったら聖国まで行くから大丈夫だよ、けど私も恋したいなぁ」
むふふと笑う花音に風雅は気になっていたことを聞いてみることにした。
「レジェロやカランドとかはどうなんだ?」
「レジェロは王子さまだし、カランドも次期宰相でしょう?住む世界が違うよ」
「お前も大公家の令嬢なんだが?」
「あんまり自覚はないかな」
まぁな、と風雅は同意しながらグッと伸びをした。
「俺もまだ全然そういうのはわかんねえけど」
そんな会話をしながら、二人は来年の授業の選択先について話し合いを続けていた。
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