第19話 破滅とまでは言わないが
剣呑な雰囲気の中それをぶち壊したのは花音だった。
「コルネットさんに話があるならここですればいいじゃない」
「それもそうだね、うんフルート侯爵令息話してくれていいよ」
花音が呆れたように言えばレジェロが楽しそうに同意しコモドに話を促した。
「そ、そうですか、それなら……」
「コモドさまぁ」
レジェロに気が引けたのか引き攣るコモドに男爵令嬢が擦り寄りながら名前を呼ぶ。
「みっともな……」
小声でそう言ったのは花音だ。
プッと風雅が噴き出す。
目敏くそれに気づいた男爵令嬢が花音を睨み付ける。
「おい、やめろ、あの二人は大公家の子だぞ」
食ってかかろうとした男爵令嬢をコモドが慌てて止めた。
「大公家、の?」
「ああ、コルネットが何故小公子といるのかはわからんが」
「はぁぁあ??何よそれ!なんでアンタなんかがそんな玉の輿捕まえてんのよ!」
男爵令嬢がコルネットに向かい叫んだ。
その瞬間コルネットの周囲に居た全員の顔から表情が抜け落ちた。
「だ、第一貴様は俺の婚約者だろう!」
「そうよ!浮気したのね!」
この二人は何を言っているんだろう、そんな気持ちが全員に過ぎる。
止まない罵声に呆れていれば、コルネットが震えているのに風雅が気づいた。
「浮気、ねえ、俺と花音はこういう場が初めてだからってパートナーが居なくて参加しないって言ってたコルネット嬢にレジェロが頼んでくれたんだが」
「うん、そうだね私がお願いをしたんだ、君たちは私の決めたことに異があるということかな?」
風雅はコルネットを背に隠し、レジェロにバトンを渡す。
それを受けたレジェロが笑みを深めて二人に問いかける。
「そもそもこのパーティーは婚約者がいる場合、婚約者をパートナーとする暗黙の了解があるのだけど、フルート侯爵令息?何故あなたの婚約者がパートナー不在で参加できなかったのかしら?」
グラツィオーソが扇子をパチリと閉じその先端をコモドに向けた。
「なんでそんな暗黙の了解があるか、わかってる?学園内で揉め事が起きないようにだよ」
カランドからも追随されたコモドが口を閉ざし睨み付けるように顔を伏せながらコルネットを見ている。
「それは、コルネットが昨日の夜に彼女に危害を加えたと」
「そんな、女とは婚約など出来るはずがない!当然婚約破棄だ!」
ビシッとコモドがコルネットに指を差した。
「昨日の夜?」
「そうよ!昨日の夜遅くに階段から私を突き飛ばし……」
「そう、おかしいわね」
グラツィオーソが扇子を開き口元を隠す。
「昨日、彼女は夕方には学園が管理するダンジョンで置き去りにされているのに?」
「助けたのは私たちなの」
「君たちは知らなかったのかな、学園の転移陣も洞窟もね、出入りすれば記録されるんだよ」
レジェロたちの言葉を聞いて、男爵令嬢が青ざめていく。
コモドは不思議そうに男爵令嬢を見ていた。
「記録にね、フルート侯爵令息、君が連れている彼女の名前があったよ」
「は?」
男爵令嬢がゆっくりと後ろに下がっていく。
コモドは目を見開き男爵令嬢を見た。
「ち、違う……知らない」
カランドが前に出る。
「実行犯は拘束済みです、彼らからは君から依頼されたと自白魔法により聴取がされています」
「呼び出したメモの鑑定魔法で、あなたの筆跡と証明されているのよ」
「殺人未遂及び上位貴族への策謀の嫌疑により君を拘束させて貰うよ」
レジェロが片手をあげ合図すれば隠れていた騎士団がゾロゾロと姿を見せ、男爵令嬢を拘束した。
喚く男爵令嬢を騎士団が連れて会場を去ると、一人残されたコモドが呆然とそれを見送った。
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