第17話 始動

 そこからの行動は早かった。

 最後の採取目標をアルカートが手早く回収し、カランドがマッピングした地図を手に最短距離で出口に向かう。

 途中、何組かのグループとすれ違いながら早々に洞窟を出た八人はすぐにゲネラル先生に連絡し、事情を説明した。

 当然、魔法科の教師陣は大慌てでコルネットを連れて洞窟に行った連中を探し出した。

 当然、徹底管理をされている洞窟だけあって素性はすぐにバレ拘束するまではあっという間だった。

 その後、レジェロとグラツィオーソ、それに花音と風雅という王国の次代を担う四人とカランドを加えた五人は学園長に面会を要請した。


 「この手のハニートラップへの対処は個々でというのはわかるけどね、でも今回のこれはダメだろう?」

 レジェロが笑っていない笑顔で学園長に詰め寄る。

 「安全に疑問があれば学園に後継を通わせる貴族は居なくなります、今回のこと騎士団長である父にも相談すべきかと」

 カランドが厳しい目を学園長に向けている。

 「まあ予測出来ることじゃあなかったにしても、学園での殺人未遂となるとこっちの世界でも問題はあるんだろう?」

 風雅がレジェロに問うようにしながらも敢えて衝撃的な言葉を選ぶ。

 「当然だ、まして今回の被害者は伯爵家の令嬢、平民や準貴族であれば裏から手を回して示談ともなるんだろうが」

 「それはそれで嫌な話ね」

 「まあ貴族社会だからね」

 「で、学園長?今回の件、見せしめも兼ねて私に預けて貰っても良いかな?」

 拒否などさせないとばかりの笑わない笑顔のレジェロに気圧された学園長がコクコクと頷いた。

 「カランド、王国騎士団と団長、それに宰相に連絡を頼む、宰相には事情も話してもらっていい」

 「了解」

 レジェロから指示を受けたカランドが学園長室を出る。

 「私と花音はコルネット嬢の所へ参りますわ」

 「そうね、きっとまだ心細いでしょうし」

 「じゃあ風雅は私を手伝って貰ってもいいかな」

 「レジェロの手伝いか、俺で手伝えるならいいぜ」

 テキパキと役割を振り分けるとレジェロは学園長室のソファに腰掛ける、風雅もその向かい側に座る。

 グラツィオーソは花音を連れて学園長室を出て行った。


 魔法科棟の救護室にコルネットはドルチェと居た。

 アルカートはレジェロから先に受けた指示に従い既に動いている。

 花音とグラツィオーソが救護室に入るとコルネットは二人の顔を見てホッと息を吐き表情を緩めた。

 コルネットの座るベッドの横に置いた椅子にグラツィオーソが座り、コルネットの手を取った。

 「コルネットさん、あなたには申し訳ないのだけど今回の件、レジェロさまや私は穏便に済ますことは出来ないの」

 「は、はい」

 コルネットは戸惑いながら頷く。

 緊張からか顔色が悪い。

 「あなたにも協力してもらうことになるわ」

 「わ、わかりました」

 ベッドに座り、コルネットの背中を花音が摩る。

 「大丈夫、コルネットさんのことは私たちが絶対守るから」

 「そうよ、でもね犯人たちは駄目なの、このままにしておくわけには絶対いかないの」

 グラツィオーソは侯爵令嬢らしい顔付きに変わる。

 元々切れ長の瞳が強い光を持ち握ったコルネットの手をギュッと掴んだ。

 「だから、協力お願い」

 「はい、私に出来ることなら」

 コルネットもまた強く頷いて返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る