第13話 最初の相棒
飛空艇の中で慌ただしく昼食をとる。
飛空艇がすごい速さで飛ぶのを疲れ切った風雅はぼんやり窓の外を眺めて休憩している。
そこへ一朗がやって来て風雅の座るソファに腰掛けた。
「風雅はどんな武器を持ちたい?剣や槍に弓なんかもあるよね」
「ああ、無難は剣なのかな」
「剣って一口で言っても両刃か片刃、大剣長剣細剣と色々あるからねぇ、向こうで悩まないよう今から考えておいてね、花音は杖かロッドだから麻里亜さんが一緒に見てくれるはずだよ」
「わかった」
暫くして山間ににょきりと建つ工業都市が見えてきた。
「あれがドワーフ国の中央都市だよ」
「なんだか厳つい街だね」
飛空艇が街に近づけばカンカンと鋼を打つ音が響いてくる。
煙に霞む街に降り立てば、岩壁を利用した街並みに花音と風雅は圧倒された。
両親に連れられて岩壁に並ぶ扉の一つに入っていく。
洞窟状の通路を進むと隠れ家のような店が現れた。
「誰かと思ったら、クレッシェントの勇者じゃねえか」
花音と変わらない身長の体格が良い長い顎髭のおじさんが片眉を上げ一朗を見た。
「久しぶりだねぇ、今日はお願いがあってきたんだよ、この二人僕たちの息子と娘なんだけどね、この子たちの相棒をオヤジさんにお願いしたいんだ」
一朗は花音と風雅の背に手を当て前に押し出した。
「ほう?お前らの子かぁ、どれ顔を見せてみな」
呼ばれるままにカウンターの前まで行く。
緊張した様子の花音と風雅をジロと見たおじさんは花音に球体の宝石が着いたロッドを渡した。
「水の回復系かね、ならこれが良かろう、それそこに魔力を流してやれば雷の矢っていう雷系初級魔法が発動するんだ」
花音は渡されたロッドを手にマジマジと見ている。
「すごい、手に馴染む……おじさんありがとう!」
「ウンウン、で坊主、お前さんはまだ真っ新だな」
「?」
「何の癖もない、これから覚えていくなら何でも使えるぞ」
悪戯気味に笑うおじさんに風雅は一瞬目を丸くした後「刀が欲しい」と力強く答えた。
「刀かぁ、懐かしいなぁ、お前さんの親父もな最初うちに来て欲しいって言ったのは刀だったんだ」
「懐かしいですね」
「そうなんだ?でも俺や父さんは日本人だから刀の方が馴染みがあるのかもなぁ」
おじさんはカウンターの奥にある部屋に向かい暫くゴソゴソと物音を立てていたが、軈て一振りの黒い鞘に収まった刀を取り出した。
「こいつぁクレッシェントの勇者たちが居なくなってから俺が試行錯誤した一振りだ」
「わっ、すごい!なんだ?」
渡された刀を持った瞬間から戸惑うように風雅が声をあげる。
「なんかすごい……馴染む?」
「わかるわかる、こう言葉にしづらいけど敢えて言うなら馴染むだよね」
折角だからと、一朗はアルカートにはダガーをドルチェにナックルを新しく購入し、ドワーフ国を後にすることになった。
帰りの飛空艇でふと一朗が真面目な顔を花音と風雅に向けた。
「魔物と戦う時は、万が一のことがあることを絶対忘れちゃいけないよ、例え弱い魔物ばかりでも油断は命に関わるからね」
花音と風雅はごくりと生唾を飲み込み頷く。
「魔法科が授業で使うダンジョンは万が一の場合にちゃんと備えてあるらしいけどね、怪我をしたら痛いことには代わりがない」
気をつけてねと一朗の言葉を二人は噛み締めていた。
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