第4話 デキる嫁




 あまりにも突然の出来事だった。


 小鬼を殺したら頭の中にレベルアップがどうたらと聞こえてきたのだ。



「な、なななんか聞こえてきた!? え、幻聴か!?」


「んん? おお、上手く機能しておるようじゃな!!」


「え? 真白、何か知ってるの?」



 僕が首を傾げると、真白は胸を張って答える。



「うむ!! 実は旦那様が眠っておる間に本棚にあったライトノベルを読み漁ってのう」


「あ、ああ、さっき異世界とか言ってたのはそういう……」


「そして、妾はステータスやら何やらというものを知って閃いたのじゃ!!」


「閃いたって、何を?」



 本棚には恥ずかしい本も隠してあるし、勝手に見るのは止めて欲しいが今は触れないでおこう。


 真白は妖しく笑って言った。



「くふふ、驚くでないぞ? 妾は妖術で『旦那様を妾好みのつよつよイケメンに育成するシステム』を作ったのじゃ!!」


「つよつよイケメンに育成するシステム?」


「うむ!! 生物を殺し、その妖力を吸収することで肉体を強化するのじゃ!!」



 つまり、僕はゲームみたいな成長をできるようになったってことか。



「……言われてみればさっきの声、真白と似てたような……」


「妾が声を当てたからの。当然なのじゃ!!」



 わ、わーお。


 神社に封印されていたくらいだし、真白が凄いことは分かっていたが……。


 目の当たりにすると改めて凄いと思う。



「……真白。僕がレベルアップしまくったら、僕は真白に相応しい男になれるかな?」


「むむ? そのためのシステムなのじゃ」


「……そっか。じゃあ僕、頑張るよ!!」


「くふふ、やる気があって何よりじゃな。しかし、一つ訂正してもらうのじゃ」


「え? んん!?」



 真白は不意に詰め寄ってきて、俺の顔を覗き込んできた。

 まとっている着物の胸元がはだけて、豊かなおっぱいがチラ見えする。


 さっきは真白の身体を直に触ったりしたけど、こういう偶発的なチラ見えは無性にドキッとしてしまう。



「旦那様は十分妾に相応しいのじゃ♡ これは旦那様をよりよい男にするための修行じゃな♡ 頑張ってレベルを上げるのじゃぞ。ご褒美もある故な♡」


「う、うん、頑張る!!」


「さーて、妾は一時間くらいしたら迎えに来るのじゃ」


「……え?」



 一瞬、真白が何を言っているのか理解するまで時間がかかった。



「じゃーの、旦那様♡」


「え、ちょ!? 置いてくの!?」


「うむ。妾はやることがある故、一度戻るのじゃ。ちなみに言っておくが、旦那様が死ぬと妾も死ぬ故、死んではならんぞ」



 それだけ言い残して、真白は僕が落ちてきた穴を通って元の世界に帰っていった。


 しかも穴はしっかり閉じられてしまう。


 え、本当に置いて行かれた!? ややややややばい!! どうしよう!?


 いや、焦っても仕方ない。とにかく冷静に――



「キエエエエエエエエエエエッ!!!!」


「ひっ!?」



 どこからか奇っ怪な生き物の悲鳴が聞こえてきて、思わず身体が硬直する。


 いや、落ち着いてる場合じゃない。


 冷静さをかなぐり捨てて死ぬ気で生き延びないと、本当に死んでしまう!!











 一時間後。



『小鬼を討伐しました。経験値を獲得します。レベルが3になりました』


「はあ、はあ、はあ、小鬼十六匹を倒してやっとレベル3……」


「流石は旦那様なのじゃ。一時間前と比べて格段に強くなったの!!」



 迎えに戻ってきた真白は感心した様子で疲労困憊の僕に言う。


 我ながら本当に頑張った。


 最初に殺した小鬼が持っていた棍棒を使い、どうにか次々と向かい来る小鬼たちをぶん殴って殺したのだ。


 強くなろうと決意はしたものの、生き物を殺す感触には慣れない。


 正直、まだ身体が震えている。



「頑張ったのう、旦那様。妾がいい子いい子してあげるのじゃ」


「あ、ありがと……」



 真白が僕の頭を優しくナデナデしてくる。


 我ながら単純というか、それだけで身体の震えが止まってしまった。


 しばらく頭を撫でられて落ち着きを取り戻した僕は、再び開いた穴を通って自宅の部屋に戻ることができた。


 帰ってきたと同時に真白が笑顔で言う。



「さて、旦那様。ご飯と妾にする? 風呂で妾にする? それとも、わ・ら・わ?」


「……ふふっ、あはは!! 選択肢が真白しかないじゃん!!」



 真白が可愛くて、僕は思わず笑ってしまった。



「むぅ、笑うとは酷いのじゃ。インターネットで調べたら夫の帰りをこうして迎えるのが妻の役割と書いてあったのじゃ」


「イ、インターネット……もう現代に順応してるんだなあ」


「妾はデキる嫁ゆえな!! して、旦那様は何を望む?」


「えっと、服とか汚れちゃったし、先にお風呂に入りたいな」


「分かったのじゃ!! ゆっくり休むのじゃぞ!!」



 僕は部屋を出て脱衣所に向かい、そこで服を脱いで浴室に入った。

 身体を洗おうと思って、バスチェアに腰かけたその時。


 僕は驚くべき事態に陥る。



「妾がお背中を流すのじゃ、旦那様♡」


「ええ!? ちょ、真白!? なんで入ってきて!?」


「くふふ♡ さっき言った通りなのじゃ♡ お疲れの旦那様はお風呂で妾が癒して、あ・げ・る♡ なのじゃ♡ なーに、もうエッチしておるのじゃ♡ 恥ずかしがる必要はないのじゃ♡」


「あ、うぅ」



 真白が浴室に入ってきた。


 それもタオルすら持たないまま、一糸まとわぬ姿である。


 僕は心臓が止まるかと思った。



「よ、よろしくお願いします……」


「うむ、旦那様に極楽を教えてやるのじゃ!!」



 僕は少し前のめりになりながら、真白に背中を見せる。

 すると、僕の背後に立った真白は声を弾ませて何か凄いことを言い始めた。



「旦那様のレベルは3になったのであったな。ならば、ここは三人の妾でご奉仕するのじゃ♡」


「んん!?」



 僕の正面にある浴室の鏡の中に三人の真白の姿があった。


 幻覚かと思って目を擦るが、変化はない。


 背後を振り向くと、たしかに三人の真白が妖しく笑って立っていた。



「くふふ、分身は妾の特技なのじゃ♡ まあ、分身はちと知能が下がるがの♡ 旦那様の身体を隅々まで綺麗にするのじゃ♡」



 そう言って三人の真白が俺の身体を洗い始めた。


 想像通りというか何というか、普通に背中を流すだけではなかった。

 温かくて柔らかすぎるスポンジが「むにゅっ♡」と俺の背中に押し当てられる。


 はうあ!? や、柔らか!? ていうかこれ、間違いなくおっぱ――



「お加減は如何なのじゃ、旦那様♡」


「さ、最高です!!」


「素直な旦那様、キュートで食べちゃいたいのじゃあ♡ ほれほれ、何をしておるのじゃ分身共。お主らも旦那様にご奉仕するのじゃ」


「「うむ……」」



 真白が命令すると、真白の分身✕2が左右から僕の身体を極上スポンジで洗い始めた。


 分身は一目見て見分けられる。


 真白と全く同じ顔をしてこそいるが、そこに表情は無く、ただ真白本体の命令に従っているだけ。


 しかし、可愛いことに変わりはない。


 絶世の美少女二人が淡々とねぶるように身体を洗ってくるのだ。

 正直、下半身の一部分が反応して熱くなってきた。


 僕はどうにか悟られまいと必死に話題を逸らす。



「ぶ、分身できるなんて凄いな、真白は」


「くふふ、妾の分身術を使ったハーレムご奉仕は男たちをまとめて相手にするために編み出したものじゃからのう。――それが今はお主一人で独占なのじゃ♡」



 俺の背中に柔らかいものを押し付けながら、真白は囁きかけてきた。

 どうして真白はそう優越感を煽るようなことを言うのか。



「ま、今は妖力が少ないからこの程度が限界じゃがな」


「こ、これ以上があるの?」


「うむ。グラマラスな妾やロリっ娘な妾も出せるようになるのじゃ」



 グラマラスな真白やロリっ娘な真白……。


 めちゃくちゃ興味がある!! ってヤバイ、想像したら下半身がもっと――



「くふふ、旦那様よ♡ なーにを硬くしておるのじゃ♡」


「ま、真白……。ご、ごめん」


「謝られても分からんのう♡ 旦那様がナニをして欲しいのか言わねば、妾は何もしてやれんぞ?」


「うぐっ」


「ほーれほーれ♡ 正宗や♡ 妾にナニをしてほしいかしっかり言うのじゃ」



 僕はもう我慢できなかった。



「エッチ、エッチして!!」


「うむ♡ よく言えました、なのじゃ♡ ご褒美はラブラブエッチなのじゃ♡」



 それから僕はお風呂場で分身を含めた三人の真白とめちゃくちゃエッチした。


 父が滅多に帰ってこない家でよかったと思う。


 そして、お風呂場でエッチした後は真白の手料理を食べることに。

 お風呂や食事の用意とか、真白は本当に天使みたいだな。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「分身ハーレムフェチ、あると思います。分身解除したら本体に快感がフィードバックしてアへる展開も好き」


正宗「さらけ出すなあ……」



「おっぱで背中洗われたい」「分身ハーレム、だと!?」「この作者、性癖開示が止まんねぇ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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