第10話

 ゴブリン騒動から翌日、村の外には出ない様に注意喚起されているなか俺は村の中の教会に来ていた。


 「おはようございます!」


 「来たのね、ショウくん。神父さまがお話があるそうよ。いつもの部屋に居るから会いに行ってくれる?」


 「分かりました。」


 教会の玄関を掃除していたシスターのお姉さんに挨拶すると、神父のおじさんが話があるそうだ。


 いつも神父のおじさんがいる魔法薬や薬を作っている部屋に向かう。


 昨日はあれほどの怪我人を治すのに大量の薬が使われていたのだから、薬の補充のために作っているのだろう薬を。


 部屋の中に入るとそこには神父のおじさんが魔法薬や薬の調合を行なっていた。


 「おはようございます!」


 「ショウくん。おはよう。早速だけど話をする前に少し待っていてくれるかい?まだ手が離せなくてね。」


 「分かりました。」


 魔道具のコンロを使って何かを煮ている神父のおじさんが話せる様になるまで俺は薬室の部屋を眺める。


 そうして見ていれば小川の周りやいつも歩いている草原に生えている植物が何種類かあるのに気が付いた。


 これらは魔法薬や薬の材料に使えるみたいだ。今度、俺が草原を歩いている時にでも探してみるのも良さそうだ。


 「ふぅ、これで完成だ。待たせたね、ショウくん。」


 「いえ、待ってないですよ。色々と見れたので。これとか村の外の草原に生えてますよね?」


 「そうだよ。気になるのなら薬草図鑑でも貸した上げよう。それでショウくんに来てもらったのはこれを渡す為だよ。」


 そう言って神父のおじさんが手渡したのは布の袋だ。大きさは片手で収まるほどだが、その中身のせいだろうか、中身の入った袋はずっしりと重たい。


 「これは?」


 「昨日の治療の報酬だよ。昨日の怪我人は多かったうえに重傷者が多かったからね。私たちも全員は癒せないところをショウくんや村の回復魔法を使える人たちのお陰で助けられたんだ。それはその時の報酬さ。受け取りなさい。」


 「分かりました。」


 確かに昨日のゴブリンの群れにやられた騒動での怪我人は多く死者も出ているほどなのだ。


 その時の治療の報酬なら素直に受け取って置いた方が良いだろう。こうしてお金が手に入ったのなら今後のジョブ取得にでも役に立てよう。


 ズボンにあるポケットの中にお金の入った袋を入れると、何か俺にもやることはあるのかを俺は神父のおじさんに聞いた。


 「そうだね。怪我人の看護をするくらいかな?まだ治したばかりで急に動ける者は軽傷くらいしかいないからね。それでやるかい?看護は大変だよ。」


 「初めてでも良いのならやります!」


 「それじゃあお願いしよう。」


 それから俺はシスターのお姉さんの1人に看護の仕方を教えて貰いながら治ったばかりの怪我人たちの看護を行なった。


 流石に動けない怪我人の数は少ないお陰でそこまで長時間の仕事はなかった為、看護の仕事が終わった俺は神父のおじさんに魔法薬や薬の作り方を習うことになる。


 魔法薬や薬の作り方を教わりながら俺は昨日の騒動がこれから今後はどうなるのかを神父のおじさんから聞いた。


 どうやらまだ森の奥へと逃げたゴブリンがいることから、村から1番近い町のインザ町から冒険者を呼ぶのだそうだ。


 インザ町には中級のダンジョンがある為、そこそこ強い冒険者が集まっているので今回の騒動の原因であるゴブリン退治くらいなら余裕だろうとのこと。


 ちなみにダンジョンには等級があり、それは下級、中級、上級、最上級、特級の5段階であり、同じく冒険者もこの5段階で階級を表す。


 「それなら安心です。いつから村の外に出られる様になるのか分かりますか?」


 「冒険者たちが森のゴブリンを退治して森の確認が終わった後だろうね。まあそれほど時間は掛からないだろう。」


 それほど時間が掛からないのには安心した。早く薬草図鑑に書いてあった植物の採取とかやってみたいしね。


 そして、夕方になる頃に俺は家に帰る。もちろん魔法薬や薬作りの手伝いのお駄賃を神父のおじさんから貰って増えたお金の入った袋をポケットから感じながら家に帰った。


 「ただいま!」


 「お帰りなさい。聞いたわよ。神父さんやシスターさんたちのお手伝いをしていたそうね。」


 「うん!それで手伝ったからってお駄賃貰った!ほら!」


 神父のおじさんから貰ったお金の入った袋を見せる。


 「そう。それは大事に使うのよ。分かったね?」


 「うん!」


 そんな会話しているとそれを聞いていた兄たちが騒ぎ出す。どうやら俺だけがお金を貰ったのは狡いのだとか。


 「俺たちにもそれを寄越せよ!弟だろ!分けろ!それかぜ〜んぶっ、寄越せ!!」


 「そうだぞ!!」


 「はぁ、お前たち馬鹿なこと言ってんじゃないよ!!」


 母さんが居るところでそんなことを言えばどうなるのかくらい分からないのだろうか?


 兄たちは馬鹿だな、と思いながら俺はこの場から避難する。すると、後ろの方から兄たちを叱る母さんの怒声が聞こえてきた。


 「父さん、ただいま。」


 「おかえり。聞いたぞ、ショウ。良くやったな。」


 「うん!」


 大きな手のひらが俺の頭を撫でる。力が強くて若干だが痛いがそれでもそこまで嫌じゃないのは前世の記憶が戻る前の記憶や感情もあるからだろう。


 俺は父さんに今日あったことを話していると、ようやく向こうでは母さんの説教が終わったのか、こちらに泣き腫らして目元を赤くしている兄たちがやって来る。


 やって来た兄たちは俺のことを見つけると睨み付けるが、それを父さんに見つかり、父さんは兄たちに眉を顰める。


 「はぁ、ショウを睨むな、2人とも。それは筋違いだぞ。ショウは働いて貰ったんだからな。」


 「お、俺たちだって!!!?」


 「そ、そうだ。俺たちだってそれくらいやれるんだ……。」


 兄たち2人とも拗ね始める。これは長くなりそうだ。そう思っていると、父さんはもう一度ため息を吐いてから俺がどんな事をやったのかを兄たちに説明を始めた。


 これは俺がこの場にいるのは逆効果かもと思い、俺は父さんに母さんの手伝いをすることを伝えてこの場から逃げることにした。


 母さんの元へと逃げた俺は夕食を作っている母さんを新しいジョブの取得も兼ねてお手伝いをする。


 簡単なお手伝いをしながら夕食作りが終わる頃には父さんの説明が終わっており、不貞腐れている兄たちとオカズの奪い合いをしながら夕食を食べるのだった。

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