第3話
父さんと母さんが家に帰って来た。今日は農業が終わるのは早かったようだ。
「ただいま。帰ったぞ、ショウ。」
「ショウ、ただいま。」
「おかえり。父さん、母さん。」
父さんも母さんも容姿は良い方だ。これなら今世の俺の容姿も悪くはないだろうと思う。
実際に鏡がないから確認できないが、父さんと母さんは茶色の髪に黒い目をしているので、俺も茶髪に黒目なのだろうな。
両親が帰って来たので【念動力】で木の人形を動かしてジョブスキルの熟練度を上げるのは止めることにする。
2人は畑仕事で疲れているのか居間で座って水を飲んで休息していた。そんな2人の目を盗んで【念動力】をするのは他の玩具だ。
子供の片手で持てるサイズの積み木を俺が持っているように周りには見せながら持ち上げていく。
そうして持ち上げた積み木を使って積み木の塔を作っていく。その時に積み木の塔がバランスを崩して倒れないように【念動力】で支えながらやるのが倒れないコツだ。
今ある積み木全てを使って立てていく積み木の塔は高くても子供の背丈よりも低いサイズであるが、ここまで高く立てようとするのは中々に難しい。
「おっ、かなり高く出来てるな。凄いぞ、ショウ。」
「うん。崩れないようにするの大変だよ。」
父さんに積み木の塔を褒められるが、【念動力】で崩れないようにしてズルしているので、これはそこまで凄くはないが【念動力】のことは秘密にしているので教えることは出来ない。
でもいずれは【念動力】のことを教えないといけない日が来るのだろうが、それでもまだ教えるつもりは予定にはない。
母さんがパパッと料理を作る頃には俺の2人の兄が帰ってきた。2人はこの村の友達と遊んでいたのだろうか、服や顔には土汚れが付いているのが目立っている。
その事を母さんは怒っているが、2人は何食わぬ顔をして手を洗いに向かっていた。
その間にも母さんが作った料理が皿に盛られている。そうして料理が皿に盛られて昼食が始まった。
どうやらこの世界には食事の前の挨拶はないようだ。すぐにスプーンやフォークを使って兄2人は料理を貪っている。
どんどんと料理が減ってしまう。急がないと俺の分が食べられてしまうと焦って俺も料理に手を付けようとするが、そんな俺を思って取り皿に母さんが盛ってくれた。
「はい、ショウ。」
「ありがとう、母さん。」
取り皿に盛られた料理を俺は食べる。今世の記憶が戻る前の記憶の中では美味しかったが、日本の料理に比べて味は塩味しかしない味だ。
美味しいと騒ぐほどでもないが食べられる程度の味であるが、こう言う食事しかないと記憶で分かっている為、俺は出された料理を食べていく。
パンはどうかと口にしてみればパンはボソボソしており、柔らかくない硬いパンだった。
これは出されたスープに漬けて食べよう。スープは塩味だけど何かの動物の骨を使って出汁を取っているのか、スープが出された料理の中で1番美味しい味だ。
そうして昼食を食べ終われば午後の農作業が始まる。午後は家族揃っての畑仕事をするのだが、その時に俺はジョブを変更しようとした。
その時にジョブを変更すると、それまでのジョブで貯めた熟練度が初期化されると画面に表示されて焦る。
まさかそんなことになるとは思わなかったからだ。本当ならジョブはその時その時で切り替えて使おうと思っていたのだが、この世界はそんな事を許してくれない世界のようだ。
仕方ないとジョブは変更しないでこのまま農作業をすることにした。
今日行なう農作業は畑に生えている雑草を抜くことだ。我が家の畑の範囲は広い為、家族総出で雑草抜きをしても簡単には終わらない。
それに記憶にある通りならば1週間に一度は雑草抜きをしないとすぐに育ってしまうそうなのだ。
「暑さで倒れるからな。水分補給と休息は取るんだぞ。」
「わ、分かってるよ!」
父さんが言う通り、水分補給や休息を取らずに畑仕事をして倒れたことがある者が我が家にはいると記憶にある。
その張本人である1番上の兄であるチャゴスがその時のことを思い出したのか恥ずかしそうに言う。
暑い天気の中での農作業は熱中症になる可能性が高い。父さんの言う通りに水分補給をして倒れないようにしよう。今の俺は3歳の子供なのだから本当に気を付けないといけない。
それぞれの作業範囲に分かれると、俺も畑に生えた雑草を抜いていく。その際に畑に生えている雑草ではない野菜と間違えないようにしないと注意しよう。
手を使って雑草を抜こうとするが、思ったよりも根を張っている雑草は抜きにくい。
これは手を使って抜くのは大変だ。両足を使って踏ん張って抜かないと雑草が抜けないので、一度の雑草抜きでも疲労してしまう。
どうしたものかと考えて【念動力】を使うことを思い付いた。この【念動力】は俺が意識を覚醒された時に取得しているようで、今世の記憶の戻る前の俺は雑草を手を使って抜いていたこともあり簡単には気付かなかった。
手で雑草を掴んで雑草を抜こうと力を込めながら、更に【念動力】を使って雑草を引っ張ることで俺が想像していたよりも簡単に雑草が引っこ抜けた。
「ここまで簡単に抜けるなんて。」
雑草がすんなりと抜けてしまい驚いてしまう。これからは【念動力】を使って雑草を抜いていこう。そうすれば簡単に抜けて俺の作業範囲はすぐに終わるだろう。
ああ、でもそうなるとみんなよりも早く農作業が終わってしまい怪しまれてしまう。これはゆっくりと雑草を抜きながら【念動力】を鍛えればいいか。
土を【念動力】で動かしたりしながら雑草を握ったり、目に付いた虫を【念動力】で潰したりしながら雑草を抜いていく。
途中で水分補給の休息を入れたりしてのんびりと自分の作業範囲の雑草を引き抜いて行き、兄さんたち2人が畑仕事を終わってから10分したら、俺の作業範囲の雑草を全て抜き終わるように調整する。
「終わったー!!父さん、母さん!家に帰るね!!」
「おう!分かった。帰る前に水分補給してからにしろ!」
「分かった!!」
そうして自分の範囲の畑仕事が終わった俺は父さんと母さんに家に帰ることを伝えて家に帰ると、誰も居ない家の中で木の人形を使って【念動力】を鍛えていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます