第11話 先輩とは、そういう関係なの…?
プリクラの個室から出たところで、幼馴染の
それは偶然であり、
幼馴染の麻衣は小柄な感じの子であり、昔同じ中学校や小学校に通っていたほどの間柄である。
将来の目標が違い、別々の高校に通っているものの、今でも関係性は良好な方だ。
この頃は麻衣の方が忙しいようで頻繁に連絡をしていたわけでもなく、侑吾からしても久しぶりの遭遇であった。
「侑吾……どうしてここに?」
「なんていうか、たまたま、ここに来る機会があって」
侑吾は簡単に事の経緯を説明する事にした。
「そ、そうなんだね。アレ? 背後にいるそちらの方は?」
麻衣は梓先輩の方へ視線を向かわせていた。
「学校の先輩なんだけどね」
「そ、そうなんだ……初めまして」
麻衣は礼儀正しく頭を下げている。
先輩もそれに応じるように頭を下げる時だけ帽子を取っていた。
「侑吾は、これからどうするつもりだったの?」
「まだ何も決めていなかったんだけど」
「じゃあ、ちょっと別のところに行かない? 別のフロアに飲食スペースがあるし。そこに行くのはどうかな? でも、無理ならいいんだけど」
幼馴染は二人の様子を伺いながら、小声になっていた。
「先輩はどうしますか?」
「……多分大丈夫そうだから。私は一緒に行ってもいいけど」
梓先輩は侑吾に聞こえる程度の声で話す。
他校の人であれば、そうそうバレる心配はないのだと判断したのだろう。
「では、行きましょうか」
状況を見て判断した麻衣は、その場から歩き出す。
先輩も侑吾と共に、彼女の後に続いて移動する事となったのだ。
侑吾はデパートの飲食スペースのあるエリアにいた。
そして、侑吾を含めた三人はテーブルを囲うように座っている。
飲食スペースはそこまで混んでいる様子もなく、比較的自由な席が多かった。
三人がいるテーブル上には、先ほど購入した飲み物が各々の前に置かれている。
ゆっくりとした時間を過ごせればいいのだが、侑吾は両隣の二人の様子を伺うようにコップを手に飲み物を口にしていた。
「侑吾がプリクラを撮るって珍しいよね?」
ジュースを軽く飲んだ後、侑吾の左隣にいる麻衣が、消極的な表情を見せながら話を切り出してくる。
「そうかな?」
「昔はゲームセンターに来ても、そんなに興味なさそうだったし」
麻衣とは小学生の頃、ゲームセンターによく遊びに来ていた。
高校生になった今では、プライベートで関わる機会も減り、遊ぶ事もなくなっていたのだ。
考えてみれば、確かに幼馴染とプリクラを撮った経験はない。
あの頃はゲームで遊ぶ事しか頭になく、プリクラを撮ろうという発想には至らなかったのだろう。
「でも、頼まれたからさ」
「そちらの先輩から? なんか、以前と比べて少し変わったよね、侑吾って」
幼馴染はつまらなそうに呟いていた。
「……やっぱり、そちらの先輩とは付き合っている感じなのかな?」
「付き合っているというか」
「まあ、そんな感じね」
侑吾が説明しようとした時、
「そ、そうなんだ。やっぱり、そういう間柄だから、プリクラを……」
麻衣は何となく、そういう意味合いで理解してしまっていた。
「でも、高校生だし、侑吾に彼女くらい出来るよね……じゃあ、やっぱり、私帰ろうかな。ごめんね、私の方から誘っておきながら」
麻衣は二人とは視線を合わせることなく、その場に立ち上がり、飲み終わったコップを持って立ち去って行ったのである。
麻衣は空気感を読んで立ち去って行ったと思われるが、侑吾は彼女を引き留める事が出来ず、梓先輩と二人っきりの状態でテーブル席に座っている。
仮に引き止めたとしても、その後の事は何も考えていなかった。
でも、心残りしかなく、幼馴染がいなくなった空虚感に襲われ、席に座ったまま悩み込んでいた。
「さっきの子について悩んでいる感じ?」
「そ、そんな感じですね」
梓先輩は侑吾の事を見つめていた。
「でも、先輩もこれから行きたい場所もあるんですよね?」
「……別に……まあ、行きたいところはあるけれど。それは別の日でもいいわ」
意外にも先輩から帰って来た言葉はあっさりとしたものだった。
「本当はあなたと関わる予定だったけど。さっきの子って昔からの友人なんでしょ?」
「そうですね。小学生の頃からの関係で」
「だったら、あの子と今日は過ごしたら?」
「いいんですか?」
「私たちは学校でも関われるんだから。普段、関われない人との時間を大切にしなさいよ」
「わかりました……すいませんが、今日はここで」
侑吾はコップに残っているジュースを飲み干した後、席から立ち上がる。
侑吾は先輩に頭を下げたのち、立ち去る事にしたのだ。
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