第4話 初めての彼女との放課後

 野村侑吾のむら/ゆうごが公園で待っていると、学校の生徒会室で業務を終えたであろう梓先輩がやってくる。


 今いる場所は学校と意外と近く、周辺には中学や小学校もあり、周りからは遊んでいる子や下校中の子らの声が良く聞こえてくるのだ。


「ちょっと業務が長引いてしまって。でも、しっかりとやってきたから問題ないと思うから」


 侑吾の目先にいる上野梓うえの/あずさ先輩は学校内で見せていた黒髪のロングヘアを紐で束ねており、ポニーテイル風にしていた。


「イメージチェンジですかね?」


 侑吾は先輩の頭らへんを見て言った。


「まあ、そういう感じ。簡単に言えば、ちょっとした変装的な」

「……え?」


 あまり意味はない気もするが、それが先輩なりの判断なのだろう。

 だが、実際のところ髪型が変わる事で、若干は先輩の雰囲気も変わっており、意外と知り合い程度の人にはバレない気もしなくもない。


 まあ、ただの一時的な対策にしか過ぎないと思う。


「えっと、今からどこに行くんですかね?」


 侑吾は気分を切り替えて発言した。


「それはね、どこかのお店よ。あなたもお腹が空いてたりするでしょ」

「それなりには」

「そうだよね。私もお腹が減っていたところで。一応、恋人みたいな事もしてみたいし、まずは一緒にどこかのお店に入りたいなって」


 気づけば、侑吾は男性なのに梓先輩からリードされてしまっており、彼女から誘導されるがままに公園から立ち去る事となったのだ。


 今から向かう先は街中から少し離れた場所に位置する喫茶店。

 公園から歩いて十分ほどの場所にある喫茶店に、二人は入る。

 若者向けのカフェとは違い、そこまで派手さはないものの、洒落た雰囲気や落ち着いた空気感が店内には漂っているのだ。

 店内にかかっているBGMも心地よく、心が洗礼されるようだった。


 扉の鈴が鳴り響き、店の奥から出てきた一人の女性店員が二人を席へと案内してくれる。


 向き合うように席へと座った二人。

 そのテーブル上に女性店員がメニュー表を置き、“ごゆっくりどうぞ”と一言だけ言葉を残し、その場から立ち去って行った。

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