カラスとオオカミそして人間
内野広宣
カラスとオオカミそして人間
『あー食った食った』
オオカミは人里で放牧されている羊を食べてきたのだ。
『もう,食えん。あと一週間は何も食わんでいいわ』
オオカミは森の泉の前で横になると、カラスに肉片をやった。
『お前は自分では狩りもせんな!!たまにはしろよ』
いつものように上から目線で嫌味を言った。
カラスは内心悔しい気持ちがありましたが、
『へへへ、いつもありがとうございますオオカミ様』
と言いながら、肉片を平らげた。
カラスは崖の上の枯れ木に止まりながら考えました。
なんで俺はオオカミなんかに嫌味を言われなきゃいけないんだ。俺のほうが年上なのに・・・。
まったくオオカミは友達を大切にしなさすぎる。
何とか懲らしめる方法はないかな?
カラスはオオカミのことを調べまわって、弱みを探すことにしました。
一週間後。オオカミが人里の草原に現れました。また羊を食べるつもりらしい。
カラスは空の上から見ていました。
遠くを見ると人間の少年が人里のほうへ走っていくのが見えました。誰かを呼びに行ったらしい。
オオカミは羊を半分くらい食べたら、周りをきょろきょろして、ゆっくりせずに、そのまま走って森の中へ入っていった。
カラスは不思議に思いました。
なぜもっと食べないんだろう。まだ、半分も残っているのに
。
空をくるくる回りながら、考えていると、猟師が鉄砲を持って走ってきたのが見えました。
どうやら、オオカミは猟師が怖いらしい。
カラスは、いいことを知ったと思いました。
カラスが森の中の泉の前に行くと、オオカミがいました。カラスが、
『猟師が怖いのかい?』
と言うと、
オオカミは、
『俺を何様だと思っているんだ!!人間なんかこわくないぞ!!』
と言うと、カラス用にとっておいた肉片をポイガブッと自分で食べてしまいました。
あっという間でした。
カラスは何も言い返せずに我慢して、帰りました。逆らうとまた、肉片を貰えないからです。
いつもの枯れ木の枝に止まりながら、
『くそーオオカミのやつ!!いい気になって!!』
と、くやしがりました。
何とかオオカミを懲らしめる方法はないのかと一生懸命考えました。
次の日、カラスは人里に飛んでいきました。
空を飛びながら、まず、あの少年を探すことにしました。羊の群れを見張っている少年を見つけました。
『お―い少年!!』
少年は声が聞こえたけど、周りに誰もいないので、驚きました。
『誰だい、どこにいるんだい』
『おーい少年こっちだよ』
カラスは少年の目の前におりました。
『カラスが、しゃべってる!!』
『驚かないで話を聞いてほしいんだ』
『何だい?』
『猟師のおじさんの所へ連れて行ってほしいんだ』
『え!?嫌だよ。おじさんにはいつもオオカミが来るのをもっと早く教えてくれないと駄目じゃないかって、叱られてるんだ。』
『大丈夫。いい知らせだよ』
『本当に?』
『早くおじさんの所へ連れてってくれよ』
少年はカラスを連れて猟師のおじさんの家に来ました。
『おじさーん。お客さんだよ』
カラスと漁師のおじさんは秘密の話をしました。
次の日。
周りをきょろきょろとしながら、人里へ降りてきたオオカミはいつものように、羊を食べようとしました。
その時!!
物陰に隠れていた猟師は、オオカミを鉄砲で撃ちました。
バタンと倒れるオオカミ。
実はオオカミが動くのをずっと見ていたカラスはオオカミより早く猟師のもとへ行き、オオカミが来るのを知らせていたのでした。
そして・・・。
カラスは毎日村人たちから食べ物を貰えるようになりました。
二度とオオカミに言われたような嫌味を言われることはありません。
猟師とカラスの秘密のやり取りはこうです。
オオカミの狩りのことをカラスが教える代わりに村人たちはカラスに毎日食べ物をずっとくれ続けるとの約束をしていたのです。
カラスは今日も得意げに村の上を飛んでいます。
村の周りを大きく回るように飛びながら、オオカミたちが村に来ないか警戒しています。
村人たちに感謝されながら。
カラスとオオカミそして人間 内野広宣 @hironobu3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。カラスとオオカミそして人間の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
今グループストーカーに言いたいこと。/内野広宣
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます