第8話 変容した学校
なにか物が落ちたような音がして、僕は目を覚ました。
体のあちこちが痛み、ちょっと力を入れてみるも少しでは起きれず焦る。いや、体勢が相当に悪いだけだった。向きを変えてみて起きる。
天気が悪かった。
気持ちの悪い曇り空。曇り空はそもそもあまり好きではないが、好みとかそういうレベルじゃなく、気味の悪い空。
周囲を見渡して、さっきまでいたところと景色が違っていることが分かる。
まず、しろちゃんがいない。
「気を失ってたんだよな……」
手を握ったり開いたりしながら呟いた。どうも、声の調子がおかしかった。無機質な、そして手ごたえのない感じ。違った。自分の声じゃなくて反響している音がおかしのだ。
「どこだここ……」
知らない場所で、しかも一人。
ちょっとでも理解の助けになるものはないかと思って目を凝らすと、コンクリートの壁が目についた。それから窓。窓がいくつも見下ろすようにならんでいる。
――――学校。学校だった。
でも僕の知ってる学校とはずいぶん違う。
コンクリートにはひびが、亀裂がところどころに入り、冷凍庫にでもぶち込んだのかというように凍てついていた。窓のデザインも変わってる。格子だけが増え、ガラスの部分だけが狭い。本来の目的を損なっている状態。
なにより、学校の校舎全体に有刺鉄線が張り巡らされていた。
刑務所、牢獄、監獄、そんな言葉が頭に並んだ。
その時、突然爆音が響いて身体を揺らした。続いて砕け散ったガラスが、玄関――――下駄箱のあるとこから、煙と一緒に噴き出してくる。
「…………………………………………………ッ!!」
あまりの驚きに息を飲む。だが、それ以上に衝撃的な光景が僕の目に映った。
僕の数少ない友人である井上が、煙の中から苦しそうに出てきていたのだ。そして玄関口でぱたりと倒れる。
「お、おい! 井上……ッ!!」
「き……北川……?」
意識はある、がとても苦しそうに顔を歪めている。体を揺すってから仰向けにすると爆発の煙を吸い込んだのか、九の字になって咳き込んだ。起きる事態に頭や心が追いつかず、軽くパニックになる。
医者でも救護隊でも呼ぶのか、といっても辺りには誰一人いない。そもそも人のいるような空間なのか? ここは。
「……げほ……ッ! ……ケホ……ッ!!」
いくつかの疑問を抱えていると、粉塵がこちらまで流れてきたのか喉に引っかかった。真綿で首を絞められているような錯覚に陥る。
「……っ……しろ……は……」
「…………え……ッ!?」
井上が何事かを呟いて、僕は耳を近づけた。
「しろ……白浜が……っ」
しろちゃんは困り顔 冬見 @fuyumi8
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