第7話 別世界
本当になにを考えているのやら、僕は傍からで十分だ。
次にしろちゃんから木の棒を渡された。
僕がわりと必死で集めた木の棒、細かいやつじゃなくて大きいやつ。
これで今度はどうするのか説明を求めると、魔方陣を囲む線を引くらしい。濃い目に引くのがコツだとかなんとか。どうも前に引いたはずの線が薄くなって効力が弱まっているらしい。
効力……。
僕はこの時点で大分嫌気というか、疲れてきていたのだが、しろちゃんが真剣そうに地面に線を引き始めたので文句を言おうとしていたのをやめた。
ざりざりと、ほとんど小学生の頃以来の音を聞きながら、ふと思い立った。
「そういえばさ、しろちゃんは……」
「ん?」
しろちゃんが線を引く手を止めて顔を上げた。
僕はなるべくそっちの方をみずに尋ねた。
「失踪してたとき、どこにいたの?」
「……あー……」
「まあ、あまり深くは追求しないけど」
しろちゃんは見つかった。
僕が探し回って二日か三日くらいの時に電話がかかってきて、それで分かった。
しかし、周りからも本人からもその間何をしていたか詳しく聞いていなかった。もちろん、聞きづらいところあったけど。
若い子がフラフラする、なんてことは無くはないし、しろちゃんも平然とした対応だったためにあまり気にしていなかったのだ。
無事。
それが分かれば十分だと思う。
……んあ? じゃあ何で今さら聞いたんだ僕?
「いろいろ……知り合いのところとかかな」
「知り合い……」
しろちゃんの知り合い。
井上とかしか思いつかない。これで意外と交友関係が広かったらどうしようか。大学生、社会人、とある組織、ニート、ホームレス、宇宙人……その他いろいろ。
僕は今のとこまだまだである。要するに平凡のそれを抜け出さない。ありきたりな輪の中。まあ、それでも良いことや素敵なことはあるけど。
……しろちゃんの言い方から察するに、男とかのところではなさそう。
僕は妙な緊張感を胃の中から吐き出した。
わけがわからない。
仮に彼氏でもいたとして、どうだっていうんだろう。僕はしろちゃんの恋愛うんぬんに口を出すつもりもないし、彼氏が出来たからといってしろちゃんへの対応が変わることもない。
ない、多分ない。……よな?
「北川もさ、なんかあったらどこかに行っちゃえばいいと思うよ」
「はあ……」
凄い適当なアドバイスだった。とりあえず頷いておく。
「頑張っても頑張っても無駄だったりさ、あるいは方向違いだったり。あ、ここに自分のいる意味や居場所ってないなー、どうしようかなー、とか。そうなったらの話ね」
「…………」
心当たりがないわけでもない。僕も学校とかで感じたことはうっすらとある。けど、大抵の場合はどうにかなるものだと思う。しろちゃんのニュアンスはどこかキツイ。
「もうそろそろ出来たりしない? 魔方陣」
「ふぇ? あ、たしかに……うん、まあ、これで」
僕の位置から見て、ざっくりとだけど図の様なものが完成していたので言った。完成図はしろちゃんにしか分からないが、あとは小物類を正確に追加していくだけだと思う。
「じゃあ、今度は拾ってきたやつを置いてくれる?」
「うん」
僕は魔方陣の中に足を踏み入れて、小物類を置いていく。しろちゃんの魔方陣制作の手伝い、それが僕のいまやるべきことだ。
と、一通り小物類を配置し終えて、僕は気づいた。
この魔方陣ってのはどう起動するんだ?
「中央の部分に乗ったりするの?」
「んー?」
「いや、この意味深そうなとこにさあ……」
僕は言いながら足を乗せた。しろちゃんが遅れて言ってくる。
「――――あ、そこ前に実験してた時に物がいきなり消えたことがあって、」
僕の意識は突然まっくらになって、消えた。
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