第49話 再び差し込む光

 ミナセは敵を逃した後、レビナ大将が乗る戦艦が敵軍へ特攻し、爆破されると言う状況を目の当たりにしていた。


 ミナセが目まぐるしく変わる戦場に理解と感情が追いつかずに混乱していると、


『私はバライア准将だ。今からこの戦場はレビナ大将に引き継ぎ、私が指揮を取る』


 バライア准将から指揮が自分へと譲渡されたことについての通信が入る。


 それを聞いたミナセは本当にレビナ大将は敵軍へ特攻を仕掛けたのだと理解した。


 そして、彼の命を賭けた行動をミナセは心の底から尊敬した。


 あんなことは自分には到底できない。


 それをレビナ大将はやって見せたのだ。


 彼を敬うのは当然と言えるのだろう。


 そうして、ミナセが指揮系統がレビナ大将からバライア准将に変わったことを確認していると、いきなり自分へ猛スピードで近づく何かに気がつく。


 ミナセはすぐに戦闘モードに意識を切り替えると、レーダーに反応があった方へ視線を向ける。


 そこにはGrimoireの姿があったが、あのGrimoireは他の機体とは違っていた。


 他の機体は頭に1本の角が生えているが、あの機体には3本の角が生えている。


 それに、他の機体よりも全体的に少し大きくなっているように見える。


 何よりも違うのはその携行する武器の種類であり、今接近してきている機体は他のGrimoireと比べて武装が大型かつ種類も多い。


 何よりも他のGrimoireよりも速度が速いのだ。


 明らかに他のGrimoireとは違うことにミナセの勘は危険だと知らせてくる。


 そして、ミナセはガンを撃破したGrimoireはあの機体ではないかと推測した。


 あれは明らかに量産機ではなく、ワンオフ機である。


 ワンオフ機を与えられる者は基本的にエースパイロットであり、エースパイロットならば、ガンを倒してもおかしくない。


 それに、あの武装の数を使いこなせるとなると、それは間違いなくエースで間違いない。


 そうして、ミナセは迫り来るエース機であるGrimoireにどう対処するかと考える。


 先ほどのGrimoireとの戦闘でミナセはレーザーライフルを失ってしまった。


 そのため、今のミナセはレーザーブレイドと盾の2つの武装しかない。


 この2つの装備でエースとやり合うのは危険であるため、ミナセは撤退も考えた。


 しかし、ただでさえ普通のGrimoireにも推力で負けているのに、ワンオフ機の高性能Grimoireに推力で勝てるはずもなく、逃げることは実質的に不可能だ。


 なので、ミナセは迫り来るGrimoireを迎え撃つことにする。


 そのようにミナセが考えているうちにGrimoireは彼女の元にやってくる。


 それはガンのことを仕留めたネストのGrimoireで間違いなかった。


 ネストはミナセと接敵すると同時に彼女へ向けて両手のシールドガトリングで彼女へ攻撃を仕掛ける。


 ミナセは急速にスラスターを噴かすことで、ガトリングによる銃撃を回避する。


 ガトリングを回避されたネストはそのまま避け続けるミナセのことを狙い続ける。


 ミナセはネストへ反撃したくても遠距離攻撃手段を持たないため、彼との距離を詰めようと前へ進む。


 しかし、ネストのGrimoireは他のGrimoireよりも速いため、追いつくことなどできない。


 そうして、何とかネストに追いつこうとミナセは前へ進んでいるが、彼女はまだ気がついていない。


 ネストによって自分が誘導されているということに。


 ミナセはネストの狙いに気が付かずに彼へ近づこうとスラスターを全力で噴かし、前へ進み続けると、いきなりネストが方向転換し、一気に上昇する。


 ミナセも急停止すると、ネストを追いかけようと上昇しようとする。


 しかし、ミナセは真上へ視線を向けた時に気がついてしまった。


 自分へ向けて戦艦が主砲を発射していることに。


 そして、ミナセはネストが自分を主砲の射程まで誘き寄せられたことにも気がついた。


 だが、今更気がついたところで遅い。


 主砲はすでに発射されてしまっており、今から回避行動に移っても避けられない。


 盾で防ごうにも戦艦の主砲を耐えられるだけの耐久力などない。


 ミナセは自分がもう終わりであることを察した。


 そして、ミナセは小さな声で呟く。


「ごめんなさい…アラヤくん…今度は君のことを守ろうと思ったのに、私にはできなかったみたい…」


 そう、ミナセが最後の独白をしている最中、目の前が主砲のレーザーが真っ白になる。


 ミナセは恐怖のあまり目を瞑る。


 そうして、ミナセが目を瞑った瞬間、いきなり彼女の前へ何かが現れた。


 次の瞬間、ミナセへ放たれた主砲はその何者かによって防がれてしまう。


 その光景を見ていたネストは驚きのあまり目を見開き、ミナセはいつまでも来ない死を不思議に思いながら目を開ける。


 そして、主砲が止んだ時、ミナセの前にはアストライアが彼女を守るように立っていたのだった。

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