第48話 軍人として、父親として
レビナ大将は相手のエース小隊によって迎撃部隊が追い詰められていっている状況を何とか打開できないかと考えていた。
そうして、レビナ大将がこの状況を打開する案を考えているうちにも1隻、また1隻と落とされていっている。
ニスベル隊の隊員たちの頑張りもあり、彼らの猛攻はある程度抑えられてはいるが、それでもこちらの戦艦の方が落とされている数は多い。
そのような不利な状況に立たされているレビナ大将は考えている最中、敵軍の攻撃により、乗っている戦艦が大きく揺れる。
レビナ大将は自分の席に掴まりながらオペレーターたちに指示を飛ばす。
「戦艦の被害はどうなっている!!」
『主力砲台は全て破損!!副砲の損害は8割!!機銃も約7割が破壊されました!!』
「クソ!!ほとんどの攻撃手段が奪われてしまったか!!」
レビナ大将は先ほどの攻撃により、自分の乗る戦艦の攻撃能力を大幅に失ったことに嘆いた。
レビナ大将たちが乗る戦艦はこの作戦に参加しているどの戦艦よりも攻撃性、耐久性のどちらも優れている。
そのため、レビナ大将が乗る戦艦が無力化されると大幅に火力を失ってしまうことになる。
この火力差をどう埋めればいいかとレビナ大将が考えている時、再び敵軍の攻撃を受ける。
今回は電磁パルスシールドによって大破は逃れられたものの、戦艦は大きく破壊された。
そして、レビナ大将たちのいる艦橋付近にも敵軍の攻撃が当たっているため、艦橋の窓は割れ、窓から様々な破片が中へ入ってきた。
その破片により、多くのオペレーターは体を欠損し、そのまま息絶えてしまった。
何とか、無事に済んだレビナ大将であるが、周りを見てみると、多くのオペレーターたちが死んでしまっている。
このままでは戦艦としての役目も果たせず、司令塔としての役割もままならない。
そのため、レビナ大将は覚悟を決める。
覚悟を決めたレビナ大将は自分を除くこの場で最も信頼できる上官に通信を繋ぐ。
「バライア准将に頼がある」
それは今も最前線で戦い続けているバライア准将であった。
バライア准将にレビナ大将は最後の頼みを彼へ伝える。
それを伝えられたバライア准将は最初は戸惑い、彼の提案を拒否した。
それでもレビナ大将が引くことはなく、彼の意思を尊重したバライア准将は彼からの提案を飲むことにした。
そうして、準備が整ったレビナ大将は自らが舵を取り、船内にアナウンスをする。
「全員聞け!!今からこの艦は敵軍へ特攻を仕掛ける!!生き残りたいものは今すぐ脱出艇でこの戦艦を離れろ!!これは強制ではない!!君たちには生き残る権利がある!!だから!!私と共に死にたいと思う者だけが残れ!!」
今から敵軍へ特攻を仕掛けると。
それは自分の命を犠牲にする行動だ。
そのため、レビナ大将は逃げたい者たちは今すぐ脱出艇で逃げるように告知する。
レビナ大将は残ってもせいぜい1割程度残ればいい方だろうと考えていた。
しかし、現実は誰一人としてこの戦艦から離れるものはいなかった。
そのことにレビナ大将が驚きを隠せずにいると、
『大将!!俺も一緒に行かせてください!!俺たちは未来のためにこの身を捧げられる覚悟があります!!』
1人の兵士がそう通信を入れてきた。
彼は機銃を担当している兵士であり、レビナ大将とは面識はなかった。
それでも彼は自分についてきたいと言った。
そうして、1人の兵士が名乗りを上げた瞬間、レビナ大将の元へ多くの兵士たちからの同行したいと言う声が届く。
そのことにレビナ大将は嬉しくも思いながらも、自分と心中させることになったことへの罪悪感も抱いていた。
それでもレビナ大将はすぐに意識を切り替えた。
彼らはマタイ共和国のために名乗りを上げたのだ。
彼らを憐んでは逆に彼らに対して失礼にあたるだろう。
だから、レビナ大将はこの特攻を成功させる義務がある。
そうして、覚悟が決まったレビナ大将は戦艦の舵を力一杯握ると、
「皆の意思はよく伝わった!!私について来い!!」
戦艦を全速力で発進させた。
レビナ大将はかつて、戦艦の艦長として様々な戦果を上げた凄腕だ。
そのため、レビナ大将はその時に培った経験を活かし、敵軍は全速力で突進を仕掛ける。
その際、戦艦は敵軍からの攻撃を喰らい続けたのだが、それでも前へ進み続ける。
そうして、敵軍の主力艦隊の中枢にたどり着きそうな時、敵軍からの猛攻撃を受ける。
だがそれをレビナ大将は今まで取っておいた電磁パルスシールドによって防ぎ、そのまま中枢へたどり着く。
そして、中枢へたどり着いた瞬間、
「バライア!!今だ!!!」
バライア准将に合図を送る。
レビナ大将が合図を受けたバライア准将は狙いをレビナ大将の乗る戦艦へ合わせる。
そして、レビナ大将の乗る戦艦へ向けて主砲を発射した。
バライア准将によって発射された主砲のレーザーによって戦艦が爆発する前、レビナ大将はペンダントの中に入っている写真を眺めていた。
そこには彼の若かりし時の姿と1人の女性が写っており、女性の腕には赤ん坊が抱かれている。
その写真を見ながら、レビナ大将は呟く。
「この言葉は届かないが、それでも言う。俺はみんなのことを愛してる。だから!!最後はみんなの未来を守るために!!父親として!!軍人として!!最後の使命を全うする!!」
彼がそう言うと同時に、彼の乗る戦艦は大爆発を起こし、周りにいる戦艦もろとも巻き込んで散っていった。
そうして、彼の伝説は受け継がれる。
最後まで国のために戦い続けた軍人と。
そして、最後の時まで家族のことを愛していた父親と。
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