第47話 敵の特攻

 ネストは目の前で海の方へ落ちていくBASIAのことを眺めていた。


 海へ落ちていくBASIAのコックピットは完全に破壊されており、中に乗っているパイロットは確実に死んでいるだろう。


 それでも生きていた時は面倒であるため、左手に持つはバズーカランチャーで狙いを定め、追い討ちと言わんばかりに完全破壊する。


 そうして、ネストは完全破壊したBASIAとの戦いを思い出す。


 このBASIAのパイロットはまさにエース級と呼ばれるパイロットであったのは間違いないだろう。


 ネストも彼のBASIAに予想以上に苦戦を強いられた。


 しかし、あくまでも苦戦を強いられただけだ。


 ネストはこのBASIAとの戦闘で一切の被弾もすることなく、相手を倒すことができた。


 ネストはBASIAをしとめた後、次のターゲットを探し始める。


 そんな時、自分の方へGrimoireが近づいてきていることに気がつく。


 その相手を確認してみると、それは出撃前に話しかけてきた彼の部下、ナイルであった。


 ナイルがこちらへ近づいてきていることに気がついたネストは彼との通信を繋ぐ。


「ナイル?こっち来ているようだが、何か用でもあるのか?」


『それが敵の新型に左腕をやられてしまって撤退してきたんですよ〜まさか、こんなところで隊長に会えるとは思ってもいなかったです』


 どうやら、こちらへ向かっているナイルは敵にやられてしまい、一時的に撤退していたところのようだ。


 その話を聞いたネストは少し興味深そうにしながら質問を続ける。


「それで、お前の左腕を斬り飛ばした相手は強かったのか?」


『まあ、俺が不覚をつかれる程度には強かったと思いますよ?隊長なら苦戦しないと思いますけど』


「ほう?その程度の実力ならいい練習台になってくれそうだな。それで、そいつはどこにいる?」


『それなら、このまま少し前へ飛んでいけば、会えると思いますよ。それで、隊長?練習台とか言ってますけど、一体何をしようと考えているんですか?』


「ナイルが気にしなくていいことだ。来るべき時が来たら教えてやる」


『はいはい、いつもの隊長って感じの返事ありがとうございます〜それじゃあ、俺は敵艦の破壊の方はできるので、そっちに精を出してきますね』


 ナイルはそう言うと、ネストとの通信を切り、彼とすれ違う前くらいで方向転換をして何処かへ飛んで行ってしまった。


 ネストはナイルが仕事に戻ったことを確認した後、少し考え事をする。


「あの漆黒のATLASはまだ戦場にはきてねえようだが、いつくるか分からねえからな。ここは例の作戦のための練習をしておくべきだろうな」


 ネストはそう独り言を呟く。


 彼の言う例の作戦とは、アストライアを誘き寄せて戦艦の砲弾を命中させると言う作戦だ。


 これはあまりにも無謀な挑戦であるため、ネストも一発で成功させるだけの自信はなかった。


 そのため、ナイルが戦っていたパイロットで試しにこの作戦をやってみることにしたのだ。


 これで、実際に上手くいけば、そのまま同じ手をアストライア相手にすればいいし、失敗したとしてもその教訓から色々と調整すれば良い。


 この作戦の練習はどう転んだとしてもネストにとってはメリットでしかなかった。


 一つデメリットを挙げるとすれば、相手を仕留めることに少し時間がかかってしまうことだろうか。


 その程度のデメリットなら無視したとしても問題ないだろう。


 ネスト小隊が出撃してから、戦況の方はこちら側が優勢になりつつある。


 彼らも必死にGrimoireに対抗しているようだが、彼らがGrimoireを落とすよりもネスト小隊が戦艦を落とす方が早い。


 この調子ならば、相手の艦隊を壊滅させるのも時間の問題だろう。


 そう思いながらネストが飛び立とうとした時、一隻の敵艦が味方艦隊方へ突進を仕掛けていた。


 その戦艦はこの戦場の中では最も大きい戦艦であり、それがわざわざ敵へ無理矢理近づいていっている。


 その行動にネストは理解が追いつかずに頭を悩ました。


 そうして、ネストが敵艦のことをよく観察してみると、その突進を仕掛ける戦艦は至る所が破壊されており、主砲なども完全に破壊されている。


 そのため、あの戦艦は戦艦としての役目はもう全うできないことが窺えた。


 そして、ネストはあの敵艦が戦艦としての役割が全うできないことに気がついた時、あの戦艦が何をしようとしているのか分かった。


 ネストは慌てた様子で敵艦へのバズーカランチャーでの攻撃を仕掛ける。


 しかし、敵艦は最大級の戦艦であるため、ネストの待つバズーカランチャーの攻撃にも耐え続けながら、前へ進み続ける。


 他の戦艦たちもこの突進を仕掛ける敵艦への攻撃を仕掛けているが、急遽展開された電磁パルスシールドによって防がれてしまう。


 そうして、戦艦が味方艦隊の主力部隊が集まる前方中枢へ到達した瞬間、後方から他の敵艦が放った主砲の大型レーザー兵器による狙撃が直撃した。


 次の瞬間、この敵艦は味方艦隊中枢で大爆発を起こし、何隻もの戦艦を巻き込みながら大爆発を起こした。


 敵の無謀な特攻にネストは舌打ちをしながらも気持ちを切り替え、ナイルと戦った者の元へ向かったのだった。

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