第45話 ガン VS Grimoire

 ガンが敵艦隊を撃沈させながら空を駆けていると、レビナ大将からの通信が入る。


『ガン中佐、敵軍のGrimoireにより、我が軍の戦艦が次々と撃沈されていっている。このままでは全滅するのも時間の問題だ。対処を頼めるか?』


 どうやら、敵軍のエース部隊が投入されたらしく、彼らによって戦艦がいくつも落とされているらしい。


 このまま戦艦が落とされるとサーダマ師団との正面火力での押し合いに負けてしまうため、早急に対処する必要があった。


 ガンはレビナ大将からの救援を受けると、


「分かりました。今から敵戦域から脱出し、Grimoireの対処に移ります」


 そう言うと、他のニスベル隊の隊員たちにも指示を出す。


「お前らも聞いていた通り敵のエース部隊が投入されたようだ。俺たちでそいつらを止めるぞ!!」


 ガンがそう言うと、ニスベル隊の隊員たちは勇ましい声で返事をする。


 そして、ガンも敵艦への攻撃から敵エース機への撃破へ向かうために撤退を開始する。


 撤退するガンに対し、サーダマ師団の戦艦たちは砲撃を続けるが、ガンの腕前とBASIAの性能によって全て回避されてしまう。


 そもそも戦艦についている砲門や対空砲ではATLASを狙って仕留めることは難しいため、彼らか逃すのも仕方ない。


 そうして、撤退を開始したガンへ味方艦隊の方へ向かうMessiahが襲いかかってくる。


 Messiahは手に持つマシンガンでガンを狙い続けながら距離を詰めてチェーンソーで斬り刻む算段なのだろう。


 しかし、Messiahの射撃はガンに当たることはなく、一気に距離を取られることで有効射撃範囲から出ていってしまう。


 次の瞬間、ガンによる狙撃によってMessiahはコックピットを撃ち抜かれ、そのまま海へ降下していく。


 ガンはMessiahを仕留めた後、そのまま味方艦隊の方へ帰還すると、そこには高速でヒットアンドアウェイを続けるGrimoireの姿があった。


 彼らが一気に戦艦との距離を詰める度に手に持つバズーカランチャーによって戦艦は破壊されていく。


 その光景を目にしたガンはこのままでは本当に主力部隊がやられてしまうなと感じ、高速で撤退するGrimoireへ狙撃する。


 しかし、Grimoireは重装甲には似合わない速度で空を飛翔しているため、ガンは弾を外してしまう。


 ガンが狙撃に失敗したことで、狙撃されそうになったGrimoireはガンの存在に気がつき、軌道を変えながら左手にアサルトライフルに持ち帰ると、ガンへ向けて撃ってくる。


 ガンは盾を構えながら射撃を続けるGrimoireへレーザーライフルで対抗する。


 だが、Grimoireは圧倒的な推力による高速飛行で空を駆けているため、ガンはなかなか仕留められずに苦戦を強いられた。


 そうして、お互いが激しい銃撃戦を繰り広げている時、相手のGrimoireが後方から飛んできたMessiahと激突しそうになる。


 その際、Grimoireが回避するのではなく、Messiahが回避したことによって何とか難を免れていた。


 その光景は別におかしなところは一切ない。


 このような乱戦時には味方機とぶつかりそうになることなど数えきれない。


 特に重力圏内での空中戦は制御が難しいため、ぶつかりそうになるのも仕方ないだろう。


 だが、ガンは少しの違和感を感じる。


 あれだけの推力があるのならば、わざわざ相手が避けてくれるのも待たなくても自分で回避してもいいのではないかと。


 それにあれだけの高速飛行をしているのだから、自分で避けた方が絶対に安全である。


 それなのに、Grimoireは自分で避けずにMessiahの方に避けてもらっていた。


 そのことに気がついたガンはふと、思う。


 もしかしたら、直線移動が速いだけでいきなりの方向転換などはできないのではないかと。


 そう思ったガンは試しにGrimoireの軌道上の少し先の部分へ向けてレーザーライフルを撃ってみる。


 そうすると、ガンの撃った位置にGrimoireはそのまま飛んできて、レーザーライフルの弾を縦で防いだのだった。


 その光景を見たガンはGrimoireは急な方向転換が苦手だと断定し、彼はGrimoireの軌道を予測しながら射撃を加えていく。


 偏差射撃は高い技術が求められるため、ガンの腕を持ってしても簡単に仕留められることはできない。


 それでもガンは連合軍の中でもエースの部類に位置しているため、数をこなせばそのうち当てられるはずだ。


 そして、その時は彼らが戦闘を始めてから5分が経過した時だった。


 ガンがここぞと言わんばかりに撃ったレーザーがGrimoireの腹部を捉えた。


 Grimoireはそれでもガンを倒そうと武器を構えたのだが、反撃する時間など残されておらず、ジェネレーターの暴走によって大爆発を起こす。


 何とか、Grimoireを1機落とすことのできたガンはすぐに仲間たちへGrimoireの弱点についての情報を共有した。


 そうして、ガンは次の相手の元へ向かおうとしていた。


 しかし、ガンはまだ気がついていない。


 自分の元へ高速で近づいてきている存在に。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る