第36話 レビナ大将

 ミナセはニナからアラヤのことについて色々と教えてもらった。


 彼がとても優秀な整備士であり、将来はATLASの研究をしたいと思っていたことを。


 どんな相手にでも偏見を持たず、等しく接する優しさを持っていることを。


 そして、責任感が強い癖に心が強くないことも。


 だから、ミナセはそんな彼を私利私欲のためだけに利用しようとしている彼らが許せなかった。


 ミナセがマタイ共和国軍の上官たちの腐敗具合に怒りを覚えていると、


「貴様ら!!いい加減にしろ!!!!」


 いきなり黙っていたレビナ大将が大きな声で叱責した。


 レビナ大将に叱責された上官たちは理解が追いつかずに間抜けズラを晒している。


 そんな彼らにレビナ大将は言葉を続ける。


「あの少年は一般人なのだぞ!!貴様はそれを分かって言っているのか!!」


 レビナ大将は怒気が籠った声で続ける。


「我々軍人はあの少年のような一般人を守るための存在ではないのか!!!それなのに、それなのに!!貴様らときたら!!その一般人に守られようとするなど!!軍人の風上にもおけん!!そんなに命が惜しかったら貴様らも民間人たちと一緒に避難でもすれば良い!!」


 そして、レビナ大将は生き残ることしか考えていない上官たちにそう吐き捨てた。


 レビナ大将から叱責を受けた上官たちは下を向いたまま何も話さない。


 どうやら、レビナ大将の言葉が相当効いてしまったのだろう。


 そんな彼らをよそにレビナ大将はサーダマ師団の迎撃ついての会議を続ける。


 レビナ大将の叱責を聞いていたミナセは彼の軍人としての志に感動してしまった。


 彼はこのマタイ共和国軍の中でも生粋の軍人であろう。


 そうして、彼らの会議は深夜まで続き、サーダマ師団の迎撃作戦の詳細を何とか決め切ることができた。


 しかし、その内容はあまりにも無謀とも呼べる作戦であった。


 それでも今できる最適解の作戦であり、これ以上いい作戦を思いつくことはできなかった。


 その作戦を彼らはすぐにニニシア基地へと集まっている者たちへ通達する。


 そして、他の基地にいるマタイ共和国軍にも作戦内容と救難信号を出している。


 ニニシア基地にいる兵士たちはこの作戦の内容を聞いて、彼らも心の奥底で無謀だと思う。


 それでも彼らは覚悟の決まった顔をしている。


 その理由は様々であり、


 生まれ育った国を守るため。


 大切な人たちを守るため。


 失った仲間や家族の仇を取るため。


 死なないようにするため。


 1人1人の兵士によってその考えは違った。


 それでも唯一同じなのはこの作戦に本気で挑むという志であった。


 彼らは力を持たない民間人を守ることが仕事だ。


 だから、彼らはその仕事を今度こそ全うするためにと気合を入れる。


 そうして、彼らは迫り来る出撃に備えて各自睡眠を取ることになった。


 睡眠を取らなければ、全力を出し切ることは難しいだろう。


 一方、整備士や救援部隊の兵士たちは明日の準備で大慌てである。


 明日行われる作戦は大規模なものであり、整備しなければならないATLASも戦艦も山ほどある。


 それに、明日の戦闘で必要となる物資も山ほどいるだろう。


 だから、彼らは大慌てで明日の準備を進めたのだった。


 そのようにして、ニニシア基地で兵士たちがそれぞれ自分の任務を全うしている中、アラヤはコックピットの中で引きこもり続けるのだった。

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