第35話 最悪の知らせ

 ミナセはアラヤとのことを何とか落ち着かせた後、自分の部屋へ戻ろうとしていた時、通信端末に連絡が入る。


 通信端末に送られてきたメールを確認してみると、緊急招集という文字が書かれていた。


 こんな遅くに緊急招集なんてただことではないと思いながらもメールの内容を確認してみる。


 しかし、メールには緊急招集をかけた理由などは書かれておらず、メールには収集後に説明するとしか書かれていなかった。


 ミナセは仕方ないので、そのまま作戦司令部へ向かう。


 そうして、司令部についたミナセは周りを見てみると、自分が所属するニスベル隊の隊長であるガンがいた。


 ガンの姿が見えたミナセは彼の近くへやってくると、話しかける。


「こんばんは、隊長」


「おお、ミナセか。なんか用か?」


「隊長はここに呼ばれた理由などは聞いているのなら教えてもらうと思いまして」


「それが俺も知らんのだ。ただ集まるように言われただけでな。多分だが、相当な緊急事態であるのだろうな」


 ガンはそう言うと、ため息を吐きながら眉間に皺を寄せていた。


 その様子を見ていたミナセは何だか嫌な予感がした。


 ガンがああやってため息を吐き、眉間に皺を寄せている時は大体悪いことが起きる。


 そのため、このガンの行う一連の行動はニスベル隊では不幸の兆しとして恐れられている。


 ちなみに、ガン本人はそのことを信じておらず、たまたまだろと言い続けている。


 ガンの一連の行動に嫌な予感がしていたミナセが不安に思っていると、


「よくぞ集まってくれた。今回は急を要する案件だったため、こんな遅くなってしまってすまない」


 そう言って現れたのはマタイ共和国軍の大将であるレビナであった。


 まさかのマタイ共和国軍のトップが来るとは思ってもいなかったミナセたちは驚いたような表情を浮かべている。


 彼らは連合軍所属ではあるものの、今はマタイ共和国軍の指揮下にあるため、彼らにとっても上官にあたる。


 そのため、ミナセたちも慌ててレビナ大将へ敬礼をする。


 レビナ大将は敬礼している者たちへ軽く手を上げて敬礼をやめさせ、早速本題へ入っていく。


「早速本題に入るが、6月12日02:00に我が軍の宙域防衛隊とサーダマ師団との戦闘があった。彼らの戦闘は激しく、宙域防衛部隊は壊滅ーーー」


 そうして、レビナ大将は説明を続ける。


 彼の話を要約するとこうである。


 宙域防衛部隊の生き残りはニニシア近郊の海に不時着。


 今日の14:30に彼らは見つけられ、救出された。


 彼らの話によると、サーダマ師団は何らかの手段により、通信妨害を行っている。


 そして、その通信妨害のせいで彼らは応援要請が出せずに壊滅させられたと。


 しかし、彼らはエーゴン隊長の指揮により、サーダマ師団の約6割を撃破することができたそうだ。


 それでもサーダマ師団は侵攻をやめず、現在このニニシア付近まで迫ってきているそうだ。


 その話を聞かされた上官たちは慌てた様子で仲間内で話し合っている。


 ミナセたちもこの危機敵状況に頭を抱えるしかない。


 そんな彼らにレビナは話を続ける。


「彼らの話からサーダマ師団がニニシアに到着するのは明日の10:00頃だと予想される。連合軍にも救難信号は出してはいるが、あまり当てにならないだろう。そのため、我々のみで彼らを迎撃することになる」


 その話を聞かされた上官たちの話はさらに白熱した。


 これからどうするのか。


 どこでどう迎撃するのか。


 相手の主力部隊は残っているのか。


 彼らは様々なことを話し合っていく。


 そして、今のニニシアに集まる兵力だけではサーダマ師団の迎撃は極めて難しいと結論が出る。


 そうして、彼らが絶望的な状況に頭を抱えていると、1人の上官がとある提案をする。


 それはアラヤたちに出撃してもらうという案だ。


 その案を聞いた時、他の上官たちも次々とその案に乗っていく。


 アラヤの状況をよく知っているミナセは彼が出撃できるような状況ではないことをよく理解しているため、


「待ってください!!彼はまだ出撃できるような容態ではないんです!!あんな状態で戦場に立たせるのは不可能です!!」


 彼らに抗議する。


 しかし、


「いや、彼ならきっとやってくれるよ。彼はこのマタイ共和国を救う英雄になるんだ」


「英雄にはこの程度の試練なんてつきものだろう?戦場に立てば、きっと彼も戦う決心がつくだろう」


「それに、彼らはあの少年にとっての仇だ。さぞ、喜んで出撃してくれるだろう」


 上官たちの多くはミナセの意見を聞こうともしない。


 彼らは全く新家の気持ちを理解していない。


 いや、理解する気などないのだろう。


 彼らは必死に自分たちが生き残るために新家のことを利用しようとしているだけだ。


 そのことがミナセはどうしても許せなかった。


 

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