第28話 初撃破
ビルトは例のATLAS、アストライアに苦戦を強いられていた。
アストライアの持つレーザーライフルの威力は凄まじく、その威力は戦艦の大型兵装にも匹敵する。
それをあのアストライアはまるで普通の弾のように連射してくる。
こちらは少しでも掠ったら終わりだというのに、アストライアはこちらの武装が全く効いていない。
ビルトの搭乗するReaperの基本武装である銃器『リベアルライフル』は小型化したフルオート型のレールガンである。
リベアルライフルは電磁力の力を使って弾丸を飛ばすため、電力さえ賄えれば、好きな威力で撃ち出すことができる。
それに、リベアルライフルの弾丸は金属の塊だけであるため、装弾数の向上や予備弾が嵩張らないという利点がある。
デメリットとしてはジェネレーター直結型の武装であるため、ジェネレーター出力の弱い機体では扱えないということだ。
そして、このリベアルライフルは自由に威力を調節できることから、ビルトはBASIAを木っ端微塵にするだけの威力で射撃していた。
それなのに、アストライアには傷一つつけることすらも叶わなかった。
あまりにも馬鹿げた装甲にビルトは頭を抱えるしかなかった。
ビルトも最初は自分の前にわざわざ探し物が出てきたことに喜んでいた。
しかし、その喜びも相手の圧倒的な性能の前に消失した。
明らかに、あの機体はATLASという兵器の領域から逸脱している。
あの機体は一体何なのだ?
何故、あのような機体が今まで隠されていた?
遥か昔からあるとされる機体が現在の武装でも歯が立たない?
そもそも軍上層部が言っていることは事実なのだろうか?
ビルトの頭の中はそのような疑問で埋め尽くされる。
それと同時に、アストライアに搭乗するパイロットの違和感にも頭を悩ませていた。
あのアストライアに乗るパイロットは明らかに未熟である。
動きにも無駄が多く、戦場での視野もそこまで広くない。
この勘は間違いなく当たっている。
ビルトは多くの戦場を経験したことで身につけた勘だ。
これが外れる時は自分の命が終わる時だと思っているほどには信用している。
それなのに、あのパイロットの射撃能力だけは桁外れに高いのだ。
その腕前は恐ろしく、射撃という一点だけを見れば、アストライアのパイロットは自分よりもその精度が高い。
その精度はまるで機械のようであった。
アストライアに苦戦を強いられているビルトはこのまま1人で戦うのは分が悪いと考え、先ほどアストライアの捜索に出した2人をこちらへ向かうように指示を出している。
そうして、ビルトがアストライア相手に時間を稼いでいると、2人はアストライアの背後を取ることに成功し、そのまま一斉掃射を行いながらアストライアへ近づいていった。
しかし、2人の射撃にアストライアは怯みすらもせず、アストライアは銃弾の雨を受けながらレーザーライフルで狙いを定めていた。
あのパイロットの射撃の腕は異常に高い。
このまま狙われれば、2人はアストライアによってやられてしまう。
そのことを危惧したビルトはアストライアへ向けてリベアルライフルで連射する。
アストライアはリベアルライフルでも装甲に傷をつけられることはないが、それでも体勢を崩すことはできる。
そのため、射撃のタイミングでビルトは体勢を崩すために銃撃を行なった。
しかし、アストライアは体勢を崩した状況でも狙いを定め、ビルスマルクの乗るMessiahのコックピットに向けて射撃した。
だが、体勢を崩していたこともあり、アストライアはギリギリのところで当てることができなかった。
普通ならば、ここで終わっていただろう。
しかし、アストライアのレーザーライフルの威力は凄まじく、ある程度頑丈な装甲でなければ、余波だけでも大破しかねない。
そして、ビスマルクの乗るMessiahの装甲はReaperほど硬くない。
そのため、ビスマルクのMessiahはレーザーの余波によって体が大きく削られてしまう。
幸いなことにコックピットにまでは余波が届いていなかった。
だが、ビスマルクの幸運はここで終わる。
ビスマルクの乗るMessiahは余波でコックピットは壊れなかったものの、ジェネレーターはこの余波によって破壊されてしまった。
それも中途半端な壊れ方をしたせいで、ジェネレーターは暴走を起こした。
そのことに気がついたビスマルクは、コックピットから出ようとするが、扉が開かない。
どうやら、レーザーの余波によって電子機器系統も壊れてしまったようだ。
そのため、脱出ができないビスマルクは、
『た、助けて!!隊長!!い、嫌だ!!!!死にたくない!!死にたくない!!お願いします!!助けて下さい!!隊長ぉぉぉぉおおおおおお!!!!』
必死にビルトへ助けを求めながらジェネレーターの暴走による爆発に巻き込まれ、戦死したのだった。
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