第27話 初戦

 アラヤが搭乗するアストライアは一気に飛び上がり、ニニシアを見渡す。


 現在、ニニシアで暴れていたMessiahの大多数はニスベル隊によって撃破されている。


 アラヤはどこへ向かえば良いか分からず、モニターを眺めながら視線を泳がしていると、


『アラヤ!!今すぐあそこに向けてレーザーライフルを撃って!!』


 慌てた様子のニナがレーザーライフルをモニターに表示した位置へ向けて放つように言われる。


 アラヤは彼女から言われた通り、レーザーライフルで狙いを定めると、目標へ向けて発射する。


 放たれたレーザーは一瞬にして空気を蒸発させ、真空状態へとなる。


 そうして、放たれたレーザーは目標地点へ着弾した。


 アラヤが目標地点がどうなったかと目を凝らしてみていると、ニナがモニターの一部をズームしてくれて目標地点を映してくれた。


 映し出された映像には紺色のATLASとエメラルドグリーンのATLASがいた。


 そして、アラヤはエメラルドグリーンのATLASのことを知っていた。


 何故なら、あのATLASはBASIAであり、今は亡き彼の父が開発したATLASであるからだ。


 アラヤは直ぐにBASIAと紺色のATLASとの間に割って入るように着地した。


 着地したアラヤは紺色のATLAS、Reaperへ視線を向けた。


 BASIAは彼の父の設計によると、GAMESの約1.5倍以上のジェネレーター出力を誇り、重力圏内での戦闘で引けを取ることはないと言っていた。


 そんなBASIAが追い詰められていると言うことは、相手が相当な手練れであることが窺える。


 アラヤはモニターの端の方にいるニナに話しかける。


「なあ、あのATLAS見たことあるか?俺は一度も見たことないんだけど」


『私もないなーだけど、他のATLASとは一線を画す性能であることは間違いないね』


「だろうな。そうじゃなきゃ親父のBASIAが追い詰められるわけがないからな」


 アラヤはそうモニターに映るニナに言う。


「それで、どうだ?あいつは俺たちだけでやれそうか?」


『こればっかりは分からないなあ、だけど私たちならきっと倒せると思うよ』


「そうか…そうだな。俺たちならきっとできる!!ニナ!!全力でサポートしてくれ!!あいつをやるぞ!!」


『うん!!』


 アラヤはそう言うと、Reaperへ向けてレーザーライフルを構える。


 改造によって強化された五感を集中させ、Reaperに狙いを定める。


 ニナもアラヤの照準を補正し、完璧に狙いがあったタイミングでアラヤはReaperへ向けてレーザーライフルを撃つ。


 圧倒的な出力から放たれる超極太のレーザーはReaperへ向けて一直線に進んでいき、Reaperを飲み込もうと迫り来る。


 Reaperもその高機動を生かし、放たれるレーザーを何とか回避することに成功する。


 そして、回避したReaperはそのまま直ぐにアラヤへ向けて銃器を掃射する。


 アラヤは放たれる弾丸を巨大な背部による推力で簡単に回避する。


 回避したアラヤはそのまま距離を取ると思いきや、あえてReaperとの距離を一気に詰め、Reaperの腹部に蹴りが炸裂した。


 圧倒的な推力と機体パワーから放たれる蹴りを喰らったReaperはまるでボールのように吹き飛ばされてしまう。


 アラヤは吹き飛ぶReaperへ向けてレーザーを放つ。


 普通ならば、ATLASの操縦が初めてであるアラヤでは高速で動く物体に狙いを定めることすら難しいだろう。


 しかし、このアストライアは脳波コントロールによる直感的な操作に加え、アラヤ自身も改造によって身体能力が驚異的になっている。


 それだけでなく、ニナからの照準補正まであるため、初心者のアラヤでも高速で動く物体への狙撃が可能となっているのだ。


 アラヤがReaperへ狙いを定め、レーザーライフルで狙撃する。


 レーザーライフルから放たれたレーザーは正確にReaperを捉えていた。


 しかし、Reaperは背部スラスターを限界の出力で噴射することで無理矢理軌道を変え、上空へ上昇したことで回避する。


 回避したReaperはアラヤへ向けて銃器による掃射を行う。


 流石のアラヤもあれを回避されるとは思ってもいなかったので、驚きのあまり回避が遅れてしまう。


 そのため、アラヤはReaperからの銃撃を喰らってしまったのだが、その桁違いの硬さを誇る装甲の前では傷一つつけることすらできなかった。


 アラヤは装甲の硬さに感謝しつつ、自分へ射撃してきたReaperへ向けて再びレーザーを放つ。


 Reaperはその推力を活かし、空中でアクロバティックな動きをすることでレーザーを回避する。


 アラヤは初戦闘ということもあり、Reaperに苦戦を強いられていると、いきなり後方からの射撃を受ける。


 アストライアの装甲が硬いこともあり、射撃での傷はないのだが、それでも気になるものは気になる。


 ニナに後方カメラの映像をモニターに映してもらうと、そこには2機のMessiahが自分へ射撃を続けながら近づいてきているという映像が映されていた。

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