第25話 再会


《ーーーアストライアーーー》


《ーーー起動ーーー》


 コックピット内のモニターにそう映し出された瞬間、画面に0と1で構成された数列が流れ始める。


 現在の状況に理解の追いつかないアラヤは混乱していると、画面に謎の文字が浮かび上がる。


 それは今まで見たことのない文字であり、アラヤは全く読めなかった。


 そうして、アラヤが謎の文字に頭を悩ましていると、今度はアラヤでも分かる公用語が浮かび上がった。


『ツインドライブシステムを起動しますか?』


 それは聞いたこともないシステムの名前であった。


 アラヤはドライブシステムとは何かと一瞬、思考を巡らせたが、全く心当たりがない。


 そんな心当たりのないシステムはそう易々と承認するのは普通ならば危険であるため、避けるべきだろう。


 しかし、今は状況が状況だ。


 アラヤは迷わず答える。


「ああ!!起動してくれて構わない!!」


 ドライブシステムを起動しろと。


 その瞬間、アラヤはコックピットの座席から生えてきたワイヤーに体を縛られ、座席と体を固定されてしまった。


 アラヤはいきなり縛り付けられてしまったため、自分は間違った選択をしたかと焦り始めた。


 しかし、それは結果として正解であった。


 椅子に縛られたアラヤは椅子の首元の辺りにある管が伸び、アラヤの首にその管が突き刺さる。


 アラヤは首に何か刺さったことで、驚きを隠せずに声が漏れてしまったが、特に痛みなどはない。


 だが、管から体の中へ謎の物質をいれられている気持ち悪さがあり、アラヤは一体自分はどうなってしまうのかと恐怖した。


 そして、謎の物質を入れられ始めてから少し時間が経った時、体に異変が起き始める。


 先ほどまで痛みがあった体からは段々と痛みが消えていき、先ほどまで開いていた傷も明らかにおかしい速度で塞がっていく。


 それと同時に、視界の解像度が上がっていき、より鮮明に世界が見えるようになる。


 聴覚も更に鋭くなり、今まで聴こえもしなかった微細な音まで聞こえるようになってくる。


 明らかに人間を辞めるヤバい改造を施されていることに気づくアラヤであったが、もうその事実を受け入れるしかない。


 体を座席に固定されてしまっているのだ。


 どれだけ抵抗しようが、この改造から逃れられることはできないだろう。


 それに、中途半端なところでやめたら逆に何か起こりそうで怖いので、アラヤは諦めて改造を受け入れたのだ。


 そうして、改造が始まってからどれくらいの時間が経ったのだろうか。


 いつの間にか、アラヤの首筋に刺されていた管が抜かれ、座席に固定していたワイヤーもなくなっていた。


 なかなかお目にかかれない酷い目にあったアラヤはその疲れからダルそうにしているが、先ほどまで感じていた体のダルさは全てなくなっている。


 逆に、今の体は羽のように軽いくらいだ。


 アラヤがグッタリとしていると、再びコックピット内のモニターが勝手に動き始める。


 それと同時に、


『アラヤ!アラヤ!アラヤ!』


 自分の名前を呼ぶ声がかすかに聞こえてくる。


 その声には聞き覚えがあり、アラヤは何だか気分が軽くなって眠たくなってきた。


 そうして、アラヤが眠りにつきそうになった時、


『アラヤ!!何寝ようとしているの!!』


 いきなり自分の名前を呼ぶ声と共にコックピットのモニターに巨大なニナの姿が映された。


 アラヤは目の前に現れたニナに驚きを隠せない。


 ニナは確かに死んだはずだ。


 それなのに、目の前のモニターにはニナの姿が映っている。


 その事実に脳の理解が追いつかない。


 そうして、アラヤが混乱していると、


『何ぼさっとしてるの!!早く出撃するよ!!』


 画面の中のニナに出撃するように言われる。


 そこでやっと画面の中にいるニナの存在への理解が追いつく。


 そして、アラヤは驚いた表情のまま質問する。


「なあ、ニナ?君は本当にニナなのか?」


 その質問に対し、ニナは答える。


『ええ、そうだよ。ミサイルの爆風に巻き込まれた後から記憶がないけど、気づいたらこのATLASのシステムの中にいたの。私自身も理解し難いけど、どうやら、私はこのATLASのOSの人格になったみたいなの」


 自分はニナ本人であると。


 それを聞いたアラヤは嬉しさのあまり涙が溢れ出してしまう。


 ニナは死んでしまったと思っていた。


 だが、ニナは肉体こそ無くなってしまったものの、こうして再開できたことにアラヤは嬉しくて仕方なかった。


 そんなアラヤを見て、ニナも笑みを溢す。


『なに?そんなに私と会えなくて寂しかったの?』


「ああ、もう二度と会えないと思ってたから、こういう形でもニナと会えて本当に嬉しい」


『二度と会えない…?もしかして、私さっきまで死んでたりする?』


「ああ、そうだな。さっきまでニナは息をしていなかったよ。心肺蘇生しても生き返らなかった」


『ええ…それじゃあ、私は死んだ後にこのATLASのOSに転生したってこと…?』


「まあ、そうなるんじゃないのか?詳しいことは俺にもよく分からないけど」


 ニナは衝撃の真実をアラヤから聞かされて、ショックのあまり黙り込んでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る