第24話 希望の光

 ミナセは気がついた時には1人になっていた。


 先ほどまでは仲間達がいたはずなのに今では自分以外誰もいない。


 その事実がいまだに受け入れられなかった。


 確かに、ミナセはニスベル隊の中でも腕が立つ方であったが、隊長以外はどんぐりの背比べだ。


 それなのに、自分以外のみんなは殺されてしまった。


 まだ年の若いミナセにとってこの出来事はあまりにもキツすぎた。


 ミナセは気がついたら目から涙が溢れかえっていた。


 共に訓練に励み、


 寝食を共にし、


 戦場を共に駆け抜け、


 激戦を乗り超え、


 共に笑った仲間たちがこの一瞬の出来事で全員死んでしまった。


 まだまだ聞きたいことがあったのに。


 まだまだ教えてもらいたいこともあったのに。


 まだまだ共にいたかったのに。


 もうその願いは叶わない。


 これは戦争だ。


 味方が全滅することなどさして珍しくもない。


 ミナセは頭では理解していても心は追いついていない。


 しかし、戦場で敵が待ってくれることなどあり得ない。


 ミナセが呆然としている間にビルトが彼女との距離を一気に詰めてくる。


 接近してくるビルトに気がついたミナセは一気に意識が現実に戻り、迫り来るビルトへ向けてレーザーライフルでの射撃を行う。


 しかし、ビルトのReaperの機動力の前ではミナセの射撃スキルでは当てられない。


 そのため、ミナセはすぐにレーザーブレイドを手に持つと、迫り来るビルトへ向けて薙ぎ払う。


 ビルトはその高出力を生かし、急速に後方へ引き下がったことでレーザーブレイドを回避する。


 レーザーブレイドを躱されたミナセであったが、最初からレーザーブレイドが当たるとは思っていなかった。


 ミナセはすぐにレーザーライフルを構えると、まだ慣性が殺し切れていないビルトへ向けてフルオートで掃射する。


 流石のビルトも回避することは不可能だと判断すると、左腕部に装着されている盾でレーザーを防ぐ。


 そして、ビルトはミナセが持つレーザーライフルへ向けて銃器を連射する。


 ミナセも腕部に装着している盾でビルトの射撃を防ぐのだが、相手の銃弾の威力が高く、盾が一瞬にして破壊されてしまう。


 そのせいで、ミナセはレーザーライフルを破壊されてしまう。


 まだ良かったのは右腕自体はまだ使い物になるというところだ。


 ミナセは体勢を立て直すためにもビルトから距離を取ろうと動く。


 しかし、ビルトの方が機動力が高く、距離を保つどころか、どんどん相手に距離を詰められていく。


 ミナセはこのままでは自分が殺されてしまうと感じ、レーザーブレイドをビルトへ投擲する。


 だが、そのような分かりやすい攻撃ではビルトの足を止めることすらもできない。


 ビルトは速度を変えないまま投擲されたレーザーブレイドを回避する。


 レーザーブレイドを回避されたミナセは更に焦る。


 そんなミナセの顔には再び大粒の涙が流れ始める。


 今度はジワジワと迫り来る死への恐怖でミナセは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる。


 それでもミナセは諦められずにビルトからの距離を取ろうと必死に足掻く。


 しかし、ビルトとの距離はだんだん詰められていく。


 そして、ビルトは確実にミナセを撃ち殺せる距離に近づいてきたこともあり、照準をミナセへ合わせる。


 ミナセは恐怖のあまり目を閉じてしまう。


 次の瞬間、いきなり近くにある廃工場が破壊され、中から勢い良く何かが飛び出してくる。


 それと同時に、ビルトへ向けて超極太のレーザーが放たれる。


 ビルトはいきなり放たれたレーザーを慌てて回避すると、ビルトとミナセの間にできた空間にその何かが勢い良く着地する。


 その何かを見たビルトは驚きのあまり目を見開いてしまう。


 ミナセはいきなり現れた自分の救世主を見て、驚きと喜びと混乱が入り混じった複雑そうな表情を浮かべている。


 そんな彼らの前に現れたのは特徴的な一本角の生えた例の漆黒のATLASであった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る