第12話 響け!美しい音色たち!
12:35。
ニニシア小学校の生徒たちは近くの避難シェルターへ避難していた。
ニニシア小学校に通うニナの弟であるシンと妹であるミヤは身を寄せ合っていた。
二人はまだ幼いと言うこともあり、現状を詳しく把握はしていないものの、それでも危険な状況であることは理解している。
そのため、二人は身を寄せ合って必死に恐怖に耐えていた。
身を寄せ合っている二人は姉であるニナや母や父のことが心配になってくる。
「ねえ、お兄ちゃん?ねぇねたち大丈夫かな?」
「姉ちゃんなら、アラヤ兄ちゃんがついてるから大丈夫だよ。それに、父ちゃんも母ちゃんも強いから、今頃は僕たちみたいにシェルターに逃げてると思うよ」
兄であるシンは妹であるミヤを安心させるために必死に頑張る。
シンの頑張りもあり、ミヤは少し落ち着いたようだ。
シンはミヤが落ち着いたことを確認すると、安堵のため息をつく。
本当はシンもとても怖い。
今すぐに泣き出して家族に抱きつきたいくらいには怯えている。
それでも今は自分が一番年上なのだ。
だから、シンは頑張ってミヤのお兄ちゃんを務めている。
そうして、シンとミヤが身を寄せ合って危機がすぎる去るのを待っている時、
『ドン!!』
避難シェルターの壁から例の音が聞こえてきた。
その音を聞いた途端、二人は心臓が締め付けられるような感覚に襲われる。
あれは絶対に聞こえてはいけない音だ。
二人の本能はそう告げている。
だが、彼らにはこの状況を打開する術はない。
だから、ただ怯えて待つことしかできない。
そうして、二人が必死に抱きついて恐怖に耐えている間も、
『ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!』
避難シェルターの壁を叩く音が中へ響き渡っている。
避難シェルターの中は壁を叩く音に耐えられなくなった小学生たちがパニックを起こし、めちゃくちゃになっている。
それでもシンとミヤはパニックを起こさず、一番奥の壁に寄り添う形で必死に耐えている。
そして、ついにその時がやってきてしまった。
激しい轟音と共に避難シェルターの壁が突き破れてしまった。
その光景に絶望する避難民たち。
しかし、壁を破壊したMessiahはモノアイで中を覗くだけで特に何かをすることはない。
そのことを不思議に思っていると、いきなりMessiahは避難シェルターの中へ手を突っ込んできた。
避難シェルターの中へ手を突っ込んだMessiahはそのまま手を思いのままに暴れさせる。
逃げ惑う小学生や避難民たちは絶叫しながら暴れ狂う手によって壁や地面などに叩き潰されていく。
目の前に起こる惨劇を二人は溢れる涙を堪えながら見ていることしかできなかった。
二人は一番奥の壁際にいたことに加え、この避難シェルター自体も大きかった。
そのため、Messiahの手が届かないところにいたため、暴れ狂う手に巻き込まれずに助かったのだ。
そうして、暴れ狂う手が多くの人を叩き潰した後、Messiahは再びそのモノアイで中の様子を窺っている。
今度は何をしてくるのかと二人が恐怖に染まっていると、いきなりMessiahはその場から立ち去った。
Messiahが立ち去ったことに最初は理解が追いつかなかった二人であるが、少しずつ状況を理解していき、自分たちは助かったのだと安堵した。
そうして、目の前の惨状と自分たちが助かったことへの喜びが入り混じる複雑な感情を抱いていたその時、いきなり壁の穴から銃口のようなものが差し込まれる。
そして、穴の奥にいるMessiahから拡声器越しに声が聞こえてくる。
『私は子供たちの悲鳴が大好きなんだ。君たちは一体どんなメロディーを奏でてくれるのかい?』
Messiahのパイロットがそう言うと同時に、銃口から炎が撃ち出される。
その炎は温度が130度ほどの普通の火炎放射器に比べて大幅に威力が抑えられたものだった。
これは彼のMessiahの火炎放射器にのみ施された改造により、炎の温度を好きに設定できるようになっている。
このような改造を施すものなどほとんど存在しない。
何故なら、炎の温度をわざわざ下げる必要などないからだ。
しかし、彼のような異常者にはこのような改造を求めていた。
避難シェルターで生き残っていたものたちは炎の温度が低く、簡単に死ぬことができず、苦しみ続けた。
苦しみ続ける子供たちは悲鳴を上げ、助けを呼び、そのまま誰にも助けられずに死んでいった。
そして、Messiahのパイロットはコックピット内で呟く。
「なんで素晴らしい音色なんだ!!」
彼の名は『ゴードン』
ザイード隊の副隊長であり、異常性癖者で恐れられる悪魔だ。
そして、避難民の虐殺を命令した張本人である。
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