第11話 街の様子
アラヤとニナは激しい戦闘を繰り広げるATLASたちを避けながら、どこかへ向かって走っていく。
アラヤたちはそのまま走り続け、大学の外へ出ていった。
アラヤたちは心のどこかで大学の外はまだマシだと思っていた。
しかし、現実は違った。
アラヤたちが住むニニシアはザイード隊によって破壊され、そこに住む人々も戦火に巻き込まれて死んでいる。
それも老若男女関係なくだ。
街でもザイード隊とマタイ共和国軍との戦闘は激化しており、下手すると大学校内よりも酷い有様である。
アラヤたちは目の前に広がる破壊された故郷を見て、胸が締め付けられる感覚に襲われる。
しかし、こんなところで立ち止まっている場合でない。
アラヤたちは目的地へ向かって必死に走り続ける。
街のあちこちからは悲鳴が聞こえてきており、そこら中の建物が破壊され、燃えている。
そんな街の様子を見て、アラヤたちは一つのことが気になり始める。
それは家族の安否だ。
アラヤは中学生の時に父が亡くなっており、それからは母と二人で暮らしている。
ニナには父親に母親、妹と弟が一人ずつおり、下の二人はまだ小学生である。
二人は家族のことが気になったが、きっとみんな避難シェルターに逃げているから安心だと言い聞かせる。
このニニシアの各地には戦争に備えて避難シェルターが設置されている。
そのため、家族は避難指示に従って避難シェルターへ避難したものだと考えている。
そうして、二人が目的地へ向かって走っている最中、二人は知りたくもない真実を目の当たりにする。
それはザイード隊のMessiahが避難シェルターの壁をぶち破り、避難シェルターの中へ火炎放射器を撃ち込んでいるというものだ。
二人はその光景を見て、避難シェルターは絶対に安全ではないと言う事実を知った。
それと同時に、ニナは家族のことが心配で仕方なくなった。
もしも、家族のみんなが生きて避難シェルターへ逃げていたとしても壁を破壊されて皆殺しにされるかもしれない。
ニナは激しい不安に襲われた。
一方、アラヤはニナを連れてきたことは結果的に正解だったと思っていた。
もしも、あの時、ニナを無理矢理説得して避難シェルターにいさせた場合、彼女もああやって殺されていたかもしれない。
いや、きっとそうだっただろう。
大学校内ではMessiahが大暴れしており、GAMESはMessiahに押されている状況であった。
あの状況なら、先ほどの避難シェルターの悲劇が起きていてもおかしくない。
実際に、その悲劇は起こっており、そこに避難していたミュースは火炎放射器によって殺されてしまった。
だが、アラヤはその事実を知らない。
だから、ニナを避難シェルターに閉じこめなかったことを心の底から安堵するだけだった。
しかし、安堵したアラヤもニナと同様に家族のことが心配になってくる。
彼の母親は逞しいため、謎の安心感はあるものの、それでも心配なものは心配だ。
それでも今はあれを隠すことの方が重要だ。
アラヤはそう思うと、不安に押しつぶされそうになっているニナの手を力強く握る。
そして、ただ一言ニナに伝える。
「きっと大丈夫だ」
アラヤからそう伝えられたニナの表情は少し安心したように見える。
そうして、ニナのことを安心させたアラヤは再びニナを連れて走り出す。
このニニシアには絶対に安全と呼べる場所はない。
アラヤは思う。
あれを隠せたとしても本当に見つからずに済むのだろうか?
あれを隠せたとしても自分たちは生き残ることはできるのだろうか?
そのような不安に押しつぶされそうになってもアラヤは落ち着いた様子を醸し出す。
ニナが少しでも安心できるように。
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