第10話 ぶつかり合う二人

 ザイード隊がニニシア降下作戦でマタイ共和国軍との激しい戦闘を繰り広げている中、アラヤとニナは必死に逃げていた。


 アラヤたちが走っている最中、後方で大爆発が起こる。


 その方角と爆発音から爆発が起こった場所が先ほどまでいた演習室であることは容易に想像できた。


 二人は皆を見捨てたことに罪悪感を感じながらも生き残るために必死に走る。


 そうして、二人は何とか一番近くにある避難シェルターへたどり着くことができた。


 避難シェルターにたどり着いた二人であるが、ニナが避難シェルターへ入ろうとした時、とあることに気づく。


 それはアラヤが避難シェルターの中へ入ろうとしていないことだ。


 その違和感に気がついたニナは最悪な想像が頭に浮かび、不安になる。


 だから、ニナはアラヤを問い詰める。


「ねえ、アラヤ?何で避難シェルターに入ろうとしてないの?」


「俺はやらないといけないことがあるんだ。だから、ニナは先にシェルターの中で待っていてくれ」


「それは絶対にやらないといけないことなの?」


「ああ、絶対にやらないといけないことだ」


 アラヤは真剣な顔でニナにそう伝える。


 しかし、ニナの不安は晴れるどころか、さらに酷くなる。


 そして、ニナも勇気を出し、アラヤに宣言する。


「分かった。それなら、私もアラヤについていくよ」


 自分もついていくと。


 アラヤは彼女ならこう答えると最初から分かっていた。


 それでも彼女を連れていくことは危険である。


 だから、アラヤは彼女に言う。


「ダメだ。ニナはこのシェルターで俺が帰ってくるまで待っていろ」


 避難シェルターの中で待っていろと。


 しかし、ニナも引き下がらない。


「無理。アラヤと一緒じゃないと私はシェルターには入らない」


「今は我儘を言っている場合じゃないんだぞ!!お願いだから、シェルターの中で帰りを待っていてくれ!!このシェルターなら敵のATLASでも破壊することはできない!!それに俺は絶対に戻ってくるから!!だから、待っていてくれよ!!」


 アラヤはつい、夢中になりすぎて声を荒げながら、ニナに避難シェルターの中で待つように言う。


 そうして、アラヤがニナに声を荒げながら待つように言った後、ニナは急に黙り込んだ。


 そのことが気になったアラヤはニナの顔を見ると、一気に正気に戻った。


 ニナは涙で顔をくしゃくしゃにしていたのだ。


 久しぶりに見る幼馴染の号泣にアラヤは戸惑ってしまう。


 そうして、アラヤが戸惑っていると、ニナはいきなりアラヤに抱きつく。


 ニナに抱きつかれたアラヤは彼女の行動が理解できずに頭が混乱する。


 アラヤがニナの行動が理解できずに混乱していると、ニナは涙があふれる顔を上げ、アラヤに一言呟く。


「お願いだから、私を一人にしないで…」


 その呟きを聞いたアラヤはハッとしたような表情を浮かべた後、すぐに真剣な顔に変わる。


「俺について来るのは危険だ。命の保障もできない。それでもついて来るのか?」


 そして、アラヤはニナに問う。


 自分について来るのは危険であり、命の保障はできないと。


 それでもついてきたいのかと。


 それに対し、ニナは涙を拭いながら答える。


「うん!!私はアラヤについていく!!」


 アラヤについていくと。


 ここまでハッキリと自分の意見を言う時のニナはどう説得しようが引き下がらない。


 アラヤは彼女との付き合いが長いので、よく知っている。


 だから、アラヤは彼女を避難シェルターにいてもらうことは不可能だと判断する。


 きっと、彼女なら無理矢理避難シェルターに入れても後から自分について来るだろう。


 それならば、最初からニナを連れていった方が安全だ。


 そう思ったアラヤは、


「分かった。それなら俺についてきてくれ。例のあれ・・がある格納庫へ向かうぞ」


 ニナと共にどこかへ向かっていったのだった。


 この時のアラヤはまだ知らない。


 ニニシア降下作戦を実行しているMessiahが普通のモデルとは違うことを。


 そして、このMessiahが避難シェルターすらも破壊可能であると言う事実を。


 結果として、アラヤの選択肢は正しかった。


 そのことを知るのはもう少し先になるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る