第6話 この世に絶対はない

 ガイの死体を前にしたミュースは目の前の出来事が受け入れられず、その場で立ち止まってしまう。


 そして、ミュースはガイの肩を掴むと、左右に揺らして必死に起こそうとする。


 しかし、ガイが起きることは二度とない。


 ミュースの目には涙が浮かび上がっており、彼もガイが二度と目を覚まさないことは理解していた。


 それでも奇跡に縋ってしまった。


 だが、奇跡など起きるはずもない。


 ミュースはガイの死を受け入れるという選択肢しかなかった。


 ミュースは涙を拭うと、今度はマイトのことを探し始める。


 せめて、マイトだけでも助けたい。


 ミュースはそう思いながら、マイトのことを探し始める。


 そして、ミュースはマイトのことをすぐに見つけることができた。


 何故なら、マイトはとても目立っていたからだ。


 ミュースの視界の先にいるマイトは瓦礫の山の上にある鉄パイプに心臓が突き刺された姿でいたからだ。


 心臓を突き刺されたマイトは白目を剥いており、彼の足元には血の水溜りができている。


 あれは確実に死んでいる。


 そうミュースに思わせるほどマイトの死に際は残酷なものだった。


 ガイだけでなく、マイトまで失ったミュースは絶望しながらも必死に避難シェルターまで走る。


 ミュースは心の中で誓う。


 ガイとマイトの仇は絶対に取ってやると。


 ミュースはこの戦闘から生き残ったら軍に志願することを決めた。


 きっと、アラヤは軍に志願することを止めてくるだろう。


 自分から命を投げ捨てるような真似はするなと。


 きっと、自分は戦争に参加したら生きて帰れない可能性の方が高いだろう。


 それでも二度とこのような惨劇を引き起こさないためにも自分はレアル帝国と戦いたい。


 二人の仇だけでなく、世界の平和のためにも。


 ミュースはそう思うと、まずはこの場を生き残ることを考える。


 この場を生き残らなければ、軍に入ることもできない。


 だから、ミュースは必死に走る。


 なるべくGAMESとMessiahとの戦闘に巻き込まれないルートを進んでいく。


 そして、ミュースは何とか避難シェルターまでたどり着くことができた。


 避難シェルターにたどり着いたミュースはすぐに中へ入ると、アラヤとニナを探し始める。


 このミュースが逃げてきた避難シェルターが演習室から一番近い避難シェルターである。


 きっと、アラヤならこの避難シェルターに逃げ込んでいるはずだ。


 ミュースはそう思いながら、アラヤたちを探し始める。


 この避難シェルターの中にはミュース以外の避難してきた人たちがいる。


 彼らの中には腕を欠損していたり、重症で今にも息が止まりそうなものたちもいる。


 ミュースはあまりの惨状に目を逸らしてしまう。


 しかし、軍に入隊したらこのような事態は日常茶飯事になるだろう。


 その時の練習のためにもミュースは彼らから目を逸らさず、現実を受け止める。


 そのようにして、ミュースはアラヤたちのことを探したのだが、一向に彼らが見つかる気配がない。


 ミュースはそのことに焦りを感じながらも必死に避難シェルターの中を探す。


 しかし、アラヤたちは見つからない。


 もしかしたら、アラヤたちも死んでしまったのではないか?


 ミュースの頭にはそのような考えが浮かび上がる。


 ミュースはその考えを必死に否定し、彼らは別のシェルターへ逃げ込んだのだと言い聞かせる。


 そうして、ミュースがアラヤたちのことを心配しながら避難シェルターの中で過ごしていると、


『ゴン!!』


 避難シェルターの扉の方から嫌な音がしてきた。


 避難シェルターの扉は無理矢理こじ開けることはできないようになっている。


 避難シェルターはATLASの力を持ってしても破壊できないように設計されているためだ。


 そして、避難シェルターの扉は認証式になっている。


 マタイ共和国に住んでいる者は生体情報の提供が義務になっているため、正式に入国審査や元々住んでいる人はこの認証をパスすることができる。


 そのため、レアル帝国軍のパイロットが出てきて認証をパスしようとしても開けることができない。


 避難シェルターは鉄壁の防御のはずである。


 しかし、


『ゴン!ゴン!ゴン!ミシ!!』


 避難シェルターの壁が凹み始める。


 更に、


『ゴン!ミシ!!ゴン!ミシ!!ゴン!ミシ!!』


 避難シェルターの壁はどんどん凹んでいき、後少しで穴が開きそうなところまで来ている。


 そのような状況に避難してきたものたちはパニックになっており、避難シェルターの中で集団パニックが起きている。


 流石のミュースもこのような状況に耐えられるほどの胆力はないため、彼もまたパニックを起こしている。


 そして、その時がついにやってきた。


 避難シェルターの壁は轟音と共に破られ、壁にできた穴からはMessiahのモノアイが覗いている。


 Messiahのモノアイを見た避難民たちは更に錯乱し、その場で暴れ回っている。


 そんな中、Messiahは壁にできた穴に向けて銃口を向ける。


 次の瞬間、銃口からは数千度を超える高音の炎が射出され、避難シェルターの中にいたものたちを焼き払ったのだった。

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