第5話 壊れていく音

 アラヤとニナが演習室を後にしてからすぐのこと。


 ミュース、ガイ、マイトのアラヤの仲良し3人組は他の学生たちよりも早く立ち直ることができた。


 3人は周りを見渡した後、アラヤとニナの姿が見えないことに気づく。


 3人は彼らが教授に避難するように言われた瞬間から避難を開始していたため、先に避難シェルターへ向かったのだと判断した。


 3人は錯乱する他の同期たちを連れて行こうとも考えたが、彼らの錯乱具合は酷く、落ち着かせるのには時間がかかる。


 そして、時間がかかるとその分だけ自分たちのリスクが高まってしまう。


 流石の3人も自分の命を投げ捨てられるほどの勇気はないため、彼らには悪いと思いながらも演習室を後にしようと走り出す。


 そうして、3人が演習室から出ようとした瞬間、学生たちが多く固まっている場所に上半身のみとなったGAMESが壁と天井を突き破って落ちてくる。


 学生たちはその場から逃げようと走り出したが、多くの生徒は間に合わずにGAMESの残骸に押し潰されてしまう。


 3人組もGAMESが地面に激突した際の衝撃により、足を取られ、その場に転けてしまう。


 だが、3人組はこのままでは死んでしまうと鍛冶場の馬鹿力を発揮し、すぐに立ち上がり、再び走り出した。


 そのタイミングでGAMESの残骸へ向けて無数の砲弾が連射され、GAMESは銃弾に耐えられずに装甲を貫通し、ジェネレーターに砲弾が命中した。


 次の瞬間、GAMESは大爆発を起こす。


 何とかGAMESから逃れた学生もこの大爆発に巻き込まれ、体が木っ端微塵に吹き飛び、絶命したのだった。


 3人組はGAMESとの距離があったため、即時こそはしなかったものの、爆発によって発生した強力な爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。


 ミュースは吹き飛ばされた際、何度か地面をバウンドした後、少し離れた建物の壁に当たった。


 しかし、距離が離れていたこともあり、その勢いは大幅に削減できていたことで、ミュースは何とか一命を取り留める。


 何とか生き残ることのできたミュースは少しの間はあまりの痛みに立ち上がることができなかったが、少し時間が経つとアドレナリンが分泌されたことで痛みがだいぶ引いてきた。


 痛みが引いたことで立ち上がることができたミュースは周りへ視線を向ける。


 大学の様々な場所が破壊されており、中には原型を留めていない建物もある。


 そして、大学内のあらゆる場所でGAMESとレアル帝国軍のATLASが戦闘を繰り広げていた。


 レアル帝国軍量産型ATLAS『Messiahメシア


 Messiahは頭に角が生えた黒を基調としたモノアイのATLASであり、全長はGAMESとあまり変わらない。


 Messiahの武装は無数の刃が高速回転しているチェーンソー型の近接武器と、戦車の砲台と変わらない口径の多機能マシンガンである。


 一方、GAMESは中型の盾とレーザーライフル、それぞれの腕に2本ずつ備え付けられているレーザーブレイドだ。


 GAMESは学生を守るために盾で相手の攻撃を受けながら戦闘をしているのだが、やはり自由に動けるMessiahの方が有利であり、GAMESたちは押されている。


 マタイ共和国側が不利であることに不安を覚えながらもミュースは一緒に逃げていたガイとマイトを探す。


 彼らもミュースと同じように吹き飛ばされているに違いない。


 もしかしたら、怪我で動けなくなっている可能性だってある。


 彼らはミュースにとっては大切な親友であるため、ミュースは彼らを見捨てることなどできなかった。


 そして、ミュースは自分たちを置いて逃げたアラヤのことは全く恨んでいなかった。


 ミュースは高校時代からの付き合いだ。


 アラヤがニナのことが本当は好きなことぐらい知っている。


 だから、アラヤが真っ先にニナを連れて逃げることは容易に想像できる。


 そのため、ミュースはアラヤが自分たちを置いてアラヤが逃げたことに特に何も思わない。


 もしも、この場にニナがいなかった時、アラヤはきっと自分たちのことを助けてくれただろう。


 ミュースもきっと、家族があの場にいたらアラヤと同じ判断をしていた。


 だから、今回はたまたまそうせざるおえない状況だったというだけだ。


 ミュースはガイとマイトを探していると、倒れているガイの姿が見えた。


 どうやら、瓦礫の近くで倒れているらしく、下半身が瓦礫に隠れてしまっている。


 もしかしたら、足が瓦礫に押し潰されているかもしれない。


 ミュースはそう思いながら、ガイの方へ近づいた時、目の前に広がる光景に目を疑った。


 ミュースの視線の先には下半身が瓦礫によって押し潰され、絶命しているがいのガイの姿があったからだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る