第3話 整備演習

 演習場にやってきたアラヤたちの前には巨大なロボットが2体、寝そべるように格納されている。


 その全長は25メートルほどで、複数人でグループを組まなければ、整備するのに時間がかかるだろう。


 それに、アラヤたち学生はまだ初心者と言っても過言ではない。


 そのため、GAMESの整備は2グループに分かれ、教授が一人ずつつくことになっている。


 そして、優秀な生徒は同じグループにならないように組まれている。


 なので、アラヤとニナは別のグループに割り当てられてしまった。


 アラヤとニナはよく別にグループに分けられることが多いので、そこまで気にしている様子はない。


 そうして、二つのグループに分かれたアラヤはGAMESの整備の実習が始まった。


 演習が始まると、アラヤのグループの一人が話しかけてくる。


「アラヤ?まずは何から手をつける?」


 彼の名前はミュースと言い、アラヤの高校からの友達である。


 ミュースに何から手をつけるのかと質問されたアラヤは少し考えた後に答える。


「とりあえず、マニュアルに従って制御系に問題ないか確かめていくか。それで、問題がなかったらカメラやセンサーの点検だな」


「分かった。それで行こうか」


 そうして、アラヤたちのGAMESの整備が始まった。


 アラヤはGAMESの整備実習のチームリーダーを任されているため、的確にメンバーたちに指示を出していく。


 メンバーもアラヤの指示を実行できるほどの実力を持っているため、彼らのチームは驚くべき速度で整備を終わらせていく。


 その様子を見ていた教授が何も指摘できないまでに彼らの動きは完璧と言っても二言はなかった。


 彼らの整備速度はそこらの新人整備士たちよりも早く、その要因はアラヤの的確な指示によるものである。


 先ほどの座学でアラヤに質問を投げかけた教授はアラヤの的確な指示に感心する。


 流石はベルナード博士の息子といったところか。


 教授はそう思いながらももう一つのグループの方にも視線を向ける。


 ニナのグループもアラヤたちほどの早さはないが、それでも学生にしては早い。


 そうして、ニナのグループに視線を向けている間にアラヤたちのグループは整備を終わらせ、リーダーであるアラヤが教授に話しかける。


「先生、整備の方が終わったので、確認してもらってもいいですか?」


「おや?もう整備が終わったのかい?分かった。今から確認するよ」


 アラヤに点検を頼まれた教授はアラヤたちのグループのGAMESの確認をしていく。


 教授は既にどこの部分に整備が必要か知っているため、その部分を確認して回る。


 そして、アラヤのグループはその整備箇所の全てを整備していることが確認できた。


「アラヤくんのチームは完璧だね。やっぱりアラヤくんは昔からATLASの整備をしていたりしてたのかい?」


「はい、よく父の手伝いでATLASの整備をしていました。今もバイトとしてATLASの整備をしているのも大きいですね」


「流石はベルナード博士の息子さんだね」


 そうして、アラヤが教授と話していると、整備を終えたニナがやってくる。


「先生、私たちのグループも整備が終わったので、確認してもらえますか?」


「ああ、分かったよ。それじゃあ、アラヤくんのチームは先に戻っておいてくれ」


「はい、分かりました」


 アラヤたちはホワイトボードがある演習室へ戻るように言われたので、皆にそのことを知らせると、戻っていく。


 演習場から演習室に戻っている最中、アラヤたちは世間話をしていた。


「そう思えば、連合軍は俺らの星の近くでレアル帝国軍と戦ったらしいぜ?何とか撃退できたみたいだけど」


「ああ、俺もそのニュース見たよ。もしかしたら、ここも戦場になるかもしれないな。そろそろ身構えておかないとな」


 そうやって、アラヤと話しているのは彼の大学入学の際に友達になったガイだ。


 そうして、アラヤとガイが調停戦争について話していると、


「おいおい、そんなおっかねぇ話はやめようぜ?なんかもっと楽しいことを話さないか?」


 そう言うのはアラヤの大学で知り合った友達であるマイトだ。


「確かに、あんまり暗い話は気分が良くないからな。違う話をするか。例えば、アラヤとニナの恋愛についてとか!」


「いや、何でそうなるんだよ」


 アラヤの恋バナをしようと提案したミュースにツッコミを入れた。


「俺はずっと気になっているんだ。お前らは昔からずっと一緒にいるのに付き合っていないことが!!」


「そんなに気になるか?別に幼馴染で仲が良いだけだぞ?俺らは」


「それがおかしいんだよ!!俺らはもう大学生だぞ!?あんなことやそんなことがあっても良いと思うんだ!!」


「お前は一回黙れよ。俺らは大学生なんだぞ?そんな中学生の恋バナみたいなこと言ってて恥ずかしくないのか?」


「俺はニナと付き合っていないお前の方が恥ずかしいと思う!!」


 アラヤはそう言うミュースにため息をつかさる終えない。


 確かに、アラヤがニナのことがずっと気になっているのは本当だ。


 しかし、ここまで一緒にいると、そのことを打ち明ける機会を見失ってしまった。


 それで、アラヤはニナとの関係はなあなあのままになっている。


 そして、周りにそのことを問い詰められるのが恥ずかしいので、アラヤはニナとはただの友達で恋愛感情はないと言うことにしている。


 そうして、アラヤのグループはガヤガヤ騒いでいるうちに演習室にたどり着いたのだった。






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