第8話 イセタビトVS【蛇龍騎士】
「サムライ
マルコスはタビトに笑みを向ける。
「他の
マルクスは巨大な右足を前に強く踏みだし、大声をあげた。
「《
手に持っていた斧を勢いよく振り上げ、衝撃波がタビトに襲いかかる。
「くっ《
衝撃波がタビトにあびせられる直前。タビトは同じように剣を地面から斬りあげた。
ボコボコと柔らかい地面は隆起して、マルコスの足元へ向かう。
「うぉっと!」
マルコスは足元をとられバランスを崩し、《大蛇の街道》の衝撃はタビトの横にそれていく。
次の瞬間。タビトは飛び上がり、暗闇にその姿を消す。マルコスの背後に現れる。
「うぉぉっ!」
タビトはその剣をマルコスの胴体にむかって勢いよく振り下ろす。
キイィィィィィンッッッッ!!
金属音が鳴り響き、火花が散る。
マルコスが武器を持っていた右腕の装甲部分で長剣の一撃は塞がれていた。
それは恐るべき反応速度で、空気を切り裂く音さえした。
そしてマルコスの防御は、同時に爆発的な攻撃でもあった。
マルコスの右腕は防御そのまま、タビトへ一撃を浴びせる。
「うぐっ!!」
かろうじてその直撃を腕でガードしたはいいものの、タビトは勢いそのままに木々のなかに投げ出された。
枝に幹に身体を打ち付けながらも、すぐに上体を立て直し膝をついた形になる。
自然と受け身をとらせていたのは、この装備なのだろうか。
(ちっ・・・やっぱこんなスキルじゃ勝てやしねぇか)
頭の中に湧いて出た気持ちは、やはり自分の考えとは異なっている。
(だれだ・・・アンタは)
タビトは自身のさっきの挑発的な発言を思い起こす。なぜ、あんなことを。
「こんなものデスか!!」
瞬間、マルコスはタビトに飛び掛かりその眼前に現れる。豪快な斧の一振りは木々をなぎ倒しタビトの胴体身体に襲いくる。
「うっ!!」
すれすれのところで飛び上がり斧は身体をかすめていく。ブウンと豪快な音と風が空気を森を揺らす。(奴の武器は長い。懐に近づく・・・!!)
キィィンッ!!キィン!
金属音が激しくなり響く。刃と刃がぶつかった。
タビトの素早い踏み込みなど意にも介さない速度でマルコスは自在に斧を手元で扱う。
「フゥ~ン」
タビトは自分の考えに身体が追いつかないことに気が付いていた。こちらの疲労だけがたまっていき、すでに限界は近い。一方相手にダメージといったダメージはない。
「ハァァァイッ!!」
マルコスがしびれを切らしたのか。この戦いで一番の横の大振り左側からタビトを襲う。
(こ・・・ここだ)
最後の力を振り絞りタビトは最初と同じように飛び上がる。闇に姿を消して今度こそ一撃を決める。
「それは・・・もう見マシタ!!」
飛び上がった瞬間。マルコスは斧を持っていない方の右手。その大きな拳を空中のタビトめがけて突き出す。マルコスの大振りはこの時だけ左手だけで薙ぎ払っていたのだ。今。タビトは空中では身動きはとれなかった。
パァンと何かが勢いよく炸裂した音がする。
タビトの身体は軋み、ミシミシと音をたてて吹き飛んだ。
「ぐっはぁ・・・!!」
ごろごろと土の上を転がり、地に付す。
「ここでもノースキル?ウム・・やはり初心者。さっきの気配は何だったのデショウ」
マルコスは顎に手をあてながら吹き飛ばされたタビトに近づいていく。
そしてタビトの首根っこを掴み軽々と持ち上げた。
「ぐう・・・う」
「この、装備デスか。武器デスか」
マルコスは暴力的な扱いでタビトをべたべたと触った。
「がぁ・・・ぁぁッ!」
大きな手でタビトの腕、胴体を掴む力は人間離れしている。
マルコスは、タビトが未だ手に持っていた剣に目を付け、それを奪おうと握っている拳に手をかける。
「離しナサイ!」
(う・・・ま、まだ・・・)
タビトはその一瞬、腕に力をいれた。吹き飛ばされていながらも手に持っていた剣。
その剣がわずかに上下し、マルコスが気付かぬほどの傷を掌につける。
わずかに血が流れ、滴った。
「夢幻の・・・骨剣・・・」
タビトは呟く。
「ナニ?」
「血の・・・幻惑だ」
「モウイイ!!」
マルコスは大声とともにタビトの身体を勢いよく木に叩きつける。
タビトの身体はひしゃげ、もう動かなくなった。
「《錬気》・・・」
「ヤットこの大陸でもマシな気配がしたと思ったガ、ガッカリダ」
「1、2,3,4・・・」
「サーテ、役立たずの日本人どもをイジメにでもいこうカネ・・・」
「50、51、52、53、54・・・」
「120、121、122・・・」
「《土生龍剣・
バサッバサバサバサバサバサッッッ
静まり帰っていた森は、鳥の羽ばたきで賑やかさを取り戻す。
森の木々の葉は震え、地鳴りの音がした。
「グゥッッッッッオオオオオオォォォォッ!?」
マルコスは自分の身体に土色の巨大な龍。木々の根が太く絡まりつき、夢幻の長剣が肉に食い込んでいることに気付いた。傷ついたタビトを目の前にしながら、その接近を全く知覚することができなかったのだ。
「この野郎ォォォっ!!!」
叫ぶ、人の命に微塵も執着しない、この男に強い怒りを覚えていた。
〈夢幻の長剣〉で傷つけた直後、マルコスの腕の力は急に抜け、上の空の状態になっていた。詳しくは分からないが、この剣はそういう能力を持っている。
おれが今できる最大の攻撃は・・・《土生龍剣》しかなかった。
いつ解けるともしらない幻覚効果の前で、《錬気》を発動し、ただ流れる時間を数えた。
そしてタビトは賭けた。血の幻惑の効果時間も分からない。
ただ、一分以上、二分以上の《錬気》発動。
マルコスの目の前でも、やってのけた。発動から通常の二倍の時間。二分が経過したとき、《錬気》で纏うオーラの感覚が一段上がった。その感覚が確かにした。
「ナッ!!ナァニしてくれヤガッタァァ!」
マルコスは雄叫びを上げながらも、タビトの攻撃、木の根の強い力に押し込まれ地面の沈み込みつつあった。
「グ・・・グぅ・・・《
巨大な蛇のオーラがマルコスの身体に纏わりつき、絡んだ木の根、タビトの土龍のオーラ以上に勢いを増していく。太い根はブチブチと音を立てて千切れ始める。
「う・・・うぉぉぉ!!」
タビトは精いっぱい力を籠めるが、身体から《錬気》の効力が抜けていくことに気が付いていた。マルコスの身体は隆起し、ぐんぐんと大きさを増していく。
「フゥンッッッ!!」
ついに《土生龍剣》の一撃は土に還り、タビトは一歩後ろに下がる。
マルコスとタビトは二度目、先ほど以上の近距離で真正面に相対することになった。しかしタビトにとっては絶望的な瞬間だ。《錬気》の効力は既に切れていた。
(く・・・そ・・・)
「この隠し技をツカワセルとは・・・ヤッパリヤル。キミィ~~?驚いたヨ」
マルコスは両刃の斧を強く持ち直し、構える。
おれは、再び夢幻の骨剣を手に持って、覚悟を決める。もう二度と剣の一撃は入らないだろうけど、決して諦めはしない。
(ユウアさんとの約束だ)
「うぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
「ぎいいいいいやああああっっ!!!」
「「!!!!」」
二人が同時に踏み出すその瞬間。悲鳴が響き渡り、途轍もない感覚が襲い掛かる。
彼らの真横、巨大な何かの塊が人間をぺしゃんこに押し潰していた。
潰されたのは初心者狩り集団の一人、逃げ遅れ森に身を隠していた者だった。
塊はどこからか現れたのかゆっくりと蠢き、呆然としていたタビトとマルコスの二人を見下ろす。塊を中心に禍々しい、空間が歪んだような感覚を発している。
黒々とした生々しい塊には、顔があり、重々しく長い鼻をもっていた。
「ブォォォォォォォォォォ!!!!」
塊の鳴き声は低く轟き、二人の身体を震わせる。
その瞬間タビトだけでなく歴戦のマルコスですら、冷や汗がどっとでた。
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【
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!!
「な、んだ・・・よ」
最早笑えてくるほどの状況だ。タビトの口角は少し上がっていた。
「グァハハハッ!!オレタチの瘴気につられて来ヤガッタ・・・!?ユニークのバケモノガァ!?」
マルコスもおれと同じ気持ちだったのだろう。彼ほどの強さをもっても、現状、現れたこのバケモノ。人狼とは格が違うこいつを退けることはできないのだと。
【邪眼】
(身体が、動かねぇ・・・!!)
ブウンッッ
「グブゥッ」
鈍い音と共に、マルコスが巨躯が軽々と吹き飛ばされる。単なる長鼻の一振り。
そして、そのその一振りの返しの一撃。左から右。その一発でタビトは吹き飛ばされる。
「う・・・ぁ・・・」
マルコスへの攻撃よりは軽かったのか、タビトは倒れながらも未だ意識を失う寸前踏みとどまっていた。
(今日は、吹き飛ばされすぎだ・・・)
それも時間の問題だった。次はもう生きて目を覚ますことはできないだろう。
「く・・・そ・・・ユウア、さん・・・」
視界が暗く、どんどん暗くなっていく。
暗く、暗く。
ズシン。ズシンと重く鳴り響くのは、ヤツが接近する音だろう。
暗く・・・
————イレギュラー。命によりマスターの下にお連れします。タビトさま。
目の前に人の足が見える。人が横に立っている。
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