第3話 「聞こえる。」受験生

人混みをよけて僕は駅へ向かう。

夏やすみ。

夏期講習も今日からしばらく休み。

なのに『君。大丈夫?』

昨日塾の教室で声が聞こえた。

先生の声だけが響く教室。

自意識過剰だが

確かにその声は僕に向かった。

目標の学校に点数が足りずあせりはある。

隣の席の奴を蹴落とせば。

心の声が聞こえる。

受験生によくある現象だ。

『君、大丈夫?』この声は君自身の声だ。

ただし気をつけなくてはいけない。

自分の声だと信じていた声が

たまに去年の生徒の

残った声の場合もある。

対処法、見分け方。声が聞こえた時には

手の甲をつねること。

自分の声以外だと、声はもう一度聞こえる。

聞こえたら、人混みをよけて、逃げろ。

去年の声が君を引っ張る。

自力で逃げろ。走り抜け。受験生。

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