第1章 夢への1歩
始まり
大陸の南に位置する世界有数の大国、リディア王国。数百年以上前から王族が代々治めてきた国だ。現在の王は94代目であり、世界最古の国家とされている。
この国の特徴といえば商業だ。全国から選りすぐりの商人たちが集う商業大国である。また5本の指に入るほどの軍事大国でもある。
そのため福利厚生などがよく、リディア王国軍に入ろうとするものが後を絶たない。
ミレア・グリーゼもその1人である。
ミレアはリディア王国出身の少年。水色の短髪に翠緑の瞳を持ち、兵士向きの恵まれた体格の18歳の少年だ。
「やべえ…遅れる」
試験受付時刻の10分前、彼は王都の商店街を走っていた。彼は幼い頃からリディア王国の騎士になることを夢見ていた。
騎士とは軍の中でも特別優秀な5名の者だけが任命される近衛騎士のことである。騎士になれば地位、名誉、富、なんでも手に入れることができる。
本当はすぐにでも軍に入りたかったが、入軍条件が18歳以上なため18歳になってから最初の試験日であるこの日を待ち望んでいたのである。早寝早起きをして30分前には会場に着いておく算段も立てていた。
しかし、興奮で寝付けず結果的に遅刻寸前というわけだ。今回の試験を受けられなければまた数ヶ月待たされてしまう。
それだけは避けなければならないミレアはとにかく全力で走るのだった。
「もうすぐ時間だな」
「今回もかなりの受験者だな。さすがはリディア軍だぜ」
リディア城のすぐそばにあるリディア王国軍本部。入軍試験の会場であるが、受付終了の準備を始めようとしていた。
「待ってくださああああああああぁぁぁい!!」
あまりの声量にその場にいた者が一斉に声の主の方を見る。汗だくになり息を切らしたミレアが受付の兵士の前に立つ。
「受付は…まだ…出来ますか…?」
息を切らしながらも、何とか声を絞り出す。
「兄ちゃんも受験希望者か?危なかったな。今終わらせようとしてたとこだよ。滑り込みセーフってことにしといてやるぜ」
そう言うといかした髭を生やした兵士は親指をサムズアップする。
「あっ… ありがとうございます!」
イケおじ兵士はニカッと笑うと受付を進める。
「っし。これで兄ちゃんも参加できるぞ。頑張ってな」
手際よく受付を終わらせるとミレアの肩を叩いた。ミレアはイケおじ兵士に敬礼をすると本部へと入っていった。
本部に入ると扉の傍に待機していた兵士に案内される。ミレアの身長の10倍はあるだろう、巨大な扉の前へ連れてこられあまりの大きさに言葉を失う。
「この奥が大広間となっています。試験が始まるまでこの中で待機しておいて下さい。」
広間へ通されるとそこは人でごった返していた。
「すげぇ数だな…」
鎧を着た大男や魔法衣のようなものを着た女など様々な人が、受験の開始を待っていた。
「あなたも参加者?」
キョロキョロ周りを見渡していると背後から心地よい声が聞こえた。振り返ると少女が2人立っていた。
「ああ、君たちもか?」
「ええ。私はルビー・テラス、こっちはルカ・リグド。よろしくね」
そう言うとルビーと名乗った少女は可愛らしい笑顔を見せた。
ルビーは腰まで届く鮮やかな赤色の髪と朱色の瞳、赤を基調とした服に背中には槍を装備していた。身長はミレアより少し小さいくらい、笑顔の似合う顔をしている。
ルカと紹介された少女は、水色のボブヘアーに深緑の瞳、動きやすさを意識した服に首にはスカーフをしている。身長はミレアより一回りほど小さい。2人とも美人な印象だ。
「こちらこそよろしく、2人とも」
そう言うと、受験の説明が行われるまでの間、雑談で盛り上がるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます