英雄騎士物語

@riri1-773

序章

 木々が燃え、黒煙が上がる。


 月が出ていない夜だが、灯りが必要ないぐらい森が明るく燃えている。

 その森の中にある集落では叫び声がこだましていた。


 至る所に血痕、死体。頭が無いもの、焼け焦げたもの、刃物で切りつけられたもの…様々な死体が転がる地獄絵図であった。

 次から次へと親しかった人が殺されていく。しかし自分に出来ることは何一つない。命がこぼれ落ちていくのを眺めているしかできない。


 突如背中に激痛が走る。小さな体から血が吹き出す。体の血が流れ切るのに時間はかからなかった。

 みんなを守れなかった悔しさ、みんなをこんな姿にした怒り、そして体が切り裂かれたことによる痛みさえももう感じない。


 集落に生きた者は存在しなくなった。


 そしてこの集落は世界から消されたのであった。

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