第4話

真奈が、学校に来た。


つい先々週のことが、無かったか事かのように笑顔を振り撒く彼女。少し痩せているみたいだが、元気そうだった。


正直すごく気まずい。クラスメイトの視線もすごい。クラスで僕と真奈が付き合ってたっていうのは、みんな知ってる。そして、別れたことも。だからだろう。僕と真奈の今の関係性はどうなのか深く探りたいはずだ。僕はどうにか真奈のことを考えないよう、視線を向けないよう努めた。


そして、僕が送ったメッセージ。既読は着いたけど返事は無し。まあ、そうか。あんな事があったんだし。

でも、メッセージを送った意味は少なからずあったんじゃないかと思ってる。実際、送った日の翌日である今日、学校に来た。


そんなことを考えていると、担任が入ってきた。


「はい、席に着けー。ホームルーム始めんぞー。」


もうそんな時間か。


——って、竜二がいないな。



「ん?芝がいない。遅刻か?あいつが遅刻なんて珍しいな。」


真面目なあいつが遅刻なんて——


ガラリ。


突然ドアが開き、汗だくの竜二が入ってきた。


「スンマセン!朝練で遅れました!」


ん?


「早く席につけ。もうホームルーム始まってんだぞ。」


そそくさと席に着く竜二を見ながら、考える。


朝練?朝練は普段ホームルーム開始の20分以上前には終わるはずだ。最後まで残るチーフを除けば、遅れることはない…はず…。


でも僕、朝練行ってないからなぁ…。


練習が長く続いたのかな?そう思ったが、同じクラスの陸上部は遅れていない。


腹でも痛かったのかな…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



昼、食堂にて、気になっていたことをカレーを食べながら竜二に聞いてみた。


「今朝遅れて来たみたいだけど、何かあったの?お腹痛かったとか。」


「いやさぁ、聞いてほしいんだけどよ。新藤…いるだろ?」


小声で竜二が真奈の名を口にした。


「—うん。」


「新藤のやつ、退部するんだってよ。」


「ゴフッ!」


やべ、カレーが気管に入った。苦しい。


急いで水を飲み、再確認する。


「——マジ?」


「大マジだ。なんせ本人から聞いたからな。あんな速かったのに勿体ねえよな。」


何で?あんなに熱を入れて取り組んでいた陸上を—やめる?

一体なんで?真奈にどういった心境の変化が?


「大変だったんだぜ。マジで。」



「——そのことが、なんで竜二の遅刻に繋がったんだ?」


うどんの汁を飲み終わり、ゴトンと丼を机に置いて竜二は口を開いた。


「そんでさ、俺があいつの代わりにチーフになったんだよ。」


真奈は、学年をまとめるチーフ、つまり時期部長を任されていた。3年生が引退したら、それからチーフが次の部長となる。


「んじゃあ竜二が次の部長ってこと?」


「いや、部長はまた決めるらしい。とりあえず、一時的に俺がチーフを任せられた。」


そうか、竜二は真奈がいない間、部員を取り纏めていた。任せられるのは自然の流れだ。


「急遽決まったもんで、めちゃくちゃ忙しくなっちまってさあ。今後しばらくもこんな感じだろうな。」


スマホの電源をつけ、時間を確認した竜二は席から立ち上がった。


「——てことで。俺、仕事残ってから行くわ。また後で。」


そう言って竜二はその場を去った。



真奈が陸上をやめた…だと?

何を考えているんだ。あの調子でいけば全国出場も夢じゃなかったのに。


なぜ———

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