第14話 つかれている
一週間ぶりに仕事から帰って来た
一緒に暮らし始めてから、初めての事であった。
「疲れていて、メンテナンスに耐えられそうにないと判断した。すまない。マスター」
「………そうか」
「私は自室で休む」
「咲茉。休む前に吾輩の特製生姜蜂蜜茶を飲んで行かぬか」
「………」
「無理に、とは言わぬが。この茶を飲めば、眠りに就いた明くる日には疲れが少しは取れているはずだ」
「………」
本当に疲れている。
咲茉は思った。
疲れていて、即座に判断できない。思考を切り替えられない。
ずっと、
『殺す殺す殺す殺してやる』
あの人間たちの声が、顔が、纏う空気が、へばりついて、離れない。離れそうにない。
(私も、あのような顔を、していたの、だろう、な)
あのような顔をしていた自分に触れてほしくないと、どうしてか思ってしまった。
思ってしまったのに、
拒めない。
傍に居たい。
傍に居てほしい。
ほんの一時でも長く。
(ああ。本当に、)
つかれている。
(2024.8.20)
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