第15話 特製生姜蜂蜜茶
岩の家の台所にて。
ゆっくりゆっくりと、甘やかな牛乳と蜂蜜の香りがほのかに流れてきた。
生姜の独特の辛味も。
ゆっくりゆっくり。
ゆっくりゆっくりと。
瞼が重い。
咲茉は思った。
眠たい。
だめだ眠ってはいけない。
マスターがせっかく作ってくれているのに。
飲むと言ったから作ってくれているのに。
そう言っておいて飲まないなんて。
起きろ。
上眼瞼を下がらせるな。
だめだだめだ意識を閉ざすな。
起きろ起きろ起きろ。
咲茉は必死に落ちそうになる上眼瞼を上げ続けた。
けれど、善が焦げ付けないようにお玉を回す音が、まるで眠ってもいいと優しく言っているようで。
優しい香り。
優しい音。
優しい熱。
優しい気配。
全身が、全心が、優しさに包まれて。
抗えない。
そう思った瞬間、咲茉の意識は途切れてしまった。
「クハっ。よいよいそれでよい」
善は眠りに就いた咲茉を満面の笑みで見つめたのであった。
(2024.8.20)
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