第13話 胸糞悪い




 見栄を張っているのか。

 長年生きてきただけあって余裕があるのか。

 ぜん咲茉えまに四六時中べったり張り付いていないのはよろしい事だと思ってはいたが。


(今は猫の手も借りたいほどに忙しいから、付いてきてくれてもよかったな)






 金持ちは、己の記憶をデータとしていくつも方々に保存してのち、己の姿形そっくりに創らせた、もしくは己の理想を形作ったAIロボットにデータを移行させて、生き方を変え、寿命を引き延ばす。


 金持ち以外は、生まれた時のままの己の身体で生きるか、咲茉のように強い願望を叶える為に全財産を投げ打つだけでは足りずその後の人生も誰かに縛られながらも、己の身体を改造して、人造人間になる。


 ドクターこと祇園ぎおんは、至極稀に金持ちからの改造人間にしてくれとの依頼も受けていたが、主としているのは金持ち以外からの依頼だった。


 己の身体を大部分、もしくは、一部を残す改造人間の方が、己のやる気を大いに引きずり出してくれるからだ。


 大体は一人で依頼を受けるのだが、時折、複数の人間が一気にかつ同時に依頼をしてくる事があるので、その時に、メンテナンス代の支払いという名目の下、咲茉に手伝ってもらっていた。


 今回はいくつか点在している祇園のアジトの内、善と咲茉が住んでいる岩の家から少し離れたところで、依頼を遂行していた。


 依頼者は三十人で一部の肉体の改造。

 兵器の搭載である。

 とてもとてもとっても胸糞悪い戦争へと赴く、勇猛果敢で憐れなやつらからの依頼である。












(2024.8.20)



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