第2話 対話

俺と美咲は最寄り駅の喫茶店に入った。

喫茶店であれば、落ち着いたBGMやクラシックが流れていることが多い。

なぜこのカフェはアニソンが流れているのだろうか。

しかしこのアニソンのおかげで少し心が落ち着いたのもまた事実だ。


テーブル席に向かい合ったはいいものの、沈黙が続く。

このままでは頼んだカフェラテを飲み切ってしまうかもしれない。


美咲は肩にかからない位のボブカットで、毛先がくるっと内巻きになっている。

彼女が気まずそうにしていたり、不安な時はよく毛先をいじくっていた。

今もくるくると毛先をいじる手が止まらない。


「美咲さん」

「なに、美咲さんって。なんでそんな畏まってるの?」

「じゃあ、美咲」

「じゃあって何なの。おかしい大和」


手で口元を覆い、豪快に笑う美咲は相変わらずだった。

彼女は何一つ変わっていない。


「さっき隣に居た人って……美咲の彼氏だったりする?」

「ないないないない。さっきも言ったけど、あの人は先輩の彼氏だよ」

「先輩の彼氏?」

「そう。女バスの先輩。さっきいた彼氏は男バスなの。学校内でも知れ渡ってる有名カップルだよ?私が入る余地なんて一切ないし」

「ふ、ふーん。そうだったんだ」


これってもしかして、いやもしかしなくても凄く恥ずかしいのでは?

勝手に想像して、落ち込んでほんとガキだ俺は。


「あれれ、もしかして勘違いしちゃったのかにゃ~?」

「おい、やめろ。もう顔見せられん」


うつぶせになって顔を隠している俺の頭をやれよやれよとツンツンつつく。

ええいやめろ。色んな意味で恥ずかしい。


「恥ずかしくなると耳まで赤くなるのも変わってないね」

「耳を撫でるな耳を」

「は~い。でも久しぶりだね。こうやって話すのも」


中学三年の二月から少しずつ疎遠になったので、三か月か。

たかが三か月。されど三か月。

美咲との関りが薄れた三か月は苦痛だった。


「そうだな。ごめんな。俺が勝手に距離取ったというか、気まずくなったというか」

「ほんとにそう!大和って昔っから、何も言わずに抱え込んでさ。もっと早く教えてくれれば、そんなことにはならなかったってこと多いよね」

「その通り過ぎてなにも言えないわ」


俺が早く美咲に相談していれば、大事にならなかったこと沢山あるなあ。

幼稚園の時から家が近所ということで、遊ぶようになった仲だったが、いつしか一緒にいることが当たり前になっていたからな。


「聞かせてもらえる?大和が何で私を避けるようになったか」

「……笑わないって約束してくれるなら話す」

「笑わない笑わない~」

「既に笑ってるじゃねえか」

「今はまだセーフだよ」


今思えば、何してるんだってレベルの話。

疎遠になる必要なんてなかったのだ。

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