指切りげんまん!第2話
朝食をとってからシャワーを浴び、完璧に目覚めてから着替えを始める。
「さて、咲楽の家行きますか」
時刻は午前7時半、日付は8月12日。
咲楽デーの到来である。連れていきたい所に目星は付いてるし、予定も完璧。
後は咲楽を連れ出すだけだ。
「いってきまーす」
鍵を閉めて走り出す時、太陽は雲に隠れてしまっていた。
「ふぅ…結構遠いんだよな…しんど…」
咲楽の部屋はわかっているため小石は投げずに窓をノックする。
コンコン…
するとあの時のように咲楽が窓を開けて顔を出してくる。
「おはようございます奏多さん」
「おうおはようさん。今日はさぁ…」
「あ、あの本日はですね…!私の部屋で遊びませんか…!」
…ん?なんて?
「……ダメ、でしたか?」
いやいやいや!と首をちぎれんばかりに横に振る。嫌なわけがない…んだけど!全然いいし嬉しいんだけども…!
「…こっちこそお邪魔しちゃっていいのか?」
「えぇ…少し奏多さんに言いたいことがありまして…私の部屋の方が都合がいいのです」
「言いたい事…」
息をのみ窓枠に手をかけ部屋に入る。
なんだろうか?考えてみてもわからない。
…もしかしてこの間出かけたのがバレたとか!?
「うっし…で言いたい事ってなんだよ」
「それはですね…」
鼓動が加速する。頬を伝う汗を拭うことすら忘れるほどに脳が咲楽の発する言葉に対する準備を始める。
ゴクリ…
唾を飲む音と蝉の声がしつこく耳に入ってくる
「…私の事です」
…はぇ?咲楽の…事?それが言いたいことなのか?そりゃ咲楽について知らないことは多いけれど…
「…それで咲楽はなにを私に言いたい、というか伝えたいんだ?」
「私の家庭…私の歩んできた人生を奏多さんになら伝えてもいいと思い、いつかこういった場が欲しかったのです」
咲楽の…人生…か…
そんな咲楽の深い所を私が知ってしまってもいいのだろうか…
「咲楽…本当にいいのか?私なんかが聞いても…」
「…えぇ」
数分に感じるほどの沈黙の末、咲楽は語り出す。
「…私は小さい頃から春波家の子どもとして礼儀作法を叩き込まれてきました。春波家に相応しい人間になるようにと育てられ、何かを間違える度にお父様には叱られる日々。そんな時です、母が事故により亡くなったのは」
…咲楽は話の途中で何度も涙を流していた。その度にやめるように言うも頑なにやめようとしない。
「…お母さまが亡くなってからお父様は今までよりも厳しくなりました。笑顔も見せなくなり、私の外出を禁じてまるでお屋敷に監禁されているかのような時期もありました。高校に入ってからは海外に行っていたのもあり、関わることも減りました。ですが…」
…見てられねぇよ
「わかった…もういいよ咲楽」
床から立ち上がり咲楽を見つめる。
こんな辛そうな咲楽を見ていたくないし、なによりもう────わかった。
「部屋出ようぜ、ずっと前から屋敷の中気になってたんだよ私」
咲楽は無言で立ち上がり、ドアを開けてくれた気分を切り替えて探索といこう。
「へぇ…廊下もデッカイなぁ…」
廊下には変な形のランプや額縁に飾られた絵がわんさかあり、海外の美術館のような感じだ。
まぁ海外なんて行ったことないんだけど
「この屋敷は狭い方ですよ?海外にある別荘はこれの5倍は大きいですし」
5倍かぁ…なんか驚きよりも恐怖が勝ってしまうなぁ…そんなデカかったら逆に不便だろうに
「2階、行きます?玄関の前を通らなければなりませんが…」
2階には何があるか結構気になってたんだよな。
なんか秘密の部屋とかからバケモンでも出てきそうで少しワクワクしてる
…とそんな事を考えて歩いてる私の意表を突く音が鼓膜に響く。
ガチャ…
「…は?帰ってきたのか!?」
無情にも玄関前は拓けており、隠れる部屋もなければ遮蔽もない…開いていく扉をただ眺めることしかできなかった。
「…ほぉこれはこれは」
神よ私はお前が嫌いになったぞ
蛇に睨まれた蛙、クモの巣にかかった蝶
…そんな言葉があまりにも今の私たちを表す言葉として適切すぎる。
咄嗟に本能で咲楽の前に腕を出し守る姿勢に入ってしまう。
「…咲楽、約束を破ったね」
後ろで咲楽が怯えているのがわかる…
実の娘に向けるもんじゃねぇだろそれは…!
「…少し3人で話そうか?」
靴を脱ぎ、洗礼された足取りで私たちの前へと立つ"怪物"に為す術などない。
あぁそっかこれが"逃げられない"ってやつか…
「…どうぞこちらに座って」
一言一言に圧迫感を感じる。
貫禄があるなんてレベルじゃない、肺の中の息を吐き出すことすら難しく感じてしまう。
「…奏多さんはなぜこの屋敷にいるのかな?」
全細胞が数ミリほど跳ね上がる。
吐き気と恐怖が心臓を鷲掴みにする感覚に襲われ今すぐにでも吐いてしまいたい。
落ち着け落ち着け…こういう時こそ冷静に…本当のことを話すんだ
「…咲楽の部屋に入ってから屋敷の中を見たくて」
この数文字を喋るために人生で1番体力を使ったと思う。こういう時は嘘をつかずに素直に言った方がいいことを私は知っている。
「…そうなんだね。じゃあどうやって咲楽の部屋に入ったのかな?」
冷や汗すら出ないほどの緊張が私の身体を支配する。
…そうだ、私を入れた咲楽がどうなるかそんな1番大切なことを忘れてしまっていた。
「…いや、それは」
「…咲楽が窓を開けた、そうだね?」
その一言で咲楽へと標的が変わる。
視線を向ける咲楽は見ていられないほど怯えていた。…咲楽
「咲楽、私は言ったはずだ。友人を入れてはならない、と」
これはもう"話し合い"なんて優しいものでは無くなっていた。これは"尋問"だ。
「すみませんお父様…奏多さんはなにも悪くありません。私が勝手に招き入れたのです…だからどうか…奏多さんだけは…」
「なっ…それはちが…」
私の否定を遮るように言葉が飛んでくる。
「咲楽、私はお前を想っているからここまで厳しくしているんだ。わかってくれるね?」
────は?
"咲楽を想っている"だと…?何ふざけたこと言ってるんだコイツは…?
「わかっていま…」
咲楽の言葉を遮って目の前にいる"人間"に面と向かって吠える
「ふざけてんじゃねぇぞお前」
「…!?奏多さん…!?」
咲楽の戸惑いを他所に私は目の前の人間を見つめる。
「咲楽を想ってる…?馬鹿も休み休み言えよ…アンタが想ってるのは咲楽じゃなくて咲楽の母さん…アンタの奥さんだろ」
「…君は何を言っているんだい」
明らかな怒りと殺意に似た感情を向けられるが知ったことじゃない。
「この部屋に来て気づいたよ…アンタは咲楽を奥さんにしようとしてるんだろ?」
「…何が言いたい?」
「言葉のままだよ…奥さん、咲楽とそ〜っくりだもんなぁ?感じてんだろ奥さんの面影を」
淡々と真実であろう憶測をぶつける。
コイツは咲楽に咲楽の母さんを演じさせるつもりなんだろう。
咲楽にそっくりな容姿、そしてなにより小さい頃から咲楽にそこまで厳しく礼儀作法を教える意味がわからない。
「咲楽はアンタの着せ替え人形じゃねぇぞ?」
「…子どもの君に何がわかる?くだらない探偵ごっこならよそでやってくれたまえ」
「核心突かれて怒んなよ、アンタの方こそ子どもだろ」
自分の娘を自分の死んだ奥さんに見立てて育てるなんて正気の沙汰じゃない。
…確かに亡くなった奥さんを想う気持ちは痛いほどわかるし、それほど大切な人だったのもわかる。でもそれを咲楽に押し付けるの絶対に違うと、私は断言できる。
「私は咲楽を大切に思っている、咲楽が幸せになって欲しいともな。その為に厳しくしているんだ、君のような子どもにはわからないだろうがな」
「咲楽を大切に思っている?咲楽の意思も尊重せずに幸せになって欲しいだと?そんなのタダのエゴじゃねぇか」
人の歩みにあれこれ口を出す奴にろくな奴はいない、それが子どもに自分の理想を押し付けるようなやつなら尚更だ。
「…君は咲楽のなんなんだ?何故そこまで咲楽のために動く?君にはなんの利益もないだろう」
「利益だぁ?んなもん知るか。私は損得勘定で人と付き合ってないんだよ」
「…そうか、では改めて聞こう。君は咲楽のなんなんだ」
私が咲楽のなんなのか…だと?
そんなもの決まっている。
「私は…咲楽の恋人だ!」
そうだとも。
私は咲楽を心の底から愛おしいと思う。咲楽を幸せにするためなら誰とだって戦える。
私は春波咲楽を本気で愛している。
「恋人だと?ふざけるのも大概にしたまえ。第一恋人と呼べるほど君たちの関係は深いものなのかね?」
「アンタにどうこう言われたかねぇな」
愛だの恋だのそんなものは当の本人が認めればそうなるものなのだ。
「咲楽、立てるか?」
目の腫れた咲楽を抱えるように立ち上がらせる
よし…決めた
「なぁアンタ、今週いっぱい咲楽は借りてくぜ」
咲楽を家に住まわせることにした。私の目が届く範囲に咲楽がいれば安心だし、なによりこんな場所にいたら咲楽が可哀想だ。
当然咲楽は驚いている…が無理やりにでも連れ行く気なので関係ない。
後はコイツがなんて言うかだが…
「…あぁ良いとも咲楽は君に預けよう。
…ただし!来週の月曜日にもう一度ここに咲楽と共に来い。」
「わかった」
案外すんなり行けて内心結構驚いているが顔には出さない。
…私は咲楽の手を取り屋敷を後にした。
振り返らずに咲楽の手をしっかりと握り、家へと向かう。
迷いなんてとっくのとうに捨てている。
「…あの奏多さん、本当に良いんですか?貴女のお家に居ても…」
「全然いいよ、父さんも深夜まで帰ってこないし、母さんはいないから。」
「………」
沈黙が蝉の声に塗りつぶされる。
夏の日差しがジリジリと肌を焼くのを感じる。
「…奏多さん」
「ん、なんだ?」
「…いえ、なんでもありません。…今日は一段と暑いですね」
「そーだな」
…きっと夏の暑さのせいだろう、こんなに顔が熱いのは。
「たでーまー」
「お邪魔します」
蒸し暑いだけの家に帰り、咲楽を自室へと迎え入れる。幸いエアコンを消し忘れていたので部屋は涼しかった。
「飲み物とかいるか?つっても麦茶しかないけど」
「大丈夫です」
"そっか"と膝に置いた手を下ろす。
「…奏多さん」
「なんだ?」
「…今日は本当にありがとうございます」
咲楽は深々と頭を下げて私に感謝を述べる。
別に感謝されるようなことはしてないのに…
「別に、私はただ思ったことを口にしただけだよ。咲楽が心配だったのもあるけどな?でもそれは特別感謝されるようなことじゃない」
「…いいえ、私は貴女の言葉に救われました。お父様が怖くてずっとなにも出来なかった私を貴女は救い出してくれたのです」
咲楽は涙を堪えながら感謝を伝えてくれた。
…だからこそ今咲楽にかけるべき言葉は"ありがとう"でも"気にしないで"でもないという事は理解している。
「寂しくないよ、もう大丈夫」
咲楽を強く抱きしめて私が伝えるべき言葉を届ける。
ずっと1人で寂しかっただろう、不安だっただろう…でも今は私がいる。
咲楽が泣き止むまで、こうしてそばにいてあげられる…咲楽を支えてあげられる。
「これからは私がいるからな…」
泣き疲れて寝てしまった咲楽をベットに運び、そっとブランケットをかけた。
「くぁ…んん…あれ私はなんで…?」
「おはよーさん」
「あれ…なぜ奏多さんが…?」
完全に寝ぼけてる…
きっと屋敷から家までかなり張り詰めた状態で来て、それが吹っ切れたから少し記憶が曖昧なのだろう。一から説明をすると咲楽は微笑みながら私に"ありがとうございます"と伝えてきた。
「…もうすっかり夕方だなぁ」
「そうですね…」
夕陽が部屋に差し込む。
「…ねぇ奏多さん、お屋敷でのことなんですが…」
「なんか曖昧な所でもあるのか?」
「いえ…そうではなく…奏多さん、お父様にこう言いましたよね。私は咲楽の恋人だ、って」
…言いましたね。
確かに今思い返すととんでもないことを口走ってないか私…?!
あの時は勢いとかその場の空気とかあったから興奮してたとはいえ、別に告白した訳でもない同性から一方的に恋人宣言は流石にマズかったのでは!?
「あ、あれはだな!その場の勢いとか、そのほらあの…」
「…私はいいですよ」
「…へ?」
予想外の返事に変な声が出た。
"私はいいですよ"?…つまりそれってそういう事では?
「一応聞いておくけどさ、どういう意味の?」
「…私は貴女と恋人でもいい、という意味です。」
「…そっか本当にいいの?私なんかが恋人で」
…確かに私は咲楽の事を心の底から愛してる、それについての訂正は無い。
でも果たして咲楽は本当に私が好きなのか?疑っている訳じゃないが私なんかよりもいい人は沢山いるし、それになにより咲楽が私のことを好きな理由が知りたいのだ。
「奏多さんの自分を曲げないところや、人のために行動ができるところ…それに私にここまで本気で向き合ってくれる人は生まれて初めてです。そんな貴女をずっと私は好きでしたよ」
真っ直ぐな好意は受けたことがない私からするとあまりにもこのパンチは重すぎた。
理性がはち切れそうになる。好きだ、という気持ちがどんどん膨らんでいく。
「…そっかじゃあ両思いってことかぁ」
「…いや、でしたか?」
「いや全然?すっごい嬉しいよ」
返事が機械的になってしまう、脳回路がショートし煙をあげている。
頼むからこれ以上私を揺さぶるのはやめて…壊れるから…!
「………」
ついそっぽを向いてしまった…!目線は部屋の角に向かっている。
「…あの奏多さん、こっちを向いてくださいな?」
「ん?なんかあ…」
…その瞬間、咲楽と私の唇が重なり合う。
両手をつき身体を伸ばして私に近づいている姿がなんとも愛らしい。
数秒間の触れ合いは私の脳みそを壊すには十分すぎる長さだった。
「…ぷぁ、やっとこっちを向いてくれましたね…奏多さん…?」
あの無愛想な冷たいお嬢様からは想像もつかないような笑顔はきっと私しか知らないものになる。
「…奏多さん?どうかなさいましたか?」
「先謝っとく、ごめん咲楽」
ハテナを浮かべるお嬢様…すみません、私はもう我慢の限界です。
ペタンと座ったお嬢様をひょいっと拾い上げ、ベットに運び、ポスンと寝かせる。
カーテンは閉めよう、夕陽すら今はノイズでしかないのだから。
「…これからなにするか、わかる?」
控えめに頷く私だけの恋人。
私たち以外の人間の存在を忘れてしまうほどに惹かれ合う。
「…了承して即日なんて…」
「もしかしていや?」
さっきのお返しと言わんばかりに微笑み返す。
「…奏多さんのえっち」
私の理性にそこからの記憶はない…
ギシ…ギシ…
ベットが軋む音すら2人の呼吸でかき消される。
なんど好きと言われ、なんどそれを肯定したかはわからない。
時に激しく時に優しく互いを求め、欲する。
独占欲と快楽で脳が蕩ける度イくのがわかる…
お嬢様は初めての快楽に溺れるほど浸かり、獣は白百合を自分色に染めることをやめようとしない。
愛しかないその行為はお嬢様と獣が同時に深い快楽に沈んだ時に終わりを迎えたのだった…
「なぁ咲楽」
「…なんですか奏多さん」
「私さ、"あれ"やってないの思い出したんだよ」
「あれってなんですか?」
「ほら手出してみ?グーの形で…そうそうで小指だけ立てて…」
「…こうですか?」
「おう、じゃあいくぞ?」
"ゆーびきりげんまん、嘘ついたら針千本のーます!指切った!"
「…これは」
「指切りげんまん!約束したろ?絶対幸せにするって、だからもし幸せに出来なかったら私はやべぇことになる、そういうおまじない」
「…だったらもう大丈夫ですね」
「なんで?」
「だって私、十二分に幸せですから」
そう言って笑いながら咲楽は私の方を見る。
"確かに私も十分幸せだわ"そんな事を言って私たちは眠りについた。
「さて…いよいよだな」
「そうですね…」
時間の流れはあまりにも早く流れていく。
今日は咲楽の父さんとの再開の日…
「安心しろ咲楽、私がいる」
今回ばかりは咲楽の意思でしっかりとあの人に叩きつけなければならない、私が出張ってどうこうな問題では無いのだ。
手を握り、ドアの向こうにいる父親に会いに行く。さぁここが正念場だ…!
「…待っていたよ2人とも」
「世辞も挨拶もめんどくせぇ、さっさと本題に入ろうぜ?」
咲楽と繋いでいた手を離す。
咲楽…後はお前次第だぞ…!
「お父様…私は変わりました」
「…どう変わったんだい?咲楽」
相変わらず丁寧な口調のくせに怖すぎる。
頑張れ咲楽…負けんな咲楽…
「…私は奏多さんから多くのことを学びました。ここにいたら知らなかったであろうことも沢山知ることが出来ました。」
咲楽の声は、もうあの時とは違う。
覚悟が、自分の中の芯がある言葉になった。
「そうかい…それはいい事だね。じゃあ聞くよ、今まで通りここに住むか、昨日までのような日々に戻るか、選ぶんだ。」
「私、は…」
正直な話私は家にいてほしいと思っている。自分の手の届く範囲に咲楽がいるならそれに越したことはない。…だがこれは咲楽が決めることだ、私の感情は不要である。
「私は!奏多さんと共に人生を歩みます!!」
屋敷にすら響いたであろう咲楽の一声は私と咲楽の父さんにとっても衝撃だった。
「私は、奏多さんの事が好きです…!大好きです…!でもお父様も好きなんです。育ててくれた事には感謝します、ここまで厳しくしてきたのも愛があるからなのはわかっています。ですが私はやっぱり奏多さんと共に生きていきたいのです…だから今日限りでこの屋敷から出ていきます…本当にここまで私を育ててくれてありがとうございました。」
数分の沈黙の末に口を開いたのは咲楽の父さんだった。
「…そうか、お前にも愛すべき人間ができたか…親であるならそれは祝わなければならない事だ。おめでとう咲楽、それがお前の選択なら
私はお前を信じるよ。それと奏多さん、君は本当に気付かされたよ。私は咲楽を妻と重ねていた、それが咲楽を苦しめているとも知らずにね………どうか、咲楽をよろしくお願いします。」
…あの怖ぇ奴から出る言葉とは思えないが、父として、親としてちゃんと目が覚めたんならそれでいい。
「約束します、必ず咲楽を幸せにします。」
そう言って私たちは屋敷を立ち去る。
案外何とかなるもんだな!
夏の日差しは2人で歩く私たちを容赦なく照らす
蝉の声や風鈴の音、車の排気音。
そんなありふれた物が、今は特別に感じる。
「…奏多さん?私たちこれからどうなるのでしょうね」
期待と不安の交じった声で咲楽は私に質問をする。"さぁね"と返すと少し呆れたようにため息をつかれたので笑い返す。
「…末永く宜しくお願いしますね、奏多さん」
「おう、指切りげんまん…な!」
風に揺れた2輪の百合
その行く末はあの約束だけが知っている…
指切りげんまん! 風鈴はなび @hosigo_s
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