第21話 渋谷センター街の東大生、クレーンゲームでもめる

 どうやら相手は大学生達のようだ。妙なグループに絡まれてしまったようだと瑛人は思った。

「あ、こいつ、知ってますよ。『コールドスリーパーズ』のフォワードですよ。カズさんに足を引っかけた奴じゃないですか」

「なに?総長杯だけじゃなくて、こんなところでも絡んできやがったか・・・。どんな、腐れ縁だ」

「しかも、試合中にマイクロドローンを飛ばしてましたよ」

 後輩の学生たちが小声で『カズ』に報告を入れているのが聞こえた。ともかく、戦利品を鞄に入れて、とっととこの場から立ち去ろうと瑛人は思った。瑛人がカバンの中にぬいぐるみを入れようとしたとき、鞄の中のスカイグラディエーターのARヘルメットが露出してしまっていた。

「ほう、お前、スカイグラディエーターやるのか?まあいい。クレーンゲームの景品を横取りする常識のない連中ども。とっとと立ち去ってくれないか」

 クレーンゲームの場所をどけると、非常識扱いされる。どかなければ罵倒される。遠回しに、先に取ったぬいぐるみをよこせといっているのだろうか?しかし、佐々木カズヤは先に帰ってほしかったので、わざとウザがられるようなことを口にし続けていたのだ。

「ドッグファイトで負けた方が全裸になってこの渋谷のセンター街を走り抜けるっていうのはどうだ?」

 週末の渋谷は人でごった返していた。カズは何か面白いことを言ったつもりだったが、その空気を察して後輩たちは一斉に笑った。一方、瑛人の反応は冷ややかなままであった。カズたちがそろそろ引き上げようとしていた時、余計な一言が発せられた。


「返事もできないだなんて、幼少期に母親の躾が足りなかったんじゃないか?」


 今まで黙っていて何でも受け流していた瑛人がカッと反応した。

「さっき、勝負に負けたら全裸で走るって言いましたけど、本当にいいんですか?あなた法学部でしょう。東大の法学部が法を犯すのはどうかと思います。せめて、上半身だけにした方がよいと思いますけど?」

 瑛人のこの一言で佐々木カズヤの目の色が変わった。これを察した他の後輩メンバーもこれに乗じ、食って掛かってきた。

「一応、念のために言っておきますが、カズさんは、スカイグラディエーターの月間ランキングで10位に入ったことのある実力者なんですよ」

 月間ランキング10位か。まあ、それでも、何とかなりそうだ。

「いいですよ。相手しますよ」

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