第12話 冬学期の定期試験、シケプリ交換で近づく染野と瑛人
美咲の中学受験が終わると、大学冬学期の定期試験が近づきつつあった。この頃になると、速水瑛人と染野桂子は連絡を頻繁に取るようになっていた。互いにシケ長だったからだ。連絡っはメッセージアプリでやり取りするだけではなく、昼休みに『現物』を交換し合うこともしばしばあった。『現物』とは試験対策用のプリントである。
速水瑛人と染野桂子は次の日の昼に一緒に昼飯を食べる約束をしていた。染野はそわそわしていた。いつも以上に待ち合わせの場所と時間を何度も確認し、着ていく服をチェックしていた。
「なんかよくわからくなっちゃったから、光ちゃんコーデにしよう」
染野は
就寝のため、部屋は消灯し、ベッドで横になっていたときのことであった。染野はスマホに瑛人からメッセージが来ていたことに気づいた。
染野は思った。もう眠いから、適当に返事しておこう。そもそも、明日会うんだし。染野は返信候補の中から適当に選んで送信した。速水瑛人とは、付き合ってるような、付き合っていないような微妙な関係のように思えていた。染野は一人で悶々としていた。
染野がふたたびスマホを見ると、そこに「だいすき」と表示されていた。
なんだろう?「だいすき」って。こんな夜中に一体誰からだろう?あれ?これ、私が送ったやつなのか。眠いなあ。こんなメッセージいつの間に送ったんだっけなあ・・・。
染野は布団の中から、がばっと体を起こした。
「はっ!!!!なにこれ!!!!」
染野はもう一度、スマホをじっくり見た。やはり、自分の送信履歴が「だいすき」となっていた。しかも、送信先が速水瑛人である。メッセージアプリには返信候補が何個か出てくることがあるが、染野がさっき選択して送信したメッセージが「だいすき」だったのである。
え、え、何で、何で?返信候補って、普通は「ありがとう」とか「よろしくお願いします」とかじゃないの。なんで、「だいすき」とか恋愛キーワードが混ざってるのよ?
まずい、まずい、まずい、まずい。さくじょ、さくじょ、さくじょ。とりけし、とりけし。あー、何やってんのよ。
染野は再び布団をかぶって、ぼんやりしていた。
でも、削除しなくてもよかったかも・・・。
次の日、速水瑛人と染野桂子は食堂で昼食を取っていた。
二人とも生姜焼き定食を選んだが、その生姜焼き定食を速水瑛人はナイフとフォークで切り分けながら食べていた。その様子を染野はまじまじと眺めていた。
「ねえ、昨日、何時に寝たの?」
「よく覚えてない。たぶん、11時か12時か1時かな」
「夜中にスマホとか見るほう?」
「見たりもするし、見なかったりする」
「メッセージとかって、すぐに見るほう?」
「気づけばすぐ見るし、気づかなければすぐには見ないと思う」
「ねえ、既読がついてなかったら、既読じゃないってことなんだよね」
「さっきから、一体何なの??」
そこを、染野のクラスメートが何人か通りかかった。
「お、相変わらず、熱いね。お二人は」
「あ、あ、あ、熱くないわよ」
染野の配膳の中の味噌汁がこぼれて手にかかった。
「あちちち」
ちなみに、次の定期テストで、瑛人は生成AIで作成した予想問題を作成したが、少しもかすりもしなかった。
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