第3話 アッシリア共和国上空でフランカーを追尾

 国内紛争が続く中東のアッシリア共和国の国境付近で戦闘機たちが爆音を上げながら飛行していた。

 フランカーは領空侵犯を行いつつも、警告を無視しながら飛び続けて、追尾するF16に対してフレアーをバラまくなどの挑発行為を行っていた。F16のパイロットは司令基地と交信していた。

「攻撃許可を求める。サイドワインダーで敵機を迎撃したい」

「領空の外に出るよう警告を続けよ」

 パイロットは食い下がった。

「敵機は警告に応じる様子はない。再度、攻撃許可を求める」

「相手が攻撃してくるまで、手を出すな」

 パイロットは思った。もし、相手が攻撃した時、こちらの機体はバラバラになっているんだがな。

 そのうち、フランカーは自国の防空領域に逃げ込み、その日のF16の追尾は完了した。


 年末のことだった、瑛人の父、正一は真新しいARヘルメットをプレゼントしてくれた。瑛人は初め、なんのことだかわからなかった。その日はクリスマスだったのであるが、受験勉強のせいで、クリスマスのことをすっかり忘れていたのである。

「直前期で大変だろうけど、たまにはARヘルメットでゲームでもして気晴らししなさい」

 スカイグラディエーターでは、ARヘルメットを持ち込むことができるのだが、親父のプレゼントしてくれたヘルメットはスカイグラディエーターとも互換性のあるMIL規格品だった。

「親父、ありがとう」

 しかし、瑛人は思った。息子へのクリスマスプレゼントがMIL規格品とは、この親父、どうかしている。


 親父のARヘルメットを使い始めてから、スカイグラディエーターのリアリティは妙に上がったと感じていた。なぜか、本当に戦場にいるかのような。なお、スカイグラディエーターには時々、隠しステージが現れる。それもまたこのゲームの楽しみの一つである。

 予備校の冬期講習の帰り「ドリームサーキット秋葉原店」を訪れたが、今回も染野の姿はなかった。そういえば、最近、染野を見かけない。ひょっとして、仮面浪人は辞めたんだろうか?しかし、それも、無難な判断なのだろう。

 今回のスカイグラディエーターの隠しステージはフランカーvsF16か。まあ、フランカーごとき、F16の敵ではないのだが。


 この日もアッシリア共和国の国境付近でフランカーが現れた。今回は3機。迎撃に向かうF16は1機のみである。F16のパイロットはいつも通り警告するがフランカーたちは我が物顔で飛び続けた。いつも通り警告に応じる様子はない。もし、戦闘になれば最新鋭の誘導兵器で簡単に迎撃できるはずなのだが。パイロットの苦悶とした表情が続く。

 しかし、その日は違った。突然、F16の操縦システムは突然外部からロックされた。パイロットはパニックに陥った。

「操縦不能だ!!いったい、どうなってんだ」

 パイロットは操縦を取り戻そうと、懸命に操縦桿に力を込めたが、それでも機体はぴくりとも動かない。

「く、くそ」

 F16からは次々とサイドワインダーが次々と発射され、2機のフランカーを撃墜させた。残りの1機のフランカーは戦闘をあきらめ一目散に自国領へと逃げ込んでいった。

 しばらくすると、操縦桿はロックが外れ、自力で操縦できるようになっていた。パイロットは安堵したが、混乱し続けていた。

「いったい、何が起きたんだ?」


 秋葉原のゲームセンターでは、速水瑛人がARヘルメットを脱ぎ、汗を拭っていた。

「ふう、1機取り逃してしまったが、今日はここまでにしよう」

 センター試験まであと1週間と迫っていた。

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