希望に言霊を添えて

「うにゃぁぁー!!」

「ドドドドドド」


 塗装が剥げたり、一部命中して風穴の空いた機体の上で、私は激しい攻防戦を繰り広げます。


「こ、のぉ……!」


 機関銃の弾丸が切れた機体や、ミサイルが無くなって撤退した機体があるものの、その猛攻は未だ途絶えていませんでした。

 むしろ、私が隙を見せたタイミングで一斉に火力投射をする分、さらに危険になっていますねぇ。


「駄目ですよ……貴方戦闘機は飛行機にいって、人質を取って……ARC側が手を出せない状況を作る足がかりになってください、ねっ!」


 私は突き破ったガラスの所から顔とレイを出し、戦闘機目掛けて狙撃をします。


「パァァン!!」

「……っ」


 しかしレールガンの狙撃に目が慣れてしまったのか、狙った戦闘機に軽々と避けられてしまいました。


「手数が少ないと厳しいですねぇ……」

「WARNING,WARNING……」

「っと、これは……フレアですか……あれ?」


 聞き慣れたミサイル警告音を聞いた後、レーダーでミサイルの種類を見て私はフレアを焚こうとするのですが、フレアの残弾は切れていました。


「能力でフレア……作り出してみましょうか!」


 無ければ創る。そう思って私は再び顔を出します。


「ドドドドドド!!」

「痛っ痛い!痛いです!」


 すると私の行動が読まれていたのか、的確に私を機関銃の弾丸で攻撃してきました。

 こちらは割と縦横無尽に動いているのに……とんだ力量ですね……。


「WARNING,WARNING……」


 あっ、ミサイル……。ミサイルですねまずいですねぇ!?


「何とか躱す方法……躱す……ええいやってやりますよ!」


 私は自動操縦の機器を取り外し、操縦桿を持ちます。そして、私は戦闘機の進路を大きく変えるために操縦桿を思いっきり横に倒しました。


「WARNING,WARN……」


 その後、微かに何かが通り過ぎた音と共に警告音が止みます。


「そろそろ対応がキツくなって……あっ!」


 能力の本格的な使用も視野に入れ始めた頃、私はやや雲に隠れていて、数十キロ先にある、カナダ行きの飛行機を見つけました。


「よし……これで『人質&領空侵犯で手を出せなくなるだろう作戦』が出来ますね!」


 渡りに舟だと感じた私は残りの燃料を度外視で一気に戦闘機を加速させます。


「飛行機から視認できず……かつ戦闘機から安全に脱出できて乗り捨てできる位置……」

「WARNING,WARNING……」


 私は後ろから後ろから来るミサイルを無視し、操縦桿と脱出レバーを握りしめてタイミングを測ります。


「三……二……一……今!」


 たまたまミサイルに着弾する寸前、私は脱出レバーを引き、上に向かって緊急脱出をします。


「ふっ!」

「ドォォン!!」


 爆発する戦闘機を流し見しつつ、そのまま戦闘機の慣性で飛行機より速い速度を維持しながら飛行機の高度よりも上に飛び上がった私は、能力でフックショットを生成します。


「今になってですが……これやったとて生きられますか……ねっ!!」


 そして私は引き金を引き、フックを射出――


「ちょ……出たのに空気抵抗に負けて……!?」


 ――したのですが射出の威力がたりなさすぎて飛行機側とは真反対に飛んでいきます。


「びゃあぁぁ!!死ぬ死にますこれ落下したら海だけどヤバいですってぇ!!!」


 私はせめて不安定な落下にならないように大の字で落下しながら、私自身びっくりする大声で現状を嘆きます。

 失敗した脱出作戦……下は、かろうじて海ですが間違いなく臓器系は致命傷、最悪壊れて死ぬのがまっしぐらですね。

 ああでも、何かARCの戦闘機の方々は帰っていったみたいですね。それは唯一の救いでしょうか。


「意識……これ……酸欠……」


 落下の空気抵抗をもろに喰らう口や鼻からはまともに酸素が吸えず、私は酸欠気味になっていきます。


「依頼人さん……ここで来てくれたら……かっこいいですよ……ははっ」


 流石の私でもこれは助からないだろうと思い、私は残りの酸素を何故かつまらない妄想のために使います。

 まあでも……確かにここで来てくれたらかっこいいですねぇ――

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